Interview | QPLO

QPLO
(左)🟦Rio Tokue(トクエリオ)
(右)🟩Kosuke Someya(ソメヤコウスケ)

独自のパフォーマンススタイルで観客を魅了し続けるディスコ・ダンスミュージックバンドQPLO。
ストーリー性を含ませた数々のコンセプチュアルな作品を生み出す彼らが捉える"ポップスの本質"とは。
クラブ文化が少ない日本に、新たなムーブメントを巻き起こそうと試みる経緯にも迫る。

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ー僕らでやったら面白いものができる

ー初めに読者に向けてQPLO(キュプロ)の簡単な自己紹介をお願いします。

🟩Someya：ギタリスト兼パフォーマーのソメヤコウスケです。

🟦Rio：マニュピレーターのRioです。

🟩Someya：ディスコ、ハウスっていうジャンルを主軸に、ダンスミュージックを作ってパフォーマンスしている東京のバンドです。

ーお2人がQPLOとして音楽活動を始めることになったきっかけを教えてください。

🟩Someya：まず、音楽の話をずっとする友達だったんですよ。共通で大好きな音楽ってのが結構あって、僕は当時ロックバンドをやってたんですけど、トラックもの、かつダンスミュージックをやりたかったから、最初は別プロジェクト的なノリで、一緒に遊びで曲作ろうよ！ってなったのがきっかけですね。

🟦Rio：最初はね、実家に来たりしてね。

🟩Someya：そうそう、軽い感じでした。Rioくん自身も当時DJを主にやっていて、一人でトラック作ってたりってのはあったんですけど、僕らでやったら面白いものできるんじゃないかな、って思ってスタートしました。

🟦Rio：あとはお互いに「こういうのができるよ」っていう手札公開みたいな。「僕はこういうのが得意だからこれが合うんじゃないかな」、「あ、それいいね」っていうような会話をしていく中で、ビルドアップしていった感じです。

ーQPLOのアーティスト名の由来はなんですか？

🟩Someya：○と棒だけで書けてデザイン性に優れていることと、LEGOみたいなおもちゃ感というか、可愛らしさを大事にしたくて。ロゴやグッズにしたときにもかなりかわいいし、あとはやっぱり造語にもしたかったので、"QPLO"になりました。

ーお2人は幼少期、今とは少し異なったジャンルの音楽をルーツに持っていたと聞きましたが(ロックミュージック等)、現在"ディスコ、ダンスミュージック"にフォーカスして楽曲制作を始めたのは何故ですか？

🟦Rio：僕は母親がレコードコレクターで、その中で一番最初に好きになったのがNew Order(ニュー・オーダー)でした。New Orderはダンスミュージックの歴史において、今クラシックになってるような「Blue Monday」って曲があって、一概に"ロックバンド"っていうわけでもなくて。あとは、中学生の頃からハウスを聴き始めて、それまでは、いわゆるユーロビートと言われるようなDead Or Alive(デッド・オア・アライブ)とか、今Stranger Things(ストレンジャー・シングス)のサウンドトラックでピックアップされてるような曲を聴いてましたね。ダンス・ポップみたいなものが初めは好きだったので、それが多分結果的にSomeyaくんのポップセンスとかとマッチしたのかなと。

🟩Someya：彼は結構コアなものも好きで、対して僕はポップスがめちゃめちゃ好きなんですよ。自分はポップスを作ることが能力として向いてるな、って言うのがずっとあって。だから、J-POPバンドもやっていたし。自分のルーツの延長線上にあることが今やってることだなっていう意識なので、ルーツと今やってるディスコ、ダンスミュージックに距離があるってわけではないですね。

ーなるほど、ちなみに今影響を受けてたり、ハマっているアーティストはいますか？

🟦Rio：Disclosure(ディスクロージャー)は散々聴いて、ここがどうだとか、こうだとか話したし。あとは、Yuksek(ユクセック)、Tame lmpala(テーム・インパラ)も。

🟩Someya：Tame Impalaはずっとだね。それこそAvalanches(アヴァランチーズ)もだし。あとは、僕単体でギターに関して言うと、Nile Rodgers(ナイル・ロジャース)ですね。

