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習作小説

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ライター・編集者が書いてみる小説なんて、こんな程度のものです。
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記事一覧

【即興習作】 遅刻

 新入社員の松原がオフィスに姿を現わしたのは、午前十一時十一分だった。エントランスのセキ…

読む人
2年前
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【即興習作】 外れる

 南風に鼻をくすぐられて辛抱堪らず盛大にくしゃみをしたら、バチィン! という鋭い音がして…

読む人
3年前
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【即興小説】 第一声

 奇遇のひと言では、いよいよ片づけられなくなってきた。  そう思い始めて、もう半年が経つ…

読む人
3年前
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【読者への挑戦】 サンタクロースの不在証明 2020

出題編  迷路のように枝分かれした坂を登っていくと、山の中腹あたりにおじいちゃんの別荘は…

読む人
3年前
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【即興小説】 喪服姿の女性の

 葬儀を終えた帰りだろうか、隣に座った喪服姿の若い女性の手の甲に、黒いマジックペンで、 …

読む人
3年前
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【掌編習作】 マスクの下

 あなた。  そう、そこのあなた。  これを読んでいるあなたですよ。  マスクしてますよね…

読む人
3年前
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8月31日の読書感想文

※本作はフィクションです。 はじめに 8月31日になった。  まさか、まだ宿題の読書感想文を書き終えていない――なんてことはないよな?  この記事は、8月31日になってもまだ読書感想文が書けていないという迷える君に向けて書いている。  いまからでも遅くない。読書感想文を書いてみないか。  あらかじめ断わっておくと、俺はここで「学校で満点をもらうための作文のノウハウ」を書くつもりは毛頭ない。本論は決して「まともな」執筆法ではありえない。  たとえ短時間の付け焼き刃でも、それ

【読者への挑戦 解決編】 次の一球は?

出題編はこちら  このnoteは、読者への挑戦型ミステリー『次の一球は?』の解決編です。  …

読む人
3年前
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【読者への挑戦 出題編】 次の一球は?

出題編  江熊虹郎のヘッドセットに、一番バッター鈴木の焦りと苛立ちを隠そうともしない囁き…

読む人
3年前
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【掌編習作】 イージーリーディング

 私はイージーリスニングの作曲者である。  イージーリスニングとは、なにか。  かんたんに…

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3年前
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【掌編習作】 見えないはずの数

「なあ喜多さんよう」 「なんでえ弥次さん」 「目に見えねえが、この世のどっかに絶対に存在し…

読む人
4年前
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【掌編習作】 曜日、売ります

 これは不要不急ではない、と自分に言い聞かせ、彼はスーパーのレジ袋を片手に提げたまま、そ…

読む人
4年前
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【掌編習作】 自粛の路地裏

「やい弥次さん、景気はどうさね」 「おうおう喜多さん、いいわけあるめえ」  深夜の路地裏で…

読む人
4年前
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【掌編習作】 ユニコーンに乾杯

 バー〈カンパイ〉のテレビには珍しく、いつもの競馬中継ではなく、ある記者会見の様子が映し出されていた。 「話半分の都市伝説だと思っていましたが、まさか本当に、ねえ」  カウンターのスツールに腰かけた田所が、嘆くように呟く。 「ネット投票で持ち直したとはいえ、最近はどこも経営が厳しいんでしょうな」  カウンターの内側で、マスターの白西がグラスを拭きながら応じた。現役時代、背中に一本スッと針金が通ったような、低くてきれいな騎乗フォームで年間一五〇勝以上したこともある往年の輝きはい