『海の上のピアニスト』を観た

導入がとても好きだ。
疲れ果てたトランペット奏者が長い階段の下にがっくりと座っている。このおっさんはこれから、人生を共にしたトランペットを売りにいくのだ。
そこに、モノローグが重なる。
『何か良い物語があって、それを語る相手がいる限り、人生は捨てたものじゃない』

で、もちろんこのトランペット吹きが語り手になって、『海の上のピアニスト』の伝説じみた思い出話が始まるわけですが。

『何か良い物語があって〜』って、
映画史上、というか物語史上屈指の名台詞ではないですか?
物語史上っていつからだ。

こんなんもう、古今東西全物語の共通テーマじゃんね。
物語があって、それを語る人がいて、耳を傾ける人がいること自体に意味があって、力があるってこと。

地上の全ての物語が、このモノローグから始まってこのモノローグで終わってもおかしくない。
『いまは昔』とか『めでたしめでたし』とか、『遠い昔遥か彼方の……』と同じくらい汎用性がありそうだ。

汎用性の検証①
一人の小人が長い階段の下に座っており
『何か良い物語があって、それを語る相手がいる限り人生は捨てたものじゃない』
から始まる
白雪姫
重厚〜!


年老いたエンポリオが長い階段の下で座っており
『何か良い物語があって、それを語る相手がいる限り人生は捨てたもんじゃない』
から始まる
ジョジョの奇妙な冒険 第一部 ファントムブラッド
な、泣ける……。

検証しました。汎用性がある。

脱線しましたが。
『海の上のピアニスト』は、最初のこのシーンがあるから
その後の、大袈裟で輝かしくて美しい船の上の思い出話を、素直に「良い物語」として楽しんで聞いて、トランペット奏者と一緒に懐かしむことができるんだよなぁと思う。

『海の上のピアニスト伝説』単品だったら、大袈裟すぎて輝かしすぎて美しすぎて、たぶん斜に構えて観てしまう。
「嘘っぽ〜」って思っちゃう。
でも、「これはこのおっさんの語る大切な物語で、おっさんの人生」と前置きされたらもう、そんなのめちゃくちゃ面白い。泣ける。

語り手って大事だな〜っていうのと、
やっぱ「物語ること」そのものをテーマにしてる物語って良いな〜好きなテーマだなぁってことを感じました。

なんだろう。
瀬名秀明の『八月の博物館』とか。
うわ、あんま思い浮かばないや。
なんかありますか。

#海の上のピアニスト #映画  

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