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帰ってきた

母の出棺が終わり
車が火葬場へ向かう途中
母の通ったグループホームの前に続く
坂道の角に差しかかると
グループホームの職員の方の姿が見えた

出棺から火葬場へ向かう途中に
故人縁の地に立ち寄る
葬儀会社のサービスで
10年近くお世話になった
グループホームに立ち寄る時刻を
職員の方に知らせておいたので
母を乗せた車の到着を待っていてくれたのだ

そして車がグループホームの前に停車すると
グループホームの門扉の前には
総勢20名くらいの職員の方達や
通所されている方達の中には
車椅子の方もいたが
横にずらっと並んで
母を乗せた車が到着するのを待っていてくれた

泣きそうな表情や
涙をため車に向かって
手を振ってくれている方々の顔が

棺に入った母を乗せた
車の中からも確認できて
その姿に胸が熱くなった私も
思わず涙をこぼしながら
白木の母の位牌を胸に抱いたまま
車の中から何度も何度も頭を下げながら応えた

母の葬儀は高齢者の多い近しい親族だけの
通夜を行わずに
告別式だけの1日葬にして
少人数で見送ったもので

父の葬儀の時と比べると
大分こじんまりとしていて
母に寂しい思いをさせてしまったかもしれないと
何となく気になっていたので
グループホームの沢山の方達に見送ってもらえて
母も喜んでくれていたらいいなと思った

そして依然
グループホームの方達は
車の中の母に向かって
手を振り続けてくれていて
そこから離れるのが
とても名残惜しくて

車を出してくださいと
運転手さんに伝えるのには
かなりの時間がかかってしまった

母が亡くなってから
グループホームの職員の方が届けてくれた
入院中の母のために書いてくれていた
未完成の色紙の寄せ書きには
母の帰りを待つ
たくさんのメッセージをいただいていたのに
その願いは届かず
思いもよらず母は早く亡くなってしまったが

こんな形でも
グループホームに帰ってきて
皆さんと会うことが出来て
母もきっと喜んでくれている
と思いたかった




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