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攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEXの解説と感想 第1話 「公安9課」

【1】アヴァンタイトル

『 あらゆるネットが眼根を巡らせ 光や電子となった意思をある一方向に向かわせたとしても "孤人"が複合体としての"個"となる程には情報化されていない時代・・・』   
『A.D.2030

と青い文字で表示されます。

 これは原作の『企業のネットが星を被い、電子や光が駆け巡っても国家や民族が消えてなくなる程情報化されていない近未来』に対応するもので、本作のテーマ(STAND ALONE COMPLEX)を表しているものですね。

 高層ビルの屋上にハイレグ姿の女性が登場。彼女こそは本作の主人公である"少佐"こと草薙素子です。高層ビルから飛び降りる登場は劇場版『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』の冒頭とパラレルなシーンですね。聞こえてくる会話(『……外壁と屋上の空調機に睡眠誘発ガス注入装置の取り付けを完了……』)は、彼女が犯人たちの会話を盗聴しているもの。見下ろす先には、まさに装置を取り付けているドレッドヘアの男の姿。素子はビルから華麗に飛び降り男に接近。銃を構える男に対して格闘戦で圧倒します。腕をへし折られた男は不自然な方向に曲がった腕をぶらつかせたまま、常人離れした跳躍で隣のビルへ飛び移ります。素子はすかさず拳銃を構え着地する男の足を正確に撃ちぬきます。砕かれた足からは機械のような部品が見えます。素子もまた常人離れした跳躍を見せると男の真上に飛び降ります(彼女たちが人間の能力を大きく逸脱したサイボーグであることの描写ですね)。

「お前ら警察か。もはや体制に正義はなしえない」

と視聴者に分かりやすく自分が活動家だとアピールする男。

「世の中に不満があるなら自分を変えろ。それが嫌なら耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らせ。それも嫌なら…」

と素子の決め台詞。ここで、荒巻からの緊急連絡があり、次の現場へと招集がかかる。ヘリで迎えに来るバトー。

 ここまでのシーン、反政府の活動家がテロを企てていたけど、素子がそれを阻止しましたというお話で、これから特に本編と関係しません。視聴者の興味を引くために導入をアクション・シーンにするための演出でしょう。細かいところだと、男は首から笑い男マークの首飾りを下げていますが、おそらくただのファッション。

 素子の決め台詞ですが、J・D・サリンジャーの文学作品『ライ麦畑でつかまえて』からの引用であり、笑い男マークの縁に記されている"I thought what I'd do was, I'd pretend I was one of those deaf-mutes(僕は耳と目を閉じ、口をつぐんだ人間になろうと考えた)"と繋がるものですね。

★2030年の世界では、人間は電脳化・義体化していて、機械を使わずに通信したり、人間を超えた力を発揮できる。

★反政府のテロリストがいて、素子たちはそれを捕まえる側の人間だ

この2点を理解しておけばOKです

電脳化:脳に直接、膨大な数のマイクロマシンを注入し、神経細胞とマイクロマシンを結合させ、電気信号をやりとりすることで、マイクロマシン経由で脳と外部世界を直接接続する技術。これにより、作中の人間は装置を用いないで情報ネットワークに直接接続できる。作中人物が無線で会話できるのもこのため。攻殻機動隊の世界では電脳化していなければ、まともな社会生活を送ることは困難であり、電脳化していない人間は一部のホームレス等に限られ、ほとんどの人間が電脳化している。

義体化:いわゆるサイボーグ化のこと。四肢や臓器、その他の器官を機械に置き換えること。これにより生身の人間を遥かに上回る身体能力を発揮できる。メンテナンスに費用も掛かるため、だれでも気軽にできるものではない。9課のメンバーの中でも全身を義体化しているのは素子だけ。かなり特殊な例。他方、荒巻やトグサは電脳化している以外は生身である。

サイバーパンク(cyberpunk):1980年代に成立・流行したサイエンス・フィクションのサブジャンル。サイバーとはサイバネティクスとサイバースペースを指し、パンクとは、社会構造・体制に対する反発や反社会性を意味する。現代の技術と地続きな未来の科学技術によって変化した退廃的な未来を描く。それまでの科学万能主義に対するカウンターとして捉えられることが多い。

【2】外務大臣救出作戦

『公安9課』とタイトル。ちなみに背景が緑色なのは一話完結のエピソード(スタンドアローン)であることを表しています。一方、背景が青色のエピソードは、本作の中心的事件である『笑い男事件』に関係する連続したエピソード(コンプレックス)であることを表しています。

