川畑battie克行

詩人・SSW。愛と死と青空を巡る思索。詩人として、『サイネリア』(書肆山田刊1989年限定300部)、キンドル詩集に『サイネリア臨書』『青空/揮発』『花ごころ』他。SSWとして、アルバム『百年経ったら墓ん中』『うしっ!』他。批評『晩年感覚』は、『群像』(1986年)の最終選考作。

川畑battie克行

詩人・SSW。愛と死と青空を巡る思索。詩人として、『サイネリア』(書肆山田刊1989年限定300部)、キンドル詩集に『サイネリア臨書』『青空/揮発』『花ごころ』他。SSWとして、アルバム『百年経ったら墓ん中』『うしっ!』他。批評『晩年感覚』は、『群像』(1986年)の最終選考作。

マガジン

  • 子育ち詩集『きみは転がりこんできたね、マイボーイ』

    すでに就職、結婚をなすまでの社会化に成功したわが息子の、誕生から幼稚園の年少さんに通い始めるバスに乗るまでを書き留めた、子育ちの記念碑詩。 高橋源一郎『さようなら、ギャングたち』の中にでてくる赤ん坊のためのうんちの詩というアイディアを見かけ、「それ、自分の作品として読んでみたい!」と思い、書いてみたというのが、きっかけです。 長いっすよ笑。

  • 坂本龍一『音楽図鑑』_lyricalized

    『エスペラント』では音楽への付箋を貼っていましたが、今回の『音楽図鑑』では、メロディに歌詞をつける試みをしてみます。

  • opusへの付箋

    朝吹亮二さんの詩集『opus』に付箋を貼っていきます。

  • 写真詩集『樹の鳥、空の滴』

    10枚の鳥の写真に四行詩を添えました。 写真:鶲(ひたき)王子 詩:川畑battie克行

  • 坂本龍一詩篇_エスペラント

    坂本龍一の音楽にインスパイアされながら、その源をさぐってみる詩篇です。まずは、『エスペラント』について試してみました。

最近の記事

『奇数の歯を持つ嬰児(前)3/3-c』

c 前方への移動は四段階を経てはいはいへと達した まずは前進への意志を持ちながら 寝返りを連続することでそれは行われた 二段階目では両手を前に伸ばしたまま腹ばいになり バタ足を乱打することで視線と進行方向の一致は得られた 三段階目では両肘を交互に繰り出すことで ほぼ前進の姿勢は獲得された あしうらのふくらみの部分を畳と摩擦させてはいはいを完成した この時期を爬虫類後期と呼ぶことができる 今でもそうかもしれないけど この時期にぼくのきみへの関心は薄まり 還俗した坊主をみるよう

    • 『奇数の歯を持つ嬰児(前)3/3-b』

      なにしろきみは 口腔的存在とはまだ程遠く 口唇という限定的な場所の狭隘さにも 耐えなければならなかった 中央を残して 両端を上部に丸める舌のかたちは 乳首をそのまま受け入れるのに適しており 乳首をさがしもとめるときの舌の動きは ぼくが戯れとしてしばしば彼女にしかける 熱心さとはちがって 生存を賭けた 揺るがしようのない運動だったのだ ぺろぺろ、ちろちろ と、のぞく舌の赤さは もしきみの舌先がふたつにわかれているならば とうてい人間のものとはいいがたいものだった この時期

      • 『奇数の歯を持つ嬰児(前)3/3』-a

        神の調査員として 赤ん坊は生まれてくるのだが しかしきみもしだいに 人間じみてきてしまう その証拠としてふたたびぼくは 泣き声における変化をあげよう 最初きみは泣く器官として機能しているにすぎない あるいはまったくの眠る動物だ ぜんたい ぼくらが二十四時間の約三分の一を 集中的に睡眠時間にするのに対し きみがあんなにも頻繁に眠り、 また授乳されては眠り ぼくらの安定した生活方法を脅かすというのは きみの一日とぼくらの一日が まったくことなった期間であることを示す カレールーの

        • 『チベタン・ダンス』[Lyricalized]

          さて、と。 坂本龍一詩篇の新作を作るか、 だが、どのように。 前回のは、梱包できないまでも付箋やタグのように 脚注を詩で添えるスタイルで行ってみたが、 おなじことを二度やるのはつまらんし。 いや、それ、Opusでやってみてるけど、 それは詩につける脚注だから、ま、いいじゃん。 だいたいオレの場合は、 メロディっていったって ピアノ弾く人たちみたいに音階名で覚えるんじゃないから 歌詞がついてないと困るんだよな。 そうか! そこか!! 自分用に歌詞をつけて歌にすればい