🟦Rio：意外とSomeyaくんKhruangbin(クルアンビン)も好きだよね。

ーえ！そうなんですか？

🟩Someya：大好きですね。

🟦Rio : リズムの作り方とかね。

🟩Someya：そうそう。僕がよく使うカッティング*1フレーズのリズムもボサノバのリズムとかなり共通してるからね。僕、意外と普段は大人しい音楽好きなんですよ(笑)。

ーライブでのSomeyaさんからイメージすると、意外な一面ですね(笑)。

*1 カッティング：ブラッシングや休符でアクセントをつけて歯切れよく音を短く切る演奏方法のこと。

Rio & Someya

ー"僕らはポップスをやってる"という意識

ー先日のduoのインタビューでは「音楽に魅了された瞬間」をテーマにお話されていましたが、お二人の音楽への熱意が伝わる特異な視点がとても興味深かったです。その視点を踏まえ、楽曲制作で重要視している点はなんですか？

🟩Someya：大事だなって思ってるのは、"僕らはポップスをやってる"っていう意識ですかね。ハウスなりEDMなり、展開とかも含めてポップじゃない方向に転がることって簡単に起こり得て。

🟦Rio：さっき影響を受けてるアーティストの話で言いそびれちゃったんだけど、The Chemical Brothers(ケミカル・ブラザーズ)とかもよく聴いてて。The Chemical Brothersも、僕らが言う"ポップな要素"が核として入っていて、彼ら自身もインタビューでそれは言ってて。そういうところは抜け落ちないようにしたいよね。

🟩Someya：うん。結局ポップスっていうのは、"より多くの人達が気持ちいいと思う瞬間だったり、グッとくる"っていうところに共通項を持っているからポピュラーになるんだろうなって。だから、ダンスミュージックを作る上で、"皆が踊れる=かつポップである"っていうような意識はありますね。

🟦Rio：さっきのだとDisclosureとかは、ドン・ドン・ドン・ドンってノってる時に、気持ちいいタイミングでキック*2が抜けてたり、でもそれを変なところで唐突にやってしまうと、何？みたいになっちゃうけど。その部分からDisclosureとかも"ポップである"ってわかるっていう、具体例でいうと。

*2 キック：ドラムセットの低音部分。 足で演奏することからキックと呼ばれる。 音色、パターン共に非常に大きな影響を与える。

🟩Someya：だから、細かいギミックとかを気にするって、どっちかっていうと"ポップスと離れる"って思われるかもしれないですけど、本来その"細かい部分がもっと全体のポップスに繋がっている"っていう捉え方を僕らはしてます。でも、ポップって言うと意味は広いから、その中でもかつ僕らが最高って思うものはポップスっていう意識と、また別にちゃんとあります。そこがないと、つまらないものになるだろうな、と思うし。


ーお2人の話をインタビュー含め聞いていて、"何故自分はこの曲を良いと思うのか"っていう部分に視点を向ける必要性にハッとさせられました(笑)。


🟦Rio：そう。だから、僕の好きな曲の傾向を凄い彼が分析してくれたり。

🟩Someya：やっぱり作るうえではそこをちゃんと知らないといけないので、自分の本当に好きなものを作りたいから。その中で、Rioくんと僕のそれぞれ得意分野があって、お互いにそこに依存しあって、信頼して任せて作ってるっていう感じです。

ーいいと思う曲は情景が浮かぶ

ーTokyo weekenderのインタビューで、楽曲制作の際に「曲の雰囲気に合った映画や、ファッションショーの映像を参考にする」とおっしゃっていましたが、それらをリファレンスとする理由や、今までに参考にしてきたものを具体的にお聞かせください。

🟦Rio ：リファレンスとする理由としては、"いいなって思う曲は情景が浮かぶ"っていうのがあって、それは大事な要素かなっていうか。あとは、単純に自分が好きなものの要素としてそれがあるから、組み込むために映像を見て合うかどうかとか。

🟩Someya：結構僕らは2人ともそうなんですけど、曲になんのイメージも持たずに作ると進まないんですよ。だから、何をテーマにするかって話から色んな映像を見たりします。例えば、"このファッションショーの映像にどんな曲が流れてたら、僕らは最高って思うか"、って問いに答えを出す、みたいな。

