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アルティメットジャンケンの最終回が好きすぎる


2020年3月15日、アルティメットジャンケン・リメイク版完結。

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あの超面白かったweb版が書き込み量増加で凄まじい進化を遂げ、より熱く、より迫力の増した内容に。連載決定から今まで、毎月とても楽しかったです。この漫画は自分にとって特別な一品である事を実感しました。

いぬころすけ先生、9ヶ月間の連載、本当にお疲れ様でした。


自分は、アルティメットジャンケンの最終回がとても好きです。


心地良い余韻を抱いて終わる、大会参加者たちのほんわかとした後日談。全員が仲良く手を繋いでゴールしたわけじゃない。皆が夢を叶えられたわけじゃない。でも皆、大会を通して得た物がある。それをエネルギーに変えて未来へ向かっていける。参加者全員主人公と言えるこの漫画に相応しい、最高に爽やかな〆でした。

最終回の中でも印象に残った場面、台詞をピックアップし、アルティメットジャンケン自体をほんのりと総括しつつ、この漫画の何処が好きかを色々と刻んでいきたいと思っております。よければお付き合い下さい。


当然ネタバレしてますが……まだアルティメットジャンケン読んでない人おる?

読んでないなら読んでしまえばいい。

なんとですね。現在全20+1話、すべて無料で読めるんです(2020/4/20まで!)そしてその数日後にはアルティメットジャンケン"第2巻"も出る。第1巻はもうすでに発売済!


あ、以前に書いたレビュー記事もついでに置いておきます。




ジャンケン神、大会参加者に粗品を配りに行く。の巻

(ピックアップ台詞前にページ番号を載せております)


p1「さよならと、再会の約束をその手に込めて――」

決勝③から最終回までの扉絵が良かったです。一回戦敗退者4人、次は勝つぞ!の「グー」、ベスト4選手たち、勝利のV!の「チョキ」、そして最後は全員揃って"さよなら"の「パー」で〆。いつかまた、彼らと再会出来る日を夢見て――(「お遊び」商業化待ってます)。


p3「人の手の届かない宇宙に隠したでござる」

タコサン星人に利用されそう(小学生並みの伏線予想)
宇宙海賊に拾われそう(スペース恵方巻)

イナズマの仲間達も個性豊かすぎる者ばかり。彼らだけで一本漫画が描けそうなくらいです。豊満女子もいます。双子もいます。犬もいます。ロボもいます。そしてこの里に超強力予知能力を会得した戸津根さんまで加わりました。強すぎる。いぬころすけ先生の描く忍者のバリエーションは豊富すぎて好き。魔ニンジャマジックの登場人物はどれも大好きです。


p7「イナズマさん!宇宙人の襲来です!」

あのタコサン星人たちが今後「お遊び」においてどんな策略を仕掛けてくるのか……とりあえずカワイイ動物キャラをいっぱい漫画内に排出してくれる可能性が高い。良い事では?


p8「世界平和のため日々暗躍中」

人々の陰から世界の平和の為に戦う暗躍者が忍者の里の者たちで、戸津根さん。
人々の前に立って世界の平和の為に戦うヒーローが「お遊び」に登場するフラッシュスター。
平和の目指し方もまた人それぞれ。


p9「里中操。金を得て人生がさらに楽しくなる」

一回戦で負けたキャラとは思えないくらい、里中は他の選手、そして大会そのものに影響を及ぼしました。

戸津根さんとの直接対決で彼の覚悟を引き出し、負けはしたものの即アングドラに取り入る抜け目の無さ。準決勝での戸津根さんVS御手洗にて、戸津根さんが用いたカード戦術は里中のサポートあって成立した物です。戸津根さんはそこで敗れましたが、勝ち進んだ御手洗はこの戦術を自分なりに応用し、決勝に臨みます。

本来なら優勝者のみが叶えられるはずの願いは、里中の催眠術をきっかけにその意味合いを大きく変えました。決勝直前。御手洗を決勝から棄権させる為に里中たちが仕掛けた交渉策は、結果として御手洗にイナズマの金縛りの術対策を伝えてしまう失敗を犯します。