 シーン①:さて、料亭を取り囲むものすごい数の警官隊。司令部と思われる車両の中では警察の制服を着た男と背広姿の眼鏡をした男(久保田)が揉めています。背広姿の男の後ろには軍服を着た男が二人控えています。どうやら軍が警察に対し指揮権を渡せと迫り、警察がそれに抵抗している状況です。そこに登場する荒巻と呼ばれる老人、警察幹部は起立敬礼で彼を迎えます(軍側は姿勢を変えません)。荒巻は素子の上司で、公安9課のトップです。

 警察幹部は荒巻の状況を伝えます。外務大臣、大臣秘書官、大臣の後援会長、北米産業振興会からの来客2名、彼らを芸者ロボットが拘束しているとのこと。

 もちろんただの故障なんてことはないでしょう。政治犯?思想犯?愉快犯?それとも怨恨?暗殺?口封じ?背景は不明ですが何者かが芸者ロボットを操っていることは間違いないと思われます。

 荒巻が、本件を公安9課が引き継ぐというと、素直にこれに従う警察幹部。

 シーン②:荒巻は久保田を連れ出すと有線で会話をします。

荒巻「軍が介入したい理由は?」                     久保田「うちの関係者が中にいる。それ以上は今は言えん」       荒巻「分かった。あとはわしに任せろ」

★ここでは公安9課、警察、軍(自衛軍)の関係を理解しておくといい。公安9課は都道府県の警察を監督する内務省内の組織。警察よりも格上で、警察幹部でも直立不動で迎えなければならない。なお本作の舞台は、基本的には新浜県新浜市なので、警察は新浜県警である。詳しくは2話で説明する。一方で、別組織であり自前の情報機関を持つ自衛軍とは、表向きは対等、裏では対立しているかもしれない。ただ、荒巻と久保田(自衛軍情報部)が友人であるためこの場では対立することなく収めている。

有線通話:上で述べたとおり電脳化している人間同士はネットワークを介して無線で会話が可能。しかし、ハッカーによる盗聴に備え、機密事項は有線を使った通信で行う。このようなシーンは本作品で頻繁に登場する。

公安:警察の活動のうち「公共の安全と秩序」を維持することを目的とする部門。主に国家体制を脅かす事案に対応する。現実の日本では、公安部門は各都道府県の警察にあり(警視庁は公安部、道府県警は警備部公安課)、一方、法務省の外局である公安調査庁は主に情報収集を目的とする機関で、警察とは異なり令状請求権はない。これに対して、攻殻機動隊の世界では、内務省に公安局という部局があり、おそらく都道府県警察も(警察庁が存在せず)内務省の監督下にあるものと考えられる。

公安9課:内務省公安9課。2029年に内務省公安部内に設置された内閣総理大臣直轄の防諜機関。秘密機関である。素子たちはしばしば自分たちを「公安のもの」と名乗っているが、内務省公安部の人間という意味であり、一般人や末端の役人にそれ以上の所属が明かされることはないだろう。

シーン③:荒巻は前線の素子に連絡します。軍がしびれを切らす前に事件を解決しなければなりません。メンバー全員に状況を確認する素子。第1話ですからメンバーの紹介を兼ねてのシーンですね。

バトーは移動中。

トグサとイシカワは地下で回線を探索中。

サイトウは屋上から狙撃銃を構え待機。

パズ、ボーマは現場を離れ市街地。車の中で待機中。バトーやトグサとは違って私服です。ロボット芸者を操作している人物が近くにいるはずとのこと。彼らは別動隊として犯人を確保する役割ということですね。

「トランスは撃つな。敵が証拠を消す前にウイルスを送り込む」

このセリフの意味はシーン⑤で分かります。

「少佐。ロボット芸者が待遇の改善を要求してきたら?」

これはバトーのただの戯言です。素子のうんざりしている様子。本作ではくだらない冗談を言うのがバトー君の役割です。

シーン④:全員の状況を確認し終えたところで、突入の命令。ノリノリのBGMが流れます。料亭内に突入するのは素子、バトー、トグサの三人。移動中にすうっと姿が消えますけど、これが光学迷彩です。監視カメラの映像では、芸者ロボットに羽交い絞めにされているオジサン3人と、血を流して倒れている女性1人。3体の芸者ロボットは、ほぼ同時にヘッドショットで無力化されました。透明な状態から姿を現す素子。芸者ロボットに有線で接続し、彼女たちを操作していたハッカーの位置を割り出します。

芸者ロボット:義体化した人間とは異なり彼女たちは、AIで動く機械である。脳と肉体を機械化した人間と、AIで動くロボットに違いはあるのだろうか。攻殻機動隊の世界では、人間にはゴーストと呼ばれるナニカがあると考えられている。ゴーストの有無、それが人間と機械との絶対的な境界なのか?

