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島根県立隠岐島前高校|大野佳祐さん(1)

2020年9月27日(日)19:00~20:30
「しつもん×探究トーク」第2弾を開催しました。

ゲスト講師は大野佳祐さん。隠岐島前高校には、教員ではない「魅力化コーディネーター」が常駐し、先進的な教育環境づくりを担っています。その成果が認められ、公立学校としては全国初の「学校経営補佐官」に任命された大野さん。このコロナ禍、4月の緊急事態宣言下において、全国の学校でなかなか進まなかった授業のオンライン配信を1ヶ月にも満たない短期間で実現した立役者でもあります。試行錯誤を繰り返してきた方の言葉には、前に進むための「本質的なヒント」があるのではないでしょうか。

最新のお知らせは、しつもん財団のホームページにてご確認ください。

<ゲスト講師> 島根県立隠岐島前高校 学校経営補佐官 大野 佳祐氏
1979年東京生まれサッカー育ち。学生時代にバックパックで世界各国を巡る。
2012年にバングラデシュに学校兼診療所を創設。
2014年に海士町に移住し、隠岐島前高校魅力化プロジェクトに参画。
2019年4月より現職。
<対談者>しつもん財団理事 藤代圭一
教えるのではなく問いかけることでやる気を引き出し、考える力をはぐくむ「しつもんメンタルトレーニング」を考案、全国大会優勝チーム、アイスホッケーU14日本代表チーム、さらには地域で1勝を目指すキッズチームまで、数多くの実績を挙げている。現在はスポーツだけでなく、子どもの学力向上をめざす保護者や教育関係者に向けた講演・ワークショップをおこない、高い評価を得ている。著書に『しつもんで夢中をつくる!子どもの人生を変える好奇心の育て方』(旬報社)ほか。

代表理事 松田充弘よりご挨拶

しつもん財団代表理事の松田充弘と申します。
今回のこの企画の背景を少しお話したいと思います。

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15年ほど前から「しつもん」を研究し続けてきました。しつもんは「問い」なんですが、相手に問いかけるコミュニケーションだけではなく、どちらかと言えば「自分に問いかける」ということを中心に行ってきました。「自分と対話する」ということですね。なぜ自分と対話するのかというと、”自分の答えを自分で見つける”、”自分で課題を発見して自分で答えを見つける”、ということを大切にしたいなと考えているからです。

生き方・お仕事・コミュニケーション、そういったところで「自分との対話」はすごく大事だと思います。それと同時に教育というか、子どもの段階から学んでいくプロセスにおいて「自分に問いかけて自分で答えを見つける」ことが重要ではないかということで…最初は個人の活動として学校でしつもんの授業を行い、先生たちにもしつもん力、どう対話するかということを伝えてきました。その後、今回の主催でもあります「しつもん財団」ができました。今は財団としていろんな学校でしつもん授業をさせていただいたり、先生方の研修をさせていただいたりしています。

毎年夏休みには全国の先生方を対象にして、幼稚園から小中高、大学、専門学校、塾も含めて最近では200校以上の先生をご招待してしつもん力の研修を行ってきました。2020年は元々東京オリンピックが夏に開催予定だったので時期をずらそうと思っていたのですが、コロナになってしまい、どういう形でしつもんを学ぶという機会を作ろうかということをみんなで考えていたところ、学校教育の中で「探究」というものがありまして、そこでは「しつもん」が重要ということが言われてたので「しつもんと探究」という2つのキーワードで、その専門家の方やそのような活動・取り組みをしている方々との対話をしていければなと思っています。

みなさんにどういう気持ちで受講をして欲しいかというと、ただ話を聞くというよりも、この対話の中できっとヒントや学びやインスピレーションが出てくると思うんですよね。それを日々の教育だったりとか、お子さんと接する時にいかしていただきたいなと思います。

今回は学校教育関係者だけではなく、特別ですね一般の方にも公開してますので、様々な立場の方が参加していると思います。その中でお子さんと関わることもあるかと思いますし、もしくは子どもではなく、例えば部下と関わることもあると思います。そういう時にもきっと、相手に自ら考えてもらうとか、しつもんを活用して解決を導き出すとか、そういうこともできると思いますので、そんな視点で聞いていただきたいなと思います。

