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マヌルネコと僕

窓辺から差す暖かい光にうとうとと微睡みかけた時だった。
近所を散歩していたマヌルネコが深刻そうに話しかけてきた。
「シマエナガはどこだろうか?」
なんで?と僕は聞き返した。
「ああなりたいのだ」マヌルネコはつぶやくともふりと毛並みを揺らした。
「学ぶとは吸収するということだときいたのだ」
もしやと思い目をこらすと、彼の背中にはザテレビジョンが乗っかっている。
どうやら青春学園ドラマ特集をどこかのチャンネルが組んでいるらしい。
マヌルネコは言い募った。
「シマエナガを一家族も吸収すればきっとシマエナガになれるはずなのだ」と。
しかし僕はシマエナガもシマエナガ家族も吸収されたくはない。
マヌルネコと比べられないくらい、彼らも大切なのだ。
しかたないと僕は茶箪笥の扉を開けた。
「それは?」マヌルネコが訝しげに僕の手元を覗き込む。
僕が手にしていたのは銘菓ひよ子。
「シマエナガではなくふたりでこれを吸収しようよ」
秋の午後、マヌルネコとふたりで茶を啜る。
「すこしはちかずいたようだ」
満足げな彼のしっぽをそうっと撫でた。

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