🟦Rio：だから、勝手にオファーだよね(笑)。

🟩Someya：そうそう、勝手にね(笑)。具体的にっていうのは、楽曲ごとに結構変わったりするんですよ。

🟦Rio：うん。案外スルッとそのイメージのまま行くこともあるし、180度変わっちゃうときもあるので。結局、映像見て作ったものの強度が良くないと、ん〜、浅いな〜…ってなったり(笑)。

ー視覚的要素からの方が、楽曲制作に対して必要なものを得やすいんですね。

🟩Someya：視覚的イメージっていうのも、重要視してますね。ある曲を聴いた時に、"視覚的イメージが浮かぶかどうか"っていうのは、僕らの好きな音楽に対する視点の一つでもあるので。それを僕らも持とうよ、っていう感じです。

ー続けてお2人の"ファッション"についてお伺いしたいと思います。
お2人のライブ衣装はスーツ、ジャケットスタイルが定番だと見受けられましたが、このように定めている理由はありますか？

Kosuke Someya(Gt)

🟩Someya：僕がスタイルとしてカチッとさせたいっていう意識は強くて(笑)。あとは、70、80年代のディスコっていう文脈だったりとか。

🟦Rio ：僕は自分の好きなミュージシャンでスーツ着てる人たちが多くて、Soulwax(ソウルワックス)とか。

🟩Someya：あと、髪型がそれぞれロング、ボブヘアーの2人のメガネの男の子が、スーツ着てイェイっていうのが、好き(笑)。お互いにファッションでジャケット着ることが多いしね。

ー私服でもですか？

🟩Someya：私服でも。全然私服でネクタイとかも締めるし。だから割とすんなり、延長線上でね。

🟦Rio：だから、スーツ好き、シャツかっけーって思ってるっていう(笑)。

Rio Tokue(DJ)

ー"宇宙への旅"、"異星旅行記"をテーマとした1st EP「Spaceship」、2nd EP「Parallel Voyage!」は、非常にコンセプチュアルな作品だと感じました。これらのテーマに至った経緯や、この二作の制作の裏側をお聞かせください。

🟩Someya：ストーリーになってる作品が大好きだから、それを僕らもやってみたかったっていうのがあって。お互いに沢山話し合って作って、一旦コンセプチュアルやったぜ！っていう今感じです(笑)。

🟦Rio：個人的な話をすると、以前誰かが"シンセサイザーはその人が出したい音が出ちゃう"って話をしてて、僕は"スペーシー"なものが好きだから、"スペーシー"な音ばっか作っちゃうので(笑)。

🟩Someya：今作ってるのもテーマは"スペーシー"じゃないんだけど、結果"スペーシー"になっちゃってるね(笑)。

ー元々お2人の趣味とか好きなジャンルだったりが凄く似てますよね。

🟩Someya：うんうん、共通項は濃くありますね。

🟦Rio : いつもどっちが先に提案するかってだけで、お互い大体その案に乗っちゃうから。

ーじゃあ、意見が割れるってこともあまりないんですね。

🟩Someya：ないと思いますね。あるとすれば、それはRioくんくどいよ、とか(笑)。

🟦Rio：大体僕が提案したものはSomeyaくんが案を膨らませてくれたりとか。

🟩Someya：僕がポップ化させる的な流れはあるね。それによって、聴きやすくなったりとか。

🟦Rio：だから僕が"歪担当"で、彼が"ポップ担当"みたいな(笑)。それが逆転するときもあります。

ー2nd EP「Parallel Voyage!」ではフィーチャリングゲストにSouth penguinのアカツカさん、Dos MonosのTaiTanさんを迎えていますが、共に楽曲制作をすることになったきっかけはなんですか？

🟩Someya：僕らがラブレターみたいなメールを2人に送ったんです。デモの詳細を送って、あなたの歌声が欲しいですってちゃんとオファーをして。だから、知り合いとかでも全くなかったです。