光学迷彩:機械装置により光を曲げることで、それを着用している人間等の姿を光学的に見えなくする装備のこと。攻殻機動隊の世界では、軍の特殊部隊や諜報機関などごく一部の限られた人間のみが使用できる機密装備。

 シーン⑤:ビルの屋上で装置に接続している男(ハッカー)。装置は突如、火花を上げます。慌てて、装置を外す男。素子は、パズとボーマに探査ウイルスを追跡するように命じます。

 シーン③のセリフに出てきた『トランス』とは、おそらくトランスミッターのことで、この男が操作していた装置のことです。遠隔から3体の芸者ロボットを同時に操作するため、機械の補助が必要だったのだと思われます。素子は芸者ロボットに接続することで、逆にこの男の電脳にウイルス(探査ウイルス)を送り込みました。装置が火花を上げたのは、装置がハッキングを感知したために(安全機能として)物理的に接続を切断したためでしょう。

 シーン⑥:オジサン3人に別状はないようですが、血を流している女性には緊急医療が必要な状況。また金髪の男が、頭がぱっくりと割れ脳殻が剝き出しの状態で倒れています。彼は即座に死亡確認と判断されました。大臣は重々しいトランクケースを手にその場を離れます。

 シーン⑦:一方、ハッカーは人外のスピードで走って逃走中。それを車で追うパズとボーマ。援護で駆け付けたバトーが見事にハッカーを捕まえますが、ハッカーが首に着けていた装置に突如電流が走り、ハッカーは気絶してしまいます。

バトー「やっ、ヤバイかも」

 と情けない声を漏らすバトーがオチです。

電子戦:上で説明したように電脳とは神経細胞とマイクロマシンを結合した、一種の機械です。人間は電脳によって直接、情報ネットワークに接続できる代わりに、インターネットに接続しているパソコンと同様に悪意あるハッカーによるハッキングを受ける可能性があります。草薙素子は超一流のハッカーでもあり、今回のように他人の電脳に (コンピューター)ウイルスを送り込んだりもできるのです。

【3】捜査

【2030年、4月14日 AM5:46】荒巻のオフィス

 救出策直後、まだ早朝です。荒巻のオフィスを訪れる素子。そこには久保田の姿もありました。久保田の説明では、血を流していた女性、つまり脳に損傷を受けていた大臣秘書官は、実は久保田が送り込んでいた部下で、密かに大臣の身辺を内偵中だったとのこと。外務大臣の周辺が『一ノ瀬レポート』(非常時における外交及び軍事的戦術シナリオに関するモノ)に興味を示していたことが内偵の理由でした。しかし、外務大臣の身辺に疑わしいものは見つかっていない。久保田は意気消沈気味。

荒巻「お前が良ければ、この件うちで調べてみようと思うが、どうだ」  久保田「助かる。だが、お前の経歴に傷がつくようなことはするな。最後は俺が被る」

久保田が荒巻の良き友人であると同時に、真相解明よりもキャリアを大事にする(平凡で常識的な)人物像が描かれています

というわけで、荒巻は素子に大臣の身辺の洗い直しと料亭内で何が起こったのかを徹底的に調べることを命じます。果たして、事件の裏にある真相とは?

 そして、荒巻は自ら一ノ瀬レポートと軍の利害関係をもう一度洗いなおすといいます。

素子「あーら彼、友人じゃなかったの」                荒巻「そうだ、だからわしが調べる」

 これは荒巻に裏表があるというわけではなく、身内だからといって手を抜かないという信念の現れ。

 シーン②:取調室には捕まったハッカーの姿。しかし、自分で記憶を焼き消したとのこと。男からは、これ以上の情報は得られそうにありません。

★それなりに腕の立つハッカーであり、自動車とチェイスできるまでに義体化したサイボーグ。そして、自分の記憶を消去するというプロ意識。これだけの人材を用意できるのであるから、それなりのバックが存在するに違いない。

