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無名のボカロPがアルバムをリリースしてみた
ギタリスト名乗ってるのにチョーキングが出来なくなった志村です。
ギターの腕前がメキメキ下落していることに恐怖心すら覚える昨今、オリジナル曲のアルバムを作り、サブスク配信を始めました。
Li-ionPという名前でボカロPをやっているのですが、この名前で活動を始めてそろそろ1年、一つの作品を作ろうという思いでリリースしました。
そこで、今回はアルバムの制作秘話や収録曲の解説なんかを書いていきたいと思います。
↓のリンクから各サブスクリプションサービスで聞けるので是非。
アルバムを聴きながら、僕がどんな思いで作り上げたか想像していただけると幸いです。
アルバム「一価の陽イオン」について
どんなアルバム?
Li-ionP初の自主制作盤。
テーマは「化学反応」
ボカロ文化に触れてこなかったロキノン厨が重音テト、初音ミク、可不と出会ったことで起きた「化学反応」を詰め込んだ作品です。
ニコニコに投稿した26曲から12曲を厳選し、全曲リマスター。
一部楽曲はアナザーボーカルにて新規収録。
リマスターも調声もアホほど大変だった…
何で作った?
作りたかったから。以上。
別に音楽で食っていけるとも思っていないし、僕の持っている数字ではどうあがいても赤字確定。
実際僕のTwitterフォロワーは100人いないし、ニコニコ・YouTubeの再生数も大したことないんですよ。
それでも作ったのは、マジで作りたかったという思いだけ。
やっぱりクリエイターの端くれとして、利益云々より自分の作品をまとめて形に残したかったんですよね。
本当はもっと早い段階で作ろうと思っていたんですけど、歌ってもらってるミク・テト・可不を同時に配信できるアグリゲーター(配信斡旋サイト的なやつ)がなかったんですよね。
これまでは
・ミクテト→ROUTER.FMは登録可、Tunecoreは不可
・可不→ROUTER.FMは登録不可、Tunecoreは可
みたいなミスマッチのせいで一つのアルバムとして配信できそうになかった
一応個別に商用利用の許諾を取れば配信できるみたいだったんですけど、合成音声界隈って権利関係が結構厄介なのもあって、変なトラブルになるのが嫌で諦めていたんですよ。
諦めかけたその時、まさかのTuneCoreでミクテトさんの登録が可能になったという報を聞き、アルバム制作を本格的に着手することに。
タイトルとジャケットの意味は?
タイトルの意味:リチウムは一価の陽イオンだから
ジャケットの意味:リチウムの原子構造を模したレコードとプレイヤー
まずタイトルについて。
ファーストアルバムなので、「1」という要素を入れたかったんですよね。
で、リチウムイオンを名乗っているのもあって化学要素も入れたかった。
学生時代赤点ギリギリだった化学の知識をフル動員して思いついたのが、「一価の陽イオン」という単語。
「1」要素もあるし化学要素もあるしええやん!という思いで即決。
こういうのは勢いが大事。
そうなると次はジャケット。
ぶっちゃけると、イラレを駆使して自力で仕上げました。
ジャケットってビジュアルに訴えかける超大事な要素なので、ココナラとかでお金出して依頼しようと思ったんですよ。
でも、ふと「自主制作盤ってかっこよくね?」というリトル志村が耳元で騒ぎ、ロマンを求め自らイラレを操作することに。
やっててよかったイラストレーター。
僕は子供の絵と並べても見分けがつかないくらい絵心がないのですが、イラレの機能に助けられ、ほぼ図形だけで仕上げました。イラレすげえ。
リチウムの原子構造を模したレコードに、手書き風の色塗り。
全体的に白黒なのも味気なかったので、アクセントで黄色を追加。
これがちょっと星っぽくて好き。
そしてトレードマークのスリーアローマークとLi-ionPのロゴ。
全部イラレでできるのすごすぎる。
収録曲について
「曲の解釈は聞き手に委ねる」というのが僕のスタンスなので、曲について色々と語るつもりはありませんが、メインボーカルとテーマ、簡単な解説くらいは書いておこうと思います。
※TuneCoreの登録方法の関係上、可不曲はアーティスト名が「Li-ionP,可不」となり、ミクテト曲はタイトルに「feat.初音ミク」「feat.重音テト」がつきます。
1.POLESTAR
ボーカル:重音テト
テーマ:俊龍作曲の小倉唯が歌ってそうなアニソンロック
解説
Li-ionPとして初めて作った曲。
元々ボカロ系のサークルを組もうという話からテトさんをお迎えし、僕の推しである小倉唯が歌ってそうな曲を作ろう、というのが始まり。
アニソン作家の俊龍の曲を何曲か分析し作った、いわば「ジェネリック俊龍」