ですがこの交渉によって、御手洗は自身の願いを優勝賞品に委ねる必要がないことを知ります。彼の優勝への意欲は「願いを叶える」事から「イナズマに勝つこと」そのものへと変わり、決勝戦を「純粋なただの勝負」として楽しむ余裕が出来たのです。そのシンプルな勝利への意思が最後の武器となって、御手洗は優勝を手にします。

御手洗は戸津根さんの願いを叶え、戸津根さんはイナズマの願いを手伝い、御手洗の願いは里中の催眠術によって満たされました。彼ら3人の願いが同時に満たされるには里中の存在が欠かせません(アングドラは泣いていい)。

こうして振り返ると、里中なしではこの最終回は成立しないレベルですね。「お金持ちになりたい」という彼女自身の願いも満たされ、もう言う事無し。思う存分、楽しい人生を送っていってほしいです。


p11「ワシの夢はワシが叶える。金の力でな」

大会参加者で唯一願いを叶えられなかったアングドラ、強運のタダシくんを味方につける事に成功。不死の夢を叶えるまでの過程で、タダシくんの強運の恩恵をこれでもかと受ける事でしょう。そういえば兵隊にちゃんと報酬を払ったのだろうか。


p11「がんばれおじさん!」

タダシくん本当に良い子。筋肉神参戦Ifストーリーでは彼に完敗を喫し「悔しさ」を学んだタダシくんですが、本来の世界線ではそういうストレスを負う事もなく幸福そのもの。でもいつかタダシくんも、何らかの形で困難や苦労を味わうかもしれません。その時タダシくんはどうなってしまうのか?自分は何の心配もないと思っています。だって「神は乗り越えられる試練しか与えない」


p13「私はいずれ、真にあなたを超えてみせる!!」

この台詞、考えれば考えるほど意味深いものだと思っています。

今まで大宮さんが筋肉神を見失っていた理由は"驕り"であり”筋肉神を必要としなくなったから"です。自身の筋肉を過信していた大宮さんは、筋肉神が見えない現実に気づかぬフリをしてきました。愚かな振る舞いと言うのは容易いですが、でももし本気で己の筋肉に溺れていたなら、そうやって自分に嘘を付く必要すら無いんです。延々と「私の筋肉は人の領域を超えた」と信じて疑わず、釈迦の掌の上の孫悟空が如く、筋肉神の上腕二等筋の上で踊り続けるだけだったでしょう。「自分は未だ筋肉神を超えられていない」「自分にはまだ筋肉神が必要」という意識があったからこその自作自演。

『もしこのまま私が負けてしまったのなら、私に筋肉神様はついていないのだろう』
現実と向き合う覚悟を決めた大宮さんの表情が印象深かったシーンです。鍛えている者の味方である筋肉神が、己の敗北を前にしても姿を現さないなら、自分は本当に筋肉神に見放されたのだ。そう自覚せざるを得ない。この時、大宮さんの中から"驕り"は消え、心の底から筋肉神へと祈ったのでしょう。その祈りに、筋肉神は応えました。

では、もしもの話。いつか、驕りでなく、過信でなく、本当の意味で筋肉神を超えた時が来たなら。その時、本当に筋肉神は見えなくなる。大宮さんの目指す先とは、つまりそういう未来かもしれません。「神超え」の時はいつか来るのでしょうか。


p15「夜桜四葉とその姉妹。次はアルティメットすごろく大会出場を狙う」

狙えなかったんだよなあ……。でも四葉を加えた4人でのすごろく大会IFはちょっと見てみたい。

この辺のシーン、初読時は「芸能界デビューの為だけに幼い四女の人生縮めるとかこの姉たち鬼畜か?」とか思いました。ですが彼女らの価値観は一般的な括りでは図りづらいものです。作中随一のスーパーエゴイスト一家、他人と全く協調しない事に定評のある夜桜さん家の4姉妹は、身内に対してとことん甘く、優しく、互いに暖かく支え合う事に特化しています。4人が納得づくの上で決めた「私達の願い」に対し、他人がそこにツッコむのも野暮でしょう。

続編である「アルティメットお遊び」の時系列になると、この芸能界デビューの夢はあっさりと放棄されました。「全知全能になる」事が姉妹達の目標となったからと、もう一つ。四葉自身に願いが生まれたからです。

