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千舟おばさま大好きクラブ/東野圭吾「クスノキの番人」感想

8月のテーマ「オトナの読書感想文」。
第三弾はこちら。
(ほぼ)初めての東野圭吾。普段読まない作家の作品は新鮮ですね。

あらすじ
不当解雇と反故にされた退職金の報復に、元いた職場へ盗みに入り逮捕された主人公・玲斗。彼を救ったのは今まで会ったこともなかった母の異母姉=伯母の柳澤千舟であった。自分と違い、裕福な大手ホテル経営一族である彼女から、不思議な依頼を受けることになる。
「あなたにしてもらいたいこと、それはクスノキの番人です」
不思議な言い伝えの残るクスノキ、それに関わる人々、そして千舟と柳澤家。
満月の夜と新月の夜。御神木のクスノキは懐に絆の火を灯す。
玲斗は番人として、御神木に何を見るのか。


という訳で、初(に等しい)東野圭吾先生の感想。
超有名作家ですが、自分浅学にしてほとんど読んだことがない。
おそらく一冊かくらいは随分前に読んだはず……記憶にないけど、レベル。
実業之日本文庫社帯によれば「(著者累計)一億部突破」との事。まあ納得。
じゃあ何か読んどくか、と古本市で見つけたので手に取った一冊でした。

初手でいきなり犯罪……(引)と思いながら、番人就任後は特に難なく読み進めました。
東野先生の文章、テキストと地の文のバランスがいいのか読み進めるのがかなり楽だなと。昭和の作家だと赤川次郎的な、文章の読み良いパターンとバランスが既に確立されてる方なのかなと思う。文章にそこはかとなく個性はあるけど、一種現代文芸の教科書めいた読みやすさだなと感じた次第。下手に装飾的な言葉を使ってないからかな?。継続的に売れる作家先生には理由があるよなーと読者は思う。
(これを言語化できたらいいなとも思えど語彙が足りない)

お話も起承転結わかりやすく、確かにこれなら原作にしやすそう、といった印象。
映像化しやすく思える=脳内で映像が見えるって、既に面白さが担保されてるレベルだよなーと唸る。
詳細な内容は割愛。
読んであれこれ思ってもらう方が内容的にもベストな気がしますので。
まあ、その、タイトルでお察しください。ああいうイケてるマダムに弱い。
本編も細かな思いつき→結びつき→事件解決へ、の流れが自然でストレスフリー。対人関係のコミュレベルが自然と上がっていくのを感じさせます。
主人公も下手に聖人君子でない分、親から礼儀や人としての了見をよく躾けられて育ったのがすかして見える程度の庶民さが程よい感じ。頭も回る。

「あーなるほどこれこれこうなるのね」と筋が読める人は終始頷きながら読まれるでしょうし、特に先入観なく没入しきって読了されるのも良しな作品かなと、自分は思いました。

タイトルや帯の文章から日本の独特な民俗的信仰やオカルトが全面かと思いきや、実際の根底に流れるテーマは「家族」なんでしょうね。タイトルでお察しでしょうが、個人的に千舟おばさま関連の話が一番よかった。
自分はああいう話に弱いのです……。


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