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空蝉#6

日向御継。東京都の国会議員の中でも古株であり絶対的権力を持つ男。その日向の部下からネタの受け取り承諾の電話が来たのが午後四時であった。
山田太陽は思ってたよりも日向家に向かうのに時間がかかったらしいが無事届いたのでとりあえずは安心した。山田は育て方次第では使える男になる見込みはある。確かに特別なスキルは無いが腐っていた時間がそこそこ長い分、そこそこの生活さえ約束すれば飼い犬のように首輪をかけていられる。
なので山田にとりあえず成功報酬であり、月給の20万円を手渡してあげようではないか。
18時過ぎに山田は俺の元へ顔を出してきた。
「田嶋さん無事届終わりました」
「とりあえずお疲れさん。これが報酬だ。とりあえず今日と明日はゆっくり休め。明後日から本格的にここのやり方を教える」
山田は金を受け取り、部屋を出て行った。
その後一本の電話がかかってきた。
「あなたから直々に電話がかかってくるなんて久しぶりですね。マスター」
「田嶋さんのご活躍は色々と噂では聞いておりますよ。日向家とも縁ができたとかなんとか。」
「これもあなたのおかげですよ感謝してます。」
「感謝しているのなら私たちに言うべきことはないのですか」
「言うべきことは感謝の気持ちだけです」
「こっちは身を削ってる割に配当が少ないのでね。田嶋さんみたいに部下を使い捨てしてないんでね」
「なにをおっしゃいます」
「テンポラリーハウスだって言いつつ、顧客を骨の髄まで使い、使い物にならなくなったら臓器売買に出す。あなたは裏社会では有名ですよ。鮟鱇みたいに人間の体を余すことなく使い切る。鮟鱇の田嶋って言われてますよ。裏社会に出たばかりのルーキーさん」
鮟鱇とは食べられないところがないと言われる高級深海魚の一種であり、一般的に骨以外は余すことなく食べられるそうだ。余すことなく人を無差別にこき使う。使い終わりには臓器を売り金に替える。そんな残虐なやり方が鮟鱇なる名前のついた所以だ。
「蜂鳥の坂東さんがよく言いますね」
坂東修二これが、マスターと言われているコイツの本名だ。
「その名前を知ってるのは裏社会でも、数少ないのによくぞお知りで」
「俺だって勝ち残るのに必死なのさ。わかったよ坂東さん。あなたを敵には回したくない。」
「では、リターンは今の50%アップで回してください。こちらからは以上です」
そう言い坂東は電話を切った。
「蜂鳥のくせに」
携帯電話を壁に投げつけていたのは怒りのせいだろう。
マスターと言われているアイツだけは絶対に骨の髄まで搾り取ってやる。

坂東修二。裏社会ではマスターと呼ばれることが多いが知ってる人は蜂鳥とも言っている。元内閣府官僚として勤務していた過去もあるらしい。その職権を悪用し海上保安庁、財務省そして通関業者とパイプが生まれ違法な社会悪物品をコンテナ船から本国に流通させているらしい。他人を利用して自分だけ甘い蜜を吸おうとしているから蜂鳥と名が付けられたが実際に会ってみると格式高そうな佇まいや実際にバーの店長を始めた事からマスターという名の方が広く広まった。
マスターには法螺と蟷螂と呼ばれている仲間がいるらしい。最近泡姫なる女も増えたという噂も聞く。
最近まで世間を悩ませていて途端に消えていった切り裂きジャックと言われていた男が蟷螂だろう。それで泡姫を怯えさせて自分たちに安心感を得させて仲間に無理やり入れたんだろう。法螺は数年前からどことなく裏社会で耳にしていたが所属する組織に使い捨ての目に遭っていたところをマスターに拾われて恩を感じているらしい。泡姫の情報はまだ得ていないがそのうちテンポラリーハウスの奴らに情報を集めさせれば良い。
「蜂鳥お前を落とす準備は着々と進めているぜ」


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