見出し画像

国際高専の学生が考案。100度以下でカールができるヘアアイロン

イノベーションというのは異分野のものを結びつけることで可能になるとは、よく言われることだ。またユーザ視点での解決も欠かせない。

言うは易しだか、それが簡単にできるのなら、日本の産業も苦戦はしていないだろう。

勤め先の学校法人の高等教育機関のひとつ、国際高専ではエンジニアリングデザインという名前で、こうしたイノベーションを生み出すプロセスを繰り返し実践していく。
1年生からアイデアは試作モデルとして具体化しながらよりよい解決策を考えていくので、プログラミングの知識を使ってマイコンで制御したり、CADを使い設計したものを3Dプリンタを駆使して形にして、動かす、といったおもしろさも感じるをことができる。

5年生となると一年かけての卒業研究となる。
学生が取り組みたいテーマによって指導教員がつき、テーマによっては併設校の金沢工業大学の専門教員も協力する。

今年度は一期生が初めて5年生になり、新しいカリキュラムで学んだ集大成として卒業研究に取り組んだ。

先日その発表を聴いて、特に面白かったのが「髪の毛に優しいカールアイロン」の提案だった。

この場合のユーザは自分自身だ。毎日150度から200度くらいの熱いアイロンで髪をカールするとタンパク質が硬化して髪が傷むのが気になっていた。
ということで、100度以下でカールできる方法を指導教員と議論する中で、「ペルチェ素子」を利用する案が出てきたのだという。
ペルチェ素子とは熱を移動させる性質を持つ板状の素子で、電流を流すと表が冷たく裏が熱くなり、電流の向きを変えると今度は裏が冷たく、表が熱くなる。ただ弱点は熱くなった方の放熱をうまくさせないと反対面は冷たくならなくなっていくという性質がある点だった。

指導教員も、本当にこれで上手くいくのか、ドキドキにものだったという。ペルチェ素子は冷却に使われるケースは聴くが、アイロン等加熱用に使うケースは聞かないからだ。  

プロトタイプは6枚の長方形のペルチェ素子を六角形に貼り、放熱用の装置も作った。

そして100度以下で髪を巻き一分後に10度まで急速冷却する方法をマイコンで制御、人毛サンプルでカールができることを確認した上で自分でも巻いてみて確かめた。

人毛サンプルで実験
80度で巻いて10度まで急速冷却しカールができることを確認。プログラムも自分で組んだ

自らをユーザと見立て、課題を明確にし、ヘアアイロンで使われていない素子を使うことで、タンパク質変声が起きにくい100度以下で髪をカールできる試作物を作り、実際にやってみた。
まさにConceive→Design→Implement→Operateのプロセスで今まで存在しなかったカールアイロンを生み出せたのだ。

イノベーションは遠い世界の彼方で、知らない人が行うものでは決して無いということがよくわかる事例といえる。

https://www.ict-kanazawa.ac.jp/2023/02/06/21984/



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?