「ジャンケン」において、四葉の台詞は一葉姉さんと半々ぐらいでした。それはこの時点での彼女らが「夜桜さんちの霊能姉妹」で一括りであったからでしょう。一人称もほぼ「私たち」です。

ですが「お遊び」にて四葉個人が感情を表す場面が激増するんです。クソ忍者への恨み、姉に勝利を与えられなかった悔しさ、家族に対する純粋な思いと、強い絆で結ばれた姉妹への誇り。全てを剥き出しにします。"負け"が四葉を大きく変えました。もはや霊能姉妹で一括りは出来ません。四葉は姉たちの為に。その姉は四葉の為に持てる力を尽くしました。信頼関係はそのままに、四葉が個として立つ事によって「お遊び」の四葉は更に強いのです。もしまだ「ジャンケン」までしか読んでいなくて、四葉に対してあまり好印象を抱かなかった方がいれば是非「お遊び」を読んでみてください。



p18「…あんた明日また来てくれよ。それまでに対策を考えてやる」

このラスト1ページが素晴らしい。
どの選手よりも強くてヤバくてチートな能力を持つジャンケン神に対し、どうやったら勝てるか?と御手洗が考えながら、光の向こう側へと歩いていく姿を背に物語は幕を閉じる。
ベスト8に残った彼ら全員に勝つチャンスがあると踏んでいる御手洗が好きです。「心が読めるのだから負けるわけがない」と楽に優勝出来ると考えていた御手洗が、自分を含め本選で出会った7人の猛者たちをどれだけ高く評価しているかが伝わります。


p19「能力のない今のオレは…どうするかなあ」

御手洗が仮にテレパシーしか能の無いボンクラであったなら、まず優勝は出来なかったでしょう。御手洗が戸津根さん、四葉、イナズマに勝てたのは、例えテレパシーが通じずとも的確に状況判断し、策を講じて対処したからです(VS大宮さんは実質御手洗の負け…)。能力の有無で、その実力が極端に変わるキャラだとは思えない。


この作品にはいわゆる「神」が登場します。神だから、ただの人間よりなんか凄い存在です。人と神の関わりも、作中では様々な形で描かれました。

タダシくんはそんな神の子として生まれ、神に愛された強運の申し子です。
アングドラはタダシくんを味方につける事で大きな利益を得ました。
イナズマは一般人の意思、能力者、筋肉神のサポートを得て、鍛え上げた己の技を駆使しタダシくんに勝ちました。

筋肉神。己の鍛え上げた筋肉で運命をも捻じ曲げられる超越存在です。
その筋肉神を超えようと、大宮さんは今日も筋トレに励みます。

この世には色んな神がいます。すごろくの神、鬼ごっこの神、ポーカーの神etc……
戸津根さんは予言の神の加護を受けて能力を強化されました。
四葉は相手が人でも神でも関係ありません。誰に対しても己のエゴを通すだけです。
里中は相手が人でも神でも関係ありません。誰に対しても気軽に接するだけです。


ジャンケン神VS『無能力』御手洗心造


御手洗は神に挑みます。アルティメットジャンケントーナメント優勝者「ジャンケンの王」として、ジャンケンの神に勝負を挑みます。ただの人は、神を超えられたのだろうか?





「お遊び」はまだ終わらない

アルティメットジャンケンは完結ですが、物語は新たな未来へと進んでいきます。
そう、アルティメットお遊び。

「ジャンケン」「お遊び」を通して、このシリーズは一体何が凄いか。何がそんなに読者の心を引き付けるのか。

知略戦、最高。能力バトル、超凄い。キャラクター、みんな濃い。その辺は以前のレビューとかでも色々と書きましたが、もう一つ。
いぬころすけ先生のキャラデザ、やばいです。

「ジャンケン」や「お遊び」の登場人物たち。みんなその立ち姿、服装、ポージングなどからキャラのイメージを捉えられる、いわゆる「シルエットでも誰か判別出来るデザイン」です。「こういうキャラだな」と思ったら大体そういうキャラで、その時点で強い。そしてそこに一味、見た目にわからぬ特徴が加えられているんです。