教育魅力化プロジェクトの背景

藤代圭一(以下、藤代):大野さんのご紹介をさせていただきます。
僕自身、今沖縄と海士町、島根県の離島ですね。海士町というところで暮らしていて、海士町で学校を魅力的にして、地域全体で子どもたちの教育を考えていくという取り組みをされていて、僕自身も大きな影響をいただいている方です。教育だけではなく、地域の暮らし方とか幸せって何なんだろうっていうことから、多方面から関わりをいただいています。

今日は特に教育分野において問いかけってどんなところが重要なのかな?とか、探究との関係性って何だろう?ということについてお話を伺えればと思います。では、改めまして大野さんよろしくお願いします。

大野圭介さん(以下、大野):よろしくお願いします。

藤代:簡単に自己紹介していただいてもいいですか?

大野:はい、大野圭祐といいます。よろしくお願いします。1979年生まれなので、今年41歳になります。東京の日野市というところで生まれ育って、大学卒業まで実家から通いました。大学卒業して学校法人早稲田大学に職員として入職をして、10年ちょっと働いてこの島に移住しました。今は「教育魅力化プロジェクト」のプロジェクトリーダーをしながら、自分で会社を持ってたり社団法人を持ってたり色々なことをやっていますけど、メインとしては「学校を軸とした地方創生」に取り組んでいる感じです。

藤代:はい。ではよろしくお願いいたします。最初に皆さんに「しつもん」をさせていただきます。僕と大野さんの話を聞くだけでなく、参加しながら対話を通じて学びを深めていただければと思うので、ぜひチャット欄で教えていただけたらと思います。

『今日、この時間が終わった時にどうなっていたら最高ですか?』

この答えをチャットのメッセージのところで教えてください。このイベントの告知ページをご覧いただいたと思いますが、その内容を踏まえて「こんなことがわかったらいいな」とか「大野さんにこんなこと聞けたらいいな」とか「こんなことを感じられたらいいなぁ」とか、どんな答えでも構いません。

ちなみに「しつもん」に答える時のルールというのがあって、3つですね。
しつもんの答えはすべて正解、わからないのも正解、そして他の人の答えをどんな答えも受けとめるというルールでやっているので、他の人の答えを気にせずご自身の感じていることを教えていただければと思います。

『地域貢献のヒントがあったら良いと思います』
『何かの発見があれば嬉しいです』
『今住んでいる佐渡島の教育、地方創生に繋げられたら嬉しい』
『地域を元気にする活動を広げたい』
『新しい発見があるといいな』
『子どもたちの役に立つ存在になりたいです』
『教育に対する新たな視点を得られたらいいなと思います』

藤代:みなさん続々とありがとうございます。地域と学校のつながりを軸とした活動って、できそうでできないところもあるかなと僕は思っていて、でも海外に視察に行くと必ず子どもを育てるためには地域で取り組まなきゃいけない。みたいなキーワードを耳にすることが多いんですけど、大野さんは元々そういう考えを持っていたのか、それともある時そう思い始めたのかって、何かありますか?

大野:コミュニティで育てるみたいなのは実はそんなに思ったことはなくて、ただ「多様な人たちがその子どもに関わると良い」というのはずっと思っていますね。

藤代:それはどうしてですか?

大野:例えば、勉強が得意じゃなくてもスポーツがすごい得意な子もいるし、勉強もスポーツも得意じゃないけど絵がすごく上手い子がいたりとか、よく分からないけどパソコンの雑誌とかいっぱい持ってて詳しい人がいたり。そういう時に「先生とか学校の一つの評価軸だけで何年も評価されなきゃいけない」っていうことにあんまり良さを感じてなかったと思う。

藤代:うん、うん。

大野:それはそれでもちろん大事なのかもしれないですけど、横に居て「これだけパソコンのこと知ってるってすごいよね」とか「こんなに色彩感覚が豊かで絵が描けるってすごいよね」みたいなことを言う人が一人でもいたらその子自身はもっと輝けたりするんじゃないかな。僕自身あまり勉強得意じゃなかったので。。ただサッカーだけはすげーできたっていう、俺がそういう風に思っていたところがあるかもしれないです。

