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懐かしいにおい

 その日、私はK県にある労働者の寮へと車を走らせていた。そこは同年代の男性(20代前半)七人が仲良く暮らしている寮だった。

 到着し、寮の前にある駐車場に車を停めドアを開ける。

 ……臭い。

 ドアを開けた瞬間に何とも言えない臭気が全身に纏わりついてきた。慌ててドアを閉め、寮に駆け込む。


「紫蘇さん、お久しぶりです」


 にこやかに迎えてくれたのは、彼らの中での最年長Cさんだった。
 Cさんに外の臭いについて尋ねてみると、彼は何故か故郷の話を始めた。

 話によると、彼の故郷はいまだ近代化が進んでいない田舎なのだそうだ。
 都心部では火葬が一般的であるが、そこでは昔ながらの土葬が行われている。土葬とは言っても、埋めて終わりではなく埋葬から数年経つと掘り返して骨を別の場所へと移すのだという。
 当然ながら、死者を埋めている一帯は酷い臭いがするそうだ。


「それと同じ臭いです。懐かしいですね」


 寮の裏には雑木林がある。
 臭いの元は、そこにいたのだろうか。

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