「POLESTAR」とは北極星のこと。心の中で変わらずに光っている大切なものをイメージした曲。
2.噓でもいいから愛してよ
ボーカル:重音テト
テーマ:嘘から始まる恋を描いた、酒とタバコ香る大人のジャズ
解説
重音テト誕生祭2022の時に投稿した曲。
かつて2ちゃんでエイプリルフールネタとして作られたテトさんがここまで人気になったことに感銘を受けて作った。
吉原ラメントの「偽りだらけの恋愛」という歌詞から「噓でもいいから愛してよ」というフレーズが思い浮かび、そこに酒とタバコ要素を追加し、シャッフルと椿屋四重奏っぽいコード進行でジャズ感を演出。
「君は実に馬鹿だな」「どんなマイクも握ります」などテトさん要素をふんだんに取り入れた歌詞。
3.Lazy Rainy Day
ボーカル:可不
テーマ:気だるげな雨の東京を歌ったシャッフルのこじゃれた曲
解説
ボカロPとして活動する前に作った曲。
初めて作詞した曲だったり、ニコニコで「もっと評価されるべき」タグをつけていただいたりと、中々思い入れが深い。
蒸し暑さで目が覚めたワンルーム、窓を開けると雨が降っている。そんな情景を描いた歌。
個人的に「酸味の強いアイスコーヒー 酸いも甘いもマイストーリー」という歌詞がお気に入り。きれいに韻が踏めた。
雨の音を入れたり、ベースを主軸に作ったり、色々遊んでみた曲でもある。
4.カオス理論
ボーカル:初音ミク&重音テト
テーマ:3/4拍子でBPM146、A#mキーの「かっこいい」というテーマ
解説
ボカコレ2022春用に作った曲。
以前作った「ランダム曲調メーカー」に従って作った曲。
乱数で作られたという偶然と、バタフライエフェクトを掛け合わせた曲。
途中で曲調を変えることで、展開の読めないカオスな状況を表現。
曲調は変われど、上に書いたテーマには従っています。
クソほど大変だったのに思ったほど伸びなかったけれど、普通じゃない曲が作れたので僕は満足です。
ニコニコ代表栗田さんのコメント↓
ミクさんとテトさんのツインボーカルのハモリとポエトリーリーディング、そして展開の妙と三拍子が魅力。左テトさん、右ミクさんなのでヘッドホンで聞くとよき。
— 【MADフリー素材】くりたしげたか(Re)🌰ニコニコ代表の人 (@sigekun) June 2, 2022
【オリジナル】カオス理論 feat.初音ミク&重音テト https://t.co/TG8Ft3KMSQ #ニコニコ動画 #ボカコレ2022春ルーキー参加作品
5.メランコリー
ボーカル:可不
テーマ:無職時代の心の叫び
解説
無職時代、メンタルをぶっ壊した時に作った曲。
可不さんの儚げな声が妙にマッチして、今聞いても心にグッと来る…
激しいディストーションサウンドと、途中のテンポを落とした三拍子で、不安定なメンタルを表現。
「息苦しい」「生き苦しい」、「息続く」「生き続く」という歌詞の対比がお気に入り。
地味にギターの音がいい感じで好き。
6.Prayers in the Dystopia
ボーカル:可不
コーラス:重音テト
テーマ:V系っぽいメタル風の曲
解説
VersaillesやRaphaelに影響されて作ったメタル風の曲。
ドンシャリサウンドの暴力~ストリングスとパイプオルガンを添えて~な感じ。
イントロは1分あるし、サビよりギターソロの方が長いし、演奏部分の方が本編なまである。
たしか構想~リリースまで1ヶ月くらいかかったような…🧐
そもそもV系っぽい曲って何だろうから始まり、メタルのジャンルを調べ、ギターをいっぱい録音し…としていたら、何やら壮大な曲になった模様。
7.30294
ボーカル:初音ミク
テーマ:和歌を題材にした和ロック
解説
読みは「みおつくし」
百人一首に収録されている元良親王の有名な和歌を題材にした作品。
ヨナ抜き音階に琴のサウンド、さらに曲中で一句読み上げることで和の世界観を表現。
曲調自体は明るいが、出会えない苦しみを桜が散るのに準えた歌詞なので実は暗い。
本当は己龍のような毒々しい感じにしたかったはずが、気づいたらポップな感じに…(これはこれで好き)
8.メローイエロー
ボーカル:初音ミク&重音テト
テーマ:甘酸っぱい青春系バンドサウンド
※この曲は特に思い入れが深いので、妙に解像度の高い解説が入ります。
解説
僕が高校生の時に愛飲していたメローイエロー、大人になってふと思い出し自販機を探すも売っていない。
調べてみると販売終了していた。
あんなに好きだったのにその存在すら忘れていて、思い出した頃には味わえなくなっていた。
それって青春時代の恋みたいだなと思い、当時付き合っていた子とメローイエローを重ね合わせて曲にした。
(ちなみにその子は結婚したらしい。幸せになれよ!)