 シーン③:射撃訓練中のトグサ。料亭での自分の活躍に納得できないようです。彼に声をかける素子。トグサは義体化していないこと、素子が警察からわざわざ引き抜いたことなどが視聴者に明らかにされます。素子がなぜ彼を必要としたのか考えて、自分の特技で貢献しなさいと助言します。全身義体でプロフェッショナル。常人とはかけ離れた能力を持つ素子に対し、電脳以外は生身であり、9課では新入り、元刑事の所帯持ちであるトグサ。一般人に最も近い彼は本作の影の主役でもあります。

 シーン④:荒巻は公園で、謎の老人と接触。荒巻の広い人脈をアピールです。

老人「一ノ瀬レポートは軍の予算に影響しない」
荒巻「政、官どちらの意向だ」
老人「あれで損をする軍人はあれを知る立場にない。知らない者は探さない」

 一ノ瀬レポートについての情報を手に入れます。どうやら軍は本事件と関係がなさそうですね。

 シーン⑤:さて、荒巻の下に素子が成果を報告にやって来ます。

①料亭事件の唯一の死者、北米産業振興会の金髪の男。頭がぱっくりと割れて、脳殻が剝き出しになっていたわけですが、調査の結果、北米ニュートロン社製の脊椎ユニットを搭載していたはずの彼、潰れた筐体の部品を集めても元の筐体が組み上がらない。

②外務大臣は、芸者ロボットと体を取り換えて遊ぶ趣味があった。

③監視カメラによれば、外務大臣が芸者をトイレに連れ込み、直後、死亡した北米産業振興会役員がトイレに入る(4月14日AM0:41)。さらにその後、心配になった大臣秘書官が様子を見に来る(4月14日AM0:47)。このとき、大臣秘書官が襲われています。

④もう一人の北米産業役員は、死亡した役員、秘書官の順で襲われたと証言、映像と食い違う。

⑤後援会長は秘書官の悲鳴を先に聞いたと証言。

 おそらく大臣秘書官はトイレで何かを見たため襲われたのだ。さて、彼女はいったい何を見たのだろうか? かなり重要な証拠がそろってきたように思えます。

 シーン⑥:次はトグサが、現場である料亭に戻り捜査をしています。何かを見落としていないか、鏡に向かってあの夜のことを思い出します。無事に解放されトグサに礼を言って料亭を出る外務大臣。その手には重々しいトランクケースがありました。でもおかしいぞ。そうです、監視カメラの映像によれば北米産業振興会役員がトイレに入る際、まさにそのトランクケースを持ち込んでいるのです。あのトランクケースは一体? トグサは閃きました。

 シーン⑦:無線通信でトグサは素子に自分の推理を説明します。外務大臣は芸者ロボットと体を取り換えて遊ぶ趣味がありました→犯人の目的は一ノ瀬レポート→レポートを手に入れるには外務大臣の外見さえ手に入ればいい→そう、外務大臣は脳殻を積み替えられたのです→つまり、大臣秘書官は脳殻を積み替える現場を目撃したために襲われたのです。

 素子がトグサを必要とした理由、それは彼の刑事としての能力。基本的に軍人出身で固められている9課メンバー。柔軟な捜査や推理の技術には欠けるところがある、そういうことでしょう。トグサは、自分の特技で貢献できました。

 真相に辿り着いた素子。事態は一刻を争います。素子は叫ぶ。荒巻が久保田に確認すると、まさにたった今、外務大臣が北米産業振興会の人間と共に現れて、一ノ瀬レポートを持って行ったというのです。そして、大臣はこの後、アメリカに飛ぶ予定であるとも。一ノ瀬レポートを手に入れた犯人がアメリカに逃れてしまえばもう手出しはできません。9課のメンバーと合流しつつ、空港へと急行する素子。

【4】逮捕

 シーン①:そのころ空港では、天候不順により専用機が15分遅れているとの報告を受ける外務大臣の姿が。外務大臣は必死に一ノ瀬レポートの内容を読み取ろうとするがエラーが出てデータ化できません。これは久保田が時間稼ぎのためにコピー不可の暗号プリントを渡していたからです。

★久保田はコピー不可の暗号プリントを再デジタイズされるまでの時間稼ぎだと言っています。電脳化された世界では、人間が見聞きした情報を簡単にデータ化して情報ネットワークを通じて送信したり、拡散することができてしまいます。そのため、ある種の情報は、認識できてもデータとして処理できないような制限を電脳に設けているものと考えられます。

