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『極北』を読んだ

本の感想。
あらすじ程度のネタバレはある。

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面白かった。
特に、序盤のピングとの生活から湖までのエピソードがすごく良かった。初速がすごい。
書かれている部分はもちろん、省略された行間も、深く印象に残った。
「そこ、描かないんだ」っていうのがね〜私は大好き。
序盤のエピソードと動機の美しさが、その後のロードムービーの全ての場面•全ての行動を良くしていた。

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主人公が狙いすぎって思うほど好感度高い。
•意固地で孤独で疑り深くタフで冷静。そうでなければ生きていけない。
•終末の世界で一人きり、文化の痕跡(調律がされていないピアノや、自分では読めない本たち)を大切に守って暮らしている。
•名前は「メイクピース」
など、好きでしょ要素が盛り盛りである。好きだ……。
語り口は純文なんだけど、こういう、「かっこいいキャラクター像」とかはエンタメ感があって、バランスが面白かったなと思う。
物語の展開も、エンタメ冒険譚感があった。
ひとつの場面の終わりに引きの演出があって、次の場面につい手が伸びる感じ、連載漫画のようですらある。多分ジャンプではないけど……。

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人類の絶滅を描く上で、
「土地や星、目に映るいろいろなものにはかつて名前があったが、忘れられ、すでに失われてしまった」という描写が好きだった。
そうやって絶滅に向かい失われていく中で
何かを残そうとする人間の姿と、
次の場面、次の場面へと進んでいく主人公の姿が良かった。
『絶滅に対抗するささやかな祈りが、ここに書きつけてある』。
かっこいい一文だ。

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ジャケ買いしたのだけど、物語を知って改めて表紙を観ると、より良い絵だ。
映画を観ているようだったな。
物語の中に良い絵がたくさんあったと思う。
映画にしてくれぇ。
ルビーローズ出てくれぇ。

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映画『海の上のピアニスト』の感想で書いたことだが、「物語ること」がテーマの一つになっている物語が好きだな。
『海の上のピアニスト』で語られた、『何か良い物語があってそれを語る相手がいる限り、人生は捨てたものじゃない』ということ。
だから、『極北』のラストシーンとこの表紙が本当に好きだ。

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