首尾一貫感覚(SOC)
施設での指導をやめることになって落ち込んだ私でした(前回記事)。
やめた直後はショックで、何が起こっているかよくわからない状態でした。自分の心を観察できるようになるまで、しばらく時間がかかりましたね。「まさかクビなんてと思ってた私って、すんごいノンビリしてたなぁ」なんて思えるようになった辺りから、この出来事を前向きに捉えようとし始めました。
出来事の捉え方と、心の健康度の深い関係を示す「首尾一貫感覚(SOC)」という概念があります。米澤紗智江さんの「こころのレッスン」講座では第5回講義で取り上げられていました(講座は終了しています)。SOCは、日本ヨーガ療法学会のヨーガ療法士養成講座でも学びました。私の復習を兼ねてご紹介します。
首尾一貫感覚(SOC) とは
医療社会学者アーロン・アントノフスキー博士がイスラエルでの研究を通じて提唱した概念です。ナチスのホロコーストを生き延びたユダヤ人の健康状態を調査研究したところ、過酷な体験後の生活で、心身に問題ある人が7割もいる一方で、3割は心身状態が良好でした。この3割の人々に焦点を当て、何が人を健康するのか、その要因を研究して提唱されたのがSOCです。心身状態が良好だった人々はこの感覚が強いということがわかったのです。
首尾一貫感覚(SOC)には、それを構成する「3つの概念」があります。
①把握可能感
人が内的環境および外的環境からの刺激に直面した時、 その刺激をどの程度認知的に理解できるものとして捉えているのか
②処理可能感
物事が理にかなって予期され、かつ、物事はうまくいくであろうとの高い見込みがあると捉える感覚
③優意味感
人が人生を意味があると感じている程度。生きていることによって生じる問題や要求の少なくともいくつかは、 エネルギーを投入するに値し、関わる価値があり、歓迎すべき挑戦であると感じている程度
首尾一貫感覚(SOC)、ちょっと難しいですねぇ。気持ちが落ち込んだ後、出来事の捉え方がどんな風に変化したか、私の例で、SOCの「3つの概念」を考えてみます。
①把握可能感は、自分のおかれている状況がわかる感覚、と説明されます。直後はちょっとしたパニックでした。しばらくしたら「わたしクビになったんだ。確かに参加人数は減っていた。会社の利益まで気が回ってなかった。ノンビリしてたな。トホホ」と、まぁまぁの落ち着きを取り戻して、自分の状況が分かってきました。
②処理可能感は、なんとかなる、できると思える感覚、と説明されます。「能力のないダメ人間だ」と悲しんだ私。徐々に意識が、済んだ過去から今に戻ってきて「ほかの教室には参加してくれる生徒さんたちがいる。目の前にいる生徒さんに誠実に対応しよう」となっていきました。すると次に、意識が未来に行って「できることをひとつひとつして自分を整えておこう。そのときの自分にふさわしい仕事が今後やってきてくれるかもね」となりました。
③有意味感は、人生には意味がある、今の状況には意味があると思える感覚、と説明されます。人生初のクビを経験して、出来事の意味を考えざるを得なかったです。私的には機嫌よく指導してたんですよ、参加人数が少なくても。その理由を振り返りまして、やりがいや喜びは何なのか、何のためにやっているのかといった、あまり自覚していなかった根本的な動機を確認できました。クビがなかったら気付かないまま、惰性で続けていたかもしれません。
首尾一貫感覚(SOC)はストレス対処能力を示す、とも言われています。ストレスフルな出来事に対して「わかる、なんとかなる、意味ある」という感覚を持てる人は心身状態を良く保てるということです。
私の場合は、生命が脅かされる程の過酷な体験ではなかったですが、わかる、なんとかなる、意味あるという感覚を、苦戦しながらも持てていたようで、心の痛手を小さく出来たかなと思います。
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