ーQPLO側からの熱烈なラブコールがきっかけだったんですね！

🟦Rio：そうそう、シンプルに好きっていう(笑)。2人が書く歌詞も、歌声も好きだから、もう頼むしかないねってなりました。

ーアルバムのアートワークもQPLOの世界観やテーマに沿ったものに仕上がっていますが、ジャケットデザインはどのように決まりましたか？

1st EP 「Spaceship」 / Hayato Katsura

🟦Rio：今までの作品でいうと、その作品のコンセプトでアーティストにオーダーして、それをちゃんと出力できるアーティストがいるので、そこに依頼したって感じです。

2nd EP 「Parallel Vovage!」(左)、1st single 「Shining Fog Bar」(右) / HAIBI HIZIOKA

🟩Someya：共通認識として、"解る人"に依頼はするので。「Spaceship」は"Hayato Katsura"さんに、「Parallel Voyage!」、「Shining Fog Bar」は"HAIBI HIZIOKA"さんにお願いしました。僕らの音楽についてもだいぶわかってるから、一緒にやってる仲間として凄く信頼してますね。


ー以前、フランスのミュージシャン/プロデューサーのMyd(ミド)が自身のYouTube DJ配信にて「Spaceship」を流していましたが、こちらはどういった経緯でしたか？

🟩Someya：RioくんがMydを教えてくれて、僕がインスタをフォローしたら、まさかの返ってきて(笑)。それで彼が来日してるときに、僕があげてたストーリーに「俺今東京いるから会おうぜ！」ってメッセージがきて。

ーええ！凄いですね！

🟩Someya：会うのは結果叶わなかったんですけど、DMが続いてた中で、僕らの音楽に対して「最高！wavデータちょうだいよ！」って連絡がきたのがきっかけで(笑)。新曲が出たときもまた是非聴いてもらいたいなって思ってます。

ーコミュニケーションとダンスの強い結びつき

ー音楽への探究心が止まることのないお2人が、自主企画を予定しているそうですが、企画の意図や内容を具体的に教えてください。

🟦Rio：イベントタイトルを"Bee-hive"にしようと思ってて、"ミツバチの巣"っていう意味なんですけど。僕らの普段の会話の中にもある、コミュニケーションとダンスっていうものは、結びつきが強くて。それを表現するのに、人間から見たらダンスをするようにコミュニケーションを取ってるミツバチがピッタリだなって思って。だから、踊ることによってコミュニケーションが取れる空間(=ミツバチの巣のような場所)を作りたいと思ってるんです。音楽としては、ディスコハウスを中心にDJやアクトを集めて、コンスタントに続けていきたいと思ってる企画ですね。

🟩Someya：そう、継続的にやっていきたいなって思ってます。ダンスミュージックが好きな人が集まる、一個のカルチャーシーンになればいいなって。第一回の開催が10月頃になるとは思います。

ー最後に、楽曲のリリース予定などのお知らせがあれば、読者へ向けてのメッセージと共にお聞かせください。

🟩Someya：8月に"No More Fight"のシングルをリリースする予定です。

🟦Rio：ボーカルにはSTAP Sigh Boysを迎えていて、結果的にいい作品に仕上がっていると思うので、是非聴いていただきたいです。

🟩Someya：今月末に一新したアーティスト写真と共に、リリース情報を公開しようと思ってるので、チェックをお願いします！ライブパフォーマンスにおいては、僕ら自身が僕らの曲を楽しんで、かつ皆と一緒に踊りたい！って思いでやっているので。

ー全力で伝わってると思います！

一同：(笑)。

🟩Someya：だから、もし足を運んでいただける機会があれば、一緒に踊ろうね！って感じで。そして、僕を見てほしい(笑)。そして、キャーって言ってほしい(笑)！

🟦Rio：聴いてくれて、いいなって思ってくれたらライブにてその先を用意しているので！僕のインスタのストーリーでもいっぱい曲をあげているので、ディスコとかハウスミュージックを知るきっかけになってくれたらなって。一緒にのめり込もうよ、ディグろうよ！って気持ちで(笑)。

🟩Someya：クラブ文化があまりない日本に、各々がダンスをする時間や機会を僕らが設けて、知らない小学生同士が一緒に遊ぶような(笑)感覚で、近い距離感で皆とも共有できたらなって思ってます！

インタビュー・文・写真 / 木村星来