藤代:確かに。30人の子どもたちがいたとして、僕が一人しか関われないとしたら1回その子の価値観とかその子はこういう子だろうなって決めちゃうと、中々そこから違う側面を発見したり良さを見つけるのって難しいですよね。思い込みができてしまうというか。

大野:そうですね。過去育ててきた生徒達でもどうしてもそのデータベースの中から「こういう感じだろう」って当てはめがやっぱりあったりするだろうし、自分自身もまだまだあると思うんですけど。色眼鏡で見てしまったりする場面ってやっぱりゼロじゃない。親でさえそうだと思うから、そこを色んな目で見てあげることの価値はあるんじゃないかな?っていうのは昔から思っていました。今もそうです。

藤代:学校で、そういうところも大切にしてやっていることはありますか?

大野:僕らの学校は県立高校なんですけど、先生のほかに今職員室にコーディネーターが5人、入っているんですね。これは教科を教えているわけではないので評価というところから一歩下がっているし、学校出ても学習センターっていう公立の塾があって、その塾は通知表なんか全然ないので、行ってもいいし行かなくてもいいしっていう。色んなスタッフがそこでまた生徒のことを見ていて寮生が半数くらいいるんですけど、寮のハウスマスターは2人いて、暮らしの中で彼らの良さを見ている。地域は地域で、地域に出た時にちゃんと怒ってくれる人もいるし、ちゃんと褒めてくれる人もいる。色んな所で色んな人たちが関わるっていのは小さい島のいいところかなって思います。

藤代:確かに。そうか、海士町の紹介をしないと皆さんとの認識がずれちゃうかもしれないんで。僕たちが住んでいるこの島は2300人弱くらいの島で、島前高校は生徒何人くらいでしたっけ?

大野:160人

藤代:160人で半分くらいが元々島の子たち。中学校まで島で育ってきた子たちが高校に入って約半分が島外からきているという感じですよね。島外の比率、どこの県が多いとかってあるんですか?全国各地から来るんですか?

大野:まぁ、そう。人数的にも都市部の方が多くて、東京とか兵庫とか多いですけど、北は北海道から南は長崎。海外もいくつかのところから来ている感じですね。

藤代:元々島に住んでいた子たちと、島の外から魅力を感じてやってきた子たちがごちゃ混ぜになって。もちろん先生たちもそうですよね。魅力化の人たちも含めると色んなバックグランドを持った人たちが関わっている、島にある学校になります。

そうだ、皆さんも途中でも構いませんので質問がありましたら送っていただければと思います。全部の質問にお答えできないかもしれませんが、質問が浮かんだタイミングでチャットの方にのせてください。

では、過去の話も皆さんに聞いていただいた方が分かりやすいかなと思うので。今は160人の高校生がいて、島外・島内の子どもたちがごちゃ混ぜになって学んでいるわけなんですけど。今はうまくいってるけど過去はそうじゃなかったわけじゃないですか。人数が減ってしまうという時期があったと思うんですけど。その辺の話をちょっと簡単に紹介していただけますか?

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大野:そうですね。どこの地域でもそうだと思うんですけど、、少子高齢化とか財政難だったりとか、自治体がもうね経営破綻するみたいな話も出てきたりしてますけど、いわゆる都会が素晴らしい、素敵であるっていう、昔ながらの価値観に基づいて、特に親御さんを中心に僕らで言うと「この島を早く出たほうがいい」と。都会でいい仕事に就いた方がいいでしょ?いい大学に入っていい会社に入って。っていう価値観はまぁ昔からずっとあって、そういう価値観でてきていて。島が衰退すればするほどそういう価値観がより高まっていくっていう無理ゲーに入っていて、人は減り続けるし若者は流出し続けるし、、すると相対的に魅力は落ちていくし島は死んでいく。。っていうこの負のスパイラルにほぼすべての地域が入っている状況かなぁ。

