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いちばん嬉しかった「家族に紹介したい」の話

 私は今年の春まで、ずっとひとりぼっちだった。
 
 ほぼ1年ぶりに、アイドルを通じて仲良くなった「いにしえのフォロワー」の友人が新潟に遊びに来てくれた。ひたすらに、2010年代~2020年代ののアイドルや音楽、カルチャーの話をした。フワちゃんのラジオの話をしてひとしきり笑った。ぎりぎりを攻めすぎて飛行機に乗り遅れ諦めスマイルで自撮りするという水曜どうでしょうみたいなムーブをした。アラサーでやってきた青春!ずっと笑いっぱなしだった。

 彼は、年齢も出身地も違う、オタクの話しかしないけれど、少し暗い話をできる友人でもある。会わなかった間にあったあれこれ、noteにも書いた、私が思春期からずっとひとりぼっちだと感じていた話をした。

 こんな話つまんないかな~と思って、暗い話してごめんねと言ったら、「生身の人間の経験から生まれる話で正直めっちゃおもしろかったっす」と言ってもらえた。生々しくて、ちょっと汚い、そんな自分の体験を面白いと聞いてくれて、月並みだけど「ありがとう…」(でんぱ組.inc/『絢爛マイユース』より)。
 本来は友人と楽しく過ごした日記で終わるものなのだろうけど、この体験を話しているなかで、ひとつの発見があった(わざわざなんの売上にもつながらない、地鶏のnoteで書こうと思ったくらいには)。

 それは、「いつの間にかひとりぼっちだと感じなくなっていた」ということである。

 自営業を始めて約1年、本格的に販売を始め、お客さんがついてくれるようになってから約半年、本当にいろいろな方に出会った。
 その中に、私よりも少し年上で、「おたくの商品を使いたい、あと、うちの商品も買ってほしい」というよくあるDMで知り合った女性がいる(以下、便宜上「彼女」とします)。実際に会って、納品して、話して、というのを繰り返すうちに私は彼女のファンになった。いつだってパワフルで、優しくて、朗らかで、かわいくて、おもしろい、SUPER BEAVERと韓国ドラマが大好きな彼女。猫が亡くなったときは、「今日は猫ちゃんのそばにいてあげてね」と優しいことばをかけてくれた。何よりも、彼女の作るごはんは優しくてあったかくて、素朴でありながらとびきりおいしい。「今日もおいしかったです、最高でした!」と言うと、「え~特別なことしてないよ!」と言う謙虚な彼女。いつだって試行錯誤しながらも攻め続けて、そしてなぜか私のことをとても気に入ってくれた。同業者(つまり私のお客さん候補の方)に私の話をたくさんしてくれて、私が納品に行くと、いろんな話をして、今日もいいね!おもしろいね~!と言って私の写真を撮ったり。

 知り合って4か月ほど経った最近、初めてふたりで飲みに行った。彼女が「あなたに食べてほしいと思ってたの!」と教えてくれたとっておきのお店に連れて行ってくれた。初めてふたりで飲んだ彼女とは、いろいろな話をした。これからの互いの事業のビジョン、インボイスのこと、今の仕事をする前はどんなことをしていたのか。互いに新しいことに挑戦しようとしていること、互いの利益になるようなことをしていこうということ。

 そして、私のことを知ったきっかけになったお店に2軒目で飲みに行った。そのお店は、70代くらいのご夫婦でやっているお店で、もう遠くの街に引っ越してしまったけど私のことを気にかけてくれていた別の女性が紹介してくれたところだった。

 マスターは、私に「いつもがんばっているよな、本当に応援している、俺はおまえに幸せになってほしい、おまえと結婚するやつは幸せだよ、だから早く嫁に行けよ」という、時代錯誤ながらもストレートな愛情をくれた。彼女も、うんうんと言いながらニコニコ笑いながら、ボトルキープをした焼酎を飲んでいて、全員がなんだかとてもかわいかった(彼女はべらぼうに強いから、同じペースで飲んだ私はその日の深夜に久しぶりにめちゃめちゃ吐いた)。仕事を通じて色々な方に巡り合って、大切にしてくれて、本当にありがたいなと感じた夜だった。

 そんな彼女から、昨日「お店の新しい門出のパーティーにぜひ来てほしい」というお誘いがあった。お店を改装して、シェフを呼んでおいしい料理を食べること、席数が10ほどしかないので本当に内々の会だけど、シェフにも私の事業のことを話してあるからぜひつなぎたいということ。そして、「自分の両親も呼んでいて、私の原点にぜひ会ってほしい」ということがつづられていた。そんな大切な日に、一出入業者の私を呼んでくれたことがとても嬉しい。これまでの私の歴史の中でいちばん嬉しい「家族に紹介したい」だった。(※4年付き合った元彼に「家族に紹介したい」と言われたときは、「ちょっと重くてやだな~」という理由で断ったというのに!)

 「そんな大切な会に呼んでくれてありがとうございます、嬉しいです、ぜひ参加させてください!」「ワンピース着ていきますね」と返すと彼女は「フリフリので来てね!」と送ってきた。私はいつの間にか、ひとりぼっちではなくなっていた。

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