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ローズの魔法

焼酎を買った。

近所のスーパーに置いてある定番の銘柄もおいしいが、何か物足りない。

おいしい焼酎が飲みたかった。


しかし、ネットで探すうちに、紙パック限定で探すと種類が限られることが分かった。

そんな中、鹿児島のお店で「さくらじま」という銘柄を扱っているお店を見つけた。おまけに、三種類二本ずつ入っている。理想の形。そして、こちらでお目にかかることのない銘柄。


今までネットで買うときは、お祝いごとであれ、ゴミになると思い、包装は頼んでいなかった。

むき出しの段ボールで十分だと思っていた。必要なのは、中身だから。

でも、今回は、やたらとローズという包装紙が目についた。

お祝い事はきちんとしなさいということだったのか、ただ、私の心が乾いていて欲していただけなのか分からないが、頼んでみることにした。


丁寧に包装された上に、パッキンで巻かれた状態で届いた商品を見た瞬間、声をあげそうになった。

レトロと言えば聞こえはいいが、正直、もっとましなデザインはあるだろうと思っていた。ローズに、これほど心を撃ち抜かれるとは思っていなかった。


どこで買い物をしても、むきだしで渡される無味乾燥な毎日。彩りがなくなった毎日に、知らず知らず心が悲鳴をあげていたようだ。

人らしく生きるためには、ムダも必要。

経費節減で、ムダをこそげ落とす生き方しか知らない。贅沢三昧を味わえた時代を少しの差で経験することもなく、常に閉塞感が伴う時代を生きてきた。


ステキなデザインの袋を集めるのが好きだった。素敵な袋に出会うと、心が躍った。傷つけないよう、大切に家まで持ち帰った。

だが、もうそれも出来ない。

引っ越しの時に、かなりの袋を処分してしまったことが今では悔やまれる。断捨離などというワードに振り回され、自分を見失ってしまっていた。


二枚の包装紙でぴっちり包むという高度な技を用いられたローズの包装紙は、いま、物置に使っているラックの目隠しに使っている。

見るたびに華やかな気持ちになる。

まだ、ローズの魔法はとけない。

いつか、ローズの魔法がとけるその日まで、ローズに魔法をかけてもらおう。

私の心に栄養を与えてくれる、最高の栄養剤だ。

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