1番で彼女との思い出を色々と思い出し、2番で彼女がいなくなりあの日々は戻ってこないことを悟り、曲の終わりで偶然出会ったりしないかなーと密かに期待しているという情景。
「いつの間にか消えた香り それが君だよメローイエロー」という歌詞に全感情がこもっている。
リリースするタイミングを考えていたが、無色透名祭という匿名で作品を投稿するイベントにて発表。
「無色」を謳うイベントに、タイトルに色がある作品で参加したのがポイント。
9.天獄
ボーカル:初音ミク&可不
テーマ:負の感情だって大切な感情
解説
体調とメンタルをぶっ壊した時に作った8分の6拍子の曲。
高い生活水準で生きていけること自体は天国、しかしそれを維持するには地獄のような苦しみがあることを描いた。
負の感情というのは敬遠されがちだが、エネルギーを使って作り出している大切な感情であることは間違いない。
だったらこの感情も曲になるだろう、という思いで曲にした。
投稿時はミクテトボーカルだったが、アルバムのバランスを考えテトさんを可不さんに変更。
その結果、吐息多めの可不さんボイスが泣いてるように歌ってて雰囲気が倍増。
10.かざはな
ボーカル:重音テト
テーマ:冬の出会いと別れを描いたエモバラード
解説
初めてピアノメインで作ったバラード曲。
「かざはな(=風花)」とは、冬の晴れた日に風に乗って雪が舞う現象のこと。
1番で出会い、2番で離れ離れとなり、最後は別れてしまい、君のことは心にしまっておこうという情景を、風花という切ない気象現象に重ね合わせた曲。
BUMPのスノースマイルのような曲を作りたくてコーラスを厚くした。
2サビ後のバックコーラスは「テトテトテトテトテトテトあーあー」と歌っている。ちょっと遊んだ。
11.winter tale
ボーカル:初音ミク
テーマ:俊龍作曲の小倉唯が歌ってそうな冬のラブソング
解説
Li-ionP二作目にしてジェネリック俊龍第二弾。
POLESTARがA面ならこの曲はB面。
陰キャみたいな曲ばかり書いているが、当初は明るいJPOPも書きたいと思っていた。
甘々な歌詞を当時26歳男性が書いたと思うと中々事案だが、客観的に見るならアニソンJPOP感のある歌詞とメロディで良いと思う。
ちなみに作曲時の仮題は「suger」
その名残で「甘い甘い夢見させて 大さじ1じゃ足りないくらいの」という歌詞となっている。
投稿時はテトさんボーカルだったが、ミクさんボーカルにした結果、よりポップで明るい雰囲気となった。
12.夕立、遠雷、白昼夢
ボーカル:初音ミク&重音テト&可不
テーマ:ノスタルジーな夏のバラード
※この曲も特に思い入れが深いので、妙に解像度の高い解説が入ります。
解説
6分30秒の大長編にしてLi-ionP一番のヒット作。
夏の暑い日にうたた寝をしていたら、大切だった人の夢を見た。
ふと目を覚ますと雨の匂いがして、遠くでは雷が鳴っていて、もうすぐ夕立がやってきそうな空だった。
という実話をもとにしたバラード。
夏というと「夏だ!海だ!祭りだ!」みたいな陽キャのイメージが多いが、海なし県に住んでいて人混みが苦手な陰キャにそんな曲は書けない。
じゃあノスタルジーなバラードを書こうということにし、ある一夏の思い出を切り取った。
歌唱力に定評のある可不さんをメインボーカルにし、澄んだ歌声のミクさんを上ハモ、コーラスが綺麗なテトさんを下ハモにしたら、見事にマッチした。
三人にそれぞれ見せ場を作りつつ、ピアノ・オルガン・ミュージックボックスにも聞きどころをつくるという、音楽的にもかなり工夫した一曲。
おかげで体調を崩した。
「やりたいと思ったらやる」精神
てな感じで僕のファーストアルバムを紹介してきましたが、結局僕の原動力って「やりたいと思ったらやる」ってことなんですよね。
この前だって、前々からカメラやってみたいなーなんて思っていた矢先にカメラ好きの後輩と遊んで、その場で10万のカメラ買ってますからね。
やりたいと思っていてもできていないことなんて、独立と起業くらいです。
僕にとって利益とか将来性とかは二の次で、「面白そう、やってみたい」と思ったら実行するようにしています。
そこでうまくいけば続ければいいし、ダメだったらそこで考えればいい。
ボカロP始めた時だって割と軽いノリだったし、元を辿ればギターを始めた時もそう。
だからアルバム作りも、やりたいと思ったタイミングで作れる環境が整ったから作った。
本当にそれだけです。
(でも時間とお金をかけて丹精込めて作ったからいっぱい聞いてくれると嬉しい)
チョーキングができなくなったギタリストでもアルバムをリリースすることができる良い世の中になったので、音楽活動されている方は検討してみても良いかもしれませんね!
最後に
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
現在ニコニコを中心に、YouTube・ピアプロでも活動しています。
ニコニコとYouTubeにあげる動画は同じものですが、プラットフォームによって使い分けていただければと思います。
また、ニコニコモンズとピアプロでは音源を配布しています。
特にピアプロの方ではオフボーカル音源も付いてくるのでよかったらどうぞ。
※アルバム用にリマスターした音源はまだアップしていませんが、ご希望があればお渡しします。
あと最近は文章の書き方を忘れるレベルで更新していませんが、このnoteでは音楽理論やGarageBandの使い方をはじめ、音楽に関係する記事を書いています。
記事はジャンルごとにマガジンにまとめてありますので、興味がありましたら覗いてみてください。
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