「お遊び」に不破ふわりという人物が登場します。その見た目だけ見れば「真面目そうな女上司」という印象です。そこに間違いはありません。
でも蓋を開けてみれば彼女は「少年漫画が好きすぎて超能力を会得した」というとんでもない個性の持ち主である事が明かされ、読者に強烈なインパクトを残しました。でも本編中では少年漫画好き要素だけでキャラを括らずに、その真面目さと優しさが光る好人物である事が注目されていきます。見た目にわからぬ特徴が、見た目で伝わる特徴を引き立てているんです。

大宮さんの第一印象はどう見ても「筋肉の人」。大 正 解 。
登場シーンからして筋トレに励んでおります。その上第一声が「はぁ…はぁ…筋肉神様……今日の私の筋肉具合は……」です。ちょっとやばい人かな?と思われかねないくらい、彼は筋肉が好きなのだな、と一発でわかります。
これは見た目で伝わる特徴と見た目にわからぬ特徴がほぼ同一で、掛け算的な効果を発揮していますね。
本編中では彼の筋肉に関わる哀愁溢れる過去までも描かれ、より彼の筋肉に対するシリアスさが強調されていき、大宮さん=筋肉。この図式が読者に完璧に刻まれるわけです。強すぎる。

「あ、こいつは捨てキャラだな」「あ、こいつは噛ませ犬だな」と認識させないキャラデザの豊富さが、誰が優勝するか読めない緊張感にも繫がっている。そう考えています。
そして同時に、どんな世界観のキャラも同一の空間に入れられる自由度の高さも驚愕です。どんなキャラが登場しても浮かないんです。

「超能力者も神もいたんだ。今さら宇宙人に驚く事もないだろう」

忍者も出ます。霊能力者も出ます。石油王も出ます。ヒーローも出ます。動物も出ます。更に言えば神様も出ます。地底人やドラゴンだって出ました。
何が出ても、誰が参加しても画面がごちゃごちゃしない。
どんな世界観を持ったキャラクターでも表現し切れるのは、一重のそのデザイン力の高さです。みんな一律に「ジャンケン」「お遊び」の世界に溶け込んでくれます。


この先どんなゲーム、どんなキャラクター、どんな世界観が待っているのか。一つの漫画に、多種多様な味が篭る。こんな贅沢な作品そうそう出会えるものではありません。一ファンとして応援していきたい。

「お遊び」はまだまだ続きます。

自分は、アルティメットシリーズがとても好きです。

以上!









ここからバックステージコメント

ジャンプルーキー!に掲載されている、いぬころすけ先生の作品で特に好きな作品を5つ選びました。
この5つは特に読んで欲しい!ので一言添えて紹介します。下のリンクから読みに行こう。ここに挙げてない漫画ももちろんオススメです。


魔ニンジャマジック

魔法使いの……忍者!戦闘力の無い、隠密に特化した魔法忍者が潜入任務に挑む。主に潜入劇と逃走劇が見所の漫画。潜入先の忍者たちも皆キャラが建っています。
姿を見せない忍者の、殴り合いでないバトルシーンは必見です。

ぶち切れアニマル

大暴れする動物をひたすら宥めるギャグ漫画です。
ゲーム脳を刺激される絵面と設定が癖になります。
こんなアプリゲーあったらいいよね。

スペース恵方巻

なんやかんやあって宇宙海賊の船長が恵方巻を食べる漫画です。
知らない世界の文化はどうしても珍妙に見えるもんだよね。
絵柄もカワイイ、絵面もカワイイ、船長もカワイイ、宇宙イルカもカワイイ

でかポメラニアン

1ページ目から既にトップスピード。漫画全体がポメラニアンで埋め尽くされています。最初から最後までみっちりポメラニアンです。
可愛く、読みやすく、オチも強い。☆5

死神とサイボーグ

私はバスター!サイボーグ戦士だ!すぐ死ぬがすぐ生き返る!
勢いやテンポが素晴らしく、ゲラゲラ笑ってちょっと泣ける!
何度やられても私は立ち上がり復活のバスター!


ジャンプルーキー!にはありませんが「叫べ!マンドラゴラシャウト」も最高に面白いです。
全部検索すれば読めてしまう……なんて良い時代……。


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