僕らは「人の還流」を起こすことができれば、この過疎化っていうものに対して何らかの一つの提示を投げかけられるんじゃないか?っていうところからスタートしていて。

「意志ある子どもたち」がこの島で学びに来る。それは日本全国から留学してくる。まさにここでしかできないことをみんなで学びに来るんだっていう子たちが、都会には絶対いるはずだということを、11年前に町長以下考えて「島留学」っていうコンセプトを打ち出したんですよね。最初でこそ本当に、なかなか学校に行けてなくて都会の大きな学校で苦しんでますみたいな子ももちろんいたんですけど、今はどちらかというと「こういうwillがあっていきたいです」とか「都会にはないこういうことを学びに行きたいんです」「将来地方創生に関わりたくて現場で学びたいです」っていう子たちが増えています。

藤代:なるほど。

大野:県教委としては、どうしても経済的に採算が合わないから小さい学校を早く統廃合して数を減らした方がいいでしょっていうことは、もちろん県のロジックとしてあるのかなーと思いますけど。

小さい学校が地域からなくなることのインパクトって、高山市とかが出してるデータが実はあって、学校がなくなることのインパクトはめちゃくちゃでかいんですよ。特に若者が一気にいなくなるので。若者がいなくなると活気がなくなるし活気がなくなるとお祭りができなくなって、ますます活気がなくなって高齢化率がグンとあがる。

藤代:うん。

大野:それは、なんていうのかな。小さい地域であればあるほど数字上はもちろんわかるんだけど、歩いてて若者に出会わないっていうこの衝撃は多分結構みんな感じるんだと思うんですよね。いよいよこれはもうダメだっていう風に、ある意味では諦めていくみたいなことも全国各地で起こってるんじゃないかなっていうのは想像しています。

藤代:なるほどなぁ。どなたかの本で、子どもがいなくなるとその地域は未来を語れなくなるみたいな文言があって。大野さんの話を聞いてまさにそうじゃないかなってすごく感じていて。そこに人がいなくなるということも別に諦めていくしかないというか、もう未来を語ったてしかたないじゃんっていう気持ちになっていくんだろうなってすごく思うんですよね。

大野:うん。バトンを渡す先の人たちがいる地域といない地域っていうのは、今二極化しているというか。今も中津川の方がコメントしてくれてますけど、まぁそういうふうに上手くいき始めた事例も数多くあるんじゃないかって思っていて。ただ、どこだけが上手くいくっていうのはあまり僕は関心がないというか。じゃあ日本の全部が、全部の地域がちゃんと盛り上がっていく仕組みが必要なんじゃないの?っていうので、公教育に関わってるっていう感じですね。

プロセスの価値に気づいた衝撃の体験

藤代:なるほど、なるほど。色んな取り組みされてきたと思うんですけど、最初から一気にうまくいったわけじゃないじゃないですか。特に子どもたちの活気が戻っていくっていう中で印象に残っていることは何かありますか?

大野:そうですね。1個は高校生たちが地域に入って十何年ぶりとかに祭りを一緒にやったっていうケースがあって。それは本当に地域の人が喜んでたなぁ。一番大きなインパクトとして僕には残っているかなぁ。

藤代:具体的にどういうことだったんですか?

大野:そこにおじいちゃんが住んでて、そこの祭りが全然開催されなくて、よくよく話を聞いてみるとおじいちゃんたちばっかりだから神輿が担げないということで。

藤代:あぁ。なるほど。

大野:それを若者が、高校生たちがいっぱい入っていって神輿は担げないかもしれないけどちょっとでもできないか?みたいなことを提案して、お祭りが復活したっていうね、その日限りでしたけど。これは本当にお年寄りの方々も喜んでたし高校生たちも自分がやって良かったなーっていう風になってたし。

藤代:なるほど。

大野:本当に泣いてたお年寄りもいたりして。

藤代:えーっ

大野:それは凄いことなんだなーって。

藤代:それを最初の設置点は、そのお年寄りの人がそう思っているんだっていうのはどうやって知っていくものなんですか?