 シーン②:まさに飛行機に乗り込もうとする直前、大臣の目の前に現れる荒巻とトグサ。荒巻は一通の書類を大臣に手渡します。「……病気療養に付き、公務を辞退致します……」。それは、大臣の辞表であり、すでに総理、与党役員会で承認済みとのこと。この瞬間、彼は大臣ではなくなったのです。

荒巻「議員、貴方には昨夜の事件で、スパイ容疑並びに諸外国への政治的亡命の嫌疑も掛けられております。ご同行、願えますかな?」

 さっそく呼称が大臣ではなく、議員になっています。議員になってしまった元大臣の体にいくつものレーザーポインターの赤い点が向けられています。すでに光学迷彩で姿を消した素子たちが、周囲を包囲していました。トグサが元大臣の手からトランクケースを奪い、ゆっくりと中を開けると、そこには生命維持装置に繋がれた脳殻が。

シーン③:病院。大臣秘書官の両親と話す久保田の姿。電脳技術とマイクロマシンで、脳のサポート手術を受けるそうです。言語野に多少障害が残るが、日常生活に支障はないそうである。よかった。しかし、わざわざ病院まできて両親に対応するあたり久保田はいい人そう。

荒巻に対して

「しかし、よくあんな短時間で政治家の説得材料や、関係書類を用意できたなぁ」

なんて呑気なことも言う始末。こういう事態に備えてそれなりのカードを持っているのが荒巻という男なのでしょう。

久保田 「天候不順など無かったのに、大臣専用機は遅れてくれたしなぁ」
  荒巻 「それが、公安9課だよ」

と飛行機が遅れたことまで荒巻の根回しだと判明するラスト。

真相の整理:

①黒幕は北米産業振興会の男。おそらくは、その裏で手を引いてるのはアメリカ政府。目的は一ノ瀬リポートの入手。

②それまでは外務大臣の周辺人物に接触し、一ノ瀬レポートを入手させようとしていたが、大臣本人までは利用できなかった様子。その影響で久保田ににより、軍の内定調査が始まりました。

③外務大臣が芸者ロボットと体を取り換えて遊ぶ趣味があることを知った黒幕は、それを利用して脳殻を積み替えによって外務大臣の体を手に入れる計画を立てます。外務大臣は芸者ロボットを使って脳殻を取り出していたので、ハッカーを使い、芸者ロボットを動かせば外務大臣の脳殻を手に入れることは簡単です。

④北米産業振興会の男は、トランクケースの中にダミーの脳殻を入れておきます。外務大臣がトイレに芸者ロボットを連れ込むのを待って、ハッカーが芸者ロボットを操作して外務大臣の脳殻をゲット、合流した北米産業振興会の男の持つトランクケースの中に脳殻を収めます。次に北米産業振興会の男の脳殻を取り出して外務大臣の体に積み替えます。空っぽになった男の頭にはダミーの脳殻を入れ死んだように偽装します。

⑤あとは一ノ瀬レポートを手に入れアメリカに渡ります。最後に外務大臣の体に脳殻を戻し、殺害などすれば『外務大臣の亡命スパイ疑惑』として真実は闇に葬りさられたわけです。

⑥しかし、運悪く脳殻積み替えの場面を秘書官に見られたため、慌てて口封じをしてしまったため、何とか誤魔化そうと芸者ロボット暴走事件をでっちあげ、彼女のケガを事故ないし巻き込まれに見せかけようとしたわけです。

【5】感想

公安9課の日常を描くための第1話。

①少佐の指揮能力と戦闘力

②荒巻の人脈と根回し

③トグサの人情味と推理

④バトーの茶目っ気あるトーク

攻殻機動隊の物語の基礎となる要素がしっかりと示されていた1話でした。

冒頭のアクションシーンから、人質立てこもり事件に対する強行突入、犯人とのチェイスという分かりやすいアクションシーンを前半に用意しつつ、後半に謎解き、トグサと荒巻それぞれにしっかりと活躍の場も用意され、初めて本作品に触れる人にとっても、次回以降を期待させる内容だったと思います。分かりやすいエンタメの中で、サイバーパンクという分かりにくい世界観の説明を果たしながら、そして脳殻の積み替えというサイバーパンク特有の真相による衝撃をぶつけることでぐっと視聴者の心を掴むという、練りに練られて用意された1話だと納得させられました。

ちなみに今回、犯人も含めて死者は一人も出ていません(北米産業振興会の男の死は偽装なので)

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