大野:授業の中で地域課題解決型の学習をやっていて、チームで自分たちが見つけた地域課題を解決しようみたいなのがあるんですけど、だいたい自分たちの住んでいる地域、島の子たちですら、自分たちの地域の課題は何だろうって目線で地域を眺めた子があまりいなくて、その子たちも散々悩んだんだけど、解決したい課題ってあるの?とか最近聞いた課題ってどんなのがあるの?みたいな話をした時に、とある男の子が「僕のおじいちゃんのいる地域が実はこうで・・」みたいな話があって、それで1回聞きに行こうかーみたいな感じで。

藤代:おおー

大野:教員とかコーディネーターとか一緒に行って聞いて。1回目断られるんだけどもう一回行く。みたいな。

藤代:断られるんだ(笑)僕は今まで住んできたところって愛知県名古屋市とか、東京都に住んできたから、祭りの重大さみたいなのをあまり知らないまま育ってきて、祭りってあるもので、参加したかったら参加するみたいな感覚だったんですよね。それでも地域、本当にこういった島の祭りはちょっと違うと感じてるんですけど。まぁ、もちろん僕が参加しなかっただけで、地域の祭りを作っている方は同じような思いでやっていると思うんですけど。祭りの意味みたいなのがあるんですよね。

大野:祭りはやっぱすごいなぁと思って。僕も藤代君と同じで全然祭りとか興味なかったし、人混みとかやめてよ、みたいな感じだったんですけど、こっちに移住してしばらくしたら13年ぶりに僕の地区で祭りがあるって言われて、笛か手拍子(てびし)、手拍子っていうちっちゃいシンバルみたいカチャカチャやるんですけど、「笛か手拍子どっちがいい?」って言われて、

藤代:笑

大野:いや、笛は吹けないから手拍子ですかねーって言ったら、毎日6時半から週3回練習があるから参加してねって言われて

藤代:あはははは

大野:仕事めっちゃ忙しいけどーみたいな感じだったけど、まぁ騙されたと思って参加してみようかなせっかく地域に来たしと思って参加してみたら、それがすごく良くて。なるほどこうやって受け継がれてきたのね。この文化は。みたいな。。

藤代:へぇー

大野:自分の中では結構衝撃的でしたね。

藤代:なるほどなぁ。祭りはなくてはならないんですね。その時大野さんが感じた祭りの価値みたいのってどの辺に感じたんですか?

大野:祭りの目的はプロセスにあるんだなーって感じて。祭りを作っていく過程が目的なんですよね。

藤代:なるほど。

大野:僕はどっちかっていうと、東京で仕事してて非常に目的的な人間だったんですけど、祭りで言うと最後当日までに仕上げりゃいいんでしょ?っていう感覚が、僕は多分仕事上あったなぁと思ってて。プロセスで誰かを傷つけても最後結果出せばいいんじゃないの?っていう自分がいたんですけど。まぁ練習に行っても、練習時間45分くらいで、あと2時間飲んでるみたいな感じで。

藤代:あははは

大野:行ってる意味あるのかなと最初は思ってた。だけど結局そこで異世代交流しあうとか。

藤代:ああ。なるほど。

大野:練習しながら「ここってどういう風に歌うんですかね?」って言って、知らない人と会っても「僕、最近引っ越してきた大野っていうんですけど」みたいな感じで繋がれるとか。酒を週3回も飲み交わすとか、そこですったもんだでケンカが起こるとかも含めてそれがもう全部その目的なんだよね。

藤代:確かにな~

大野:自分は、プロセスが目的になったことって今まで一回もなくて、結構それは衝撃的だったんですよね。

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藤代:そうですよね、だって週3回3時間ほど集まる機会があって、練習時間は1時間以下。なんかこう仕事みたいな感覚で行くと何のためにこれやってんの?って感じになりますよね。

大野:そうそう。

藤代:でもそうじゃない。

大野:それが価値だった。

藤代:へぇー。そう考えてみると僕がここに居を構えるようになって半年弱くらいなんですけど、ちょうど新型コロナウィルスの期間と重なっているんですよね。だからそういうの、みんなで集まる機会って体験してなくて、そうすると知り合う機会は確かに少ないですね。限られちゃいますよね。

大野:そう。だから、逆に言うと防犯的な意識みたいなのもあって。近所に知らないやつがいると怖いじゃないですか?

藤代:うんうん。

大野:だから早めに祭りとかやってみんな知り合っとこうぜみたいな。多分、島流しの島だからこそあったんじゃないかなぁ?っていうのを思います。

藤代:確かに。

大野:仲良くなって一緒に酒酌み交わした人んちの金とらないだろ?みたいな。

藤代:そうですね、たしかに。

大野:あったんじゃないかなー?昔ながらの知恵だったんじゃないかって思えますね。

藤代:そうですね。そう考えてみると、学校でいう運動会とか文化祭とかっていうのもそういう位置づけなんですか?もともと。

大野:あれは元々、なんか軍国主義の名残りじゃないですか?(笑)

藤代:あぁ、そっち!?関係なかった。。(笑)

大野:詳しくルーツはわからないけど。なんですかね?目的がしっかりしてればいいなとは思いますよね。高校で学園祭なんか見てると、割と作っていくプロセスは生徒たちが自動的に探究してるし、ある意味で競争してるし、隣よりもいいもの作りたいとか。去年自分がやっちゃった失敗を今年何とかリベンジしたい、とか。

藤代:あぁ~

大野:学年を超えて異年齢でやってるのを見ると、あれはあれで、ほっといても探究するんだ!みたいな感じるところはありますよね。

藤代:なるほどなー。ずーっと僕たちの話を聞いているとつまらなくなっちゃうと思うので、ぜひここまでの時間で感じたこととか気づいたこととか、発見があったらぜひコメント欄で教えていただければとおもいます。

『現在の文化祭などは学習指導要領で特別活動の一環として児童生徒の自治的活動として実施されている』

なるほど。

大野:学習指導要領に入るまでのプロセスはどうだったんですかね~

藤代:確かに。確かに。

『祭りの価値にびっくりです』

そうですよね。最後で上手くたたければいいんでしょ?と最初は思いますよね。

大野:そう。「笠揃え」って言って、お祭りの前日の夕方に地区の人全員集めて、今年の祭りはこいつらが楽士と先払いていうお面被った人をやるんですよっていう、お披露目の場があるんですよ。

藤代:へぇー

大野:そこへ来ていた腰の曲がったおばあちゃんから、おじいちゃんから、若者までみんなで集まってこの「笠揃え」をやるんだけど、なんかちょっと感動してしまって。今までこういうことなかったな~みたいな。で、それが仮に下手でもいいんですよね。

藤代:えー!下手でもいいんですね。

大野:下手だったら下手で話が盛り上がるわけですよ。「わーこいつら下手くそやなー」っていうのは酒の種になるから。むしろ下手な方が実は価値があるかもしれない。

藤代:へー。おもしろい。いいですねそれ。

大野:それはなんか日本古来というかね。あまりそういう価値観って西洋の方にはないんじゃないかなぁ?ってちょっと思った。

藤代:なるほどなぁ。おもしろいな。

『プロセスが目的って感じたことなかった』
『コミュニティスクールをやっている地域ですが、地域の声を拾ってつなげていくことが大事だと思う。色んな知恵から生きる力が育つと思う』
『プロセスが目的、プロセスに価値があるという話が新鮮だった』
『博多には山笠があります。地域全体で子どもを育てている感じがあります。挨拶ができる。挨拶ができる地域は貴重ですね』

藤代:確かに。この地域でも挨拶はみんなしますね。

大野:そうそうそうそう。

『教育関係者ではないですが、とてもワクワクする素敵なトークです』
『ヨーロッパ在住ですが、日本の祭り文化のすばらしさを再確認』

藤代:おーすばらしい。ヨーロッパからご覧いただいて。

『プロセスの大切さを感じていたけど、改めて言葉にしてもらえてよかった』
『若い時代に多様性に触れるっていいなと思いました』

藤代:ありがとうございます。そうですね。確かに色んな人がいて自分を知るという側面はありまよね?全然異質な関係に触れていくというところもありますもんね?

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