        マガジン

        • 子育ち詩集『きみは転がりこんできたね、マイボーイ』
          13本
        • 坂本龍一『音楽図鑑』_lyricalized
          1本
        • opusへの付箋
          6本
        • 写真詩集『樹の鳥、空の滴』
          1本
        • 坂本龍一詩篇_エスペラント
          15本
        • そのたった
          6本

        記事

          『奇数の歯を持つ嬰児(前)2/3』-d

          そこまで報告して 顔をあげてみると すでに赤ん坊は眠っており 母親はそそくさと 彼女の乳房を 下着のなかへと しまいこんでいました 幸福な親子関係というものが 身体的な訪れをした とでもいいだけな表情で ぼくを除く ふたりの家庭生活者は 現象していたのです おい、ちがうぞ、 この赤ん坊はな、とぼくは いいかけた言葉をのみこみ 赤ん坊の方を 静かにうかがいました て・とわ、て・とわ、 そうか黙っているべきなのだな そうしてぼくはともかく 失礼のないように 振る舞わなけれ

          『奇数の歯を持つ嬰児(前)2/3』-d

          『奇数の歯を持つ嬰児(前)2/3』-c

          わたしなどは、そのまあ、 いまのところは 発揮されておりませんが 多少の信仰心は もちあわせておりますし、 なにか危急の用の際には ひとこと お声をかけていただければ それはもう、はい、 お役にたてることも なくはないと存じますが ただこれのほうはなにぶん 愚妻でございまして 論理が住処なものですから 気のきかないところ、 行き届かないところが キリマンジャロの根雪のように あるとおもいますが そこはそれ、 宗派がちがっていたら お許しください、 摂取不捨の 弥陀の心意気と

          『奇数の歯を持つ嬰児(前)2/3』-c

          『奇数の歯を持つ嬰児(前)2/3』-b

          へへへぇい、 そのような高貴なお方とは つゆ知らず 餓鬼扱いの客扱い、 泣けば泣け泣け、途方にくれろ どうせぼくらは親子じゃないかと たかをくくって失礼いたしました あなたのお生まれになった この家の現状を 手短に申し上げますと わたしが夫-父親の 二役を担当しております あなたをいま 腕のなかに抱いて 懸命にあやしておるのが 妻-母でございます

          『奇数の歯を持つ嬰児(前)2/3』-b

          Opus02への付箋

          [水の襞]、 雨、液体、 水と雨、水飴。 性愛がふくむ淀みと流れの疎密。 しかし、性欲は近接する異性身体への反応にすぎず 愛の裏書き<ura-gaki>とはならないので、 むしろ濁点をひとつ後ろにずらして 裏鍵<ura-kagi>となって離接への抜け道を探す。

          『奇数の歯を持つ嬰児(前)2/3』-a

          a 「ゆび、 極端に根本だけがふくらんでいて 急激に細まりながら すぐに 爪によって完了されているゆびは たしかに赤ん坊のものです ほお、びっしりと 繊毛がこびりついているために かぶりつくのがためらわれる 桃のほおは たしかに赤ん坊のものです しかし瞳はちがいます 世界を睥睨するように ゆるやかに移動させる あの眼球運動は わたしたち人間が 行くことのできない 高所の意識物のものです はじめてその運動を 見てしまったときぼくは 思わずひれ伏しました

          『奇数の歯を持つ嬰児(前)2/3』-a

          Opus01への付箋

          [女]、 [女]はもういない。 60年代を青春とする<男>の繁栄を支えたのち いまや、自立して 女性と各世代女子とで絶賛生存中。 ■20年ほど書いて玉石混交する瑪瑙のようなBlog: https://blog.goo.ne.jp/shishi16_march ■海浜のまつぼっくりのようにつつましく存在するBooth: https://hobo.booth.pm/

          たとえせかいがこごえていても [コサギ]

          たとえせかいがこごえていても せかいはわたしがいるところ いつもかわらずやさしい いつもかわらずあたたかい

          たとえせかいがこごえていても [コサギ]

          Opus00への付箋-d

          [規則的な電子の音]、 目覚まし時計もしくは別離の鐘。 [アクリルの青]、 地中海の海を映す青空(azur)による 扉をa-ke-ru-歓迎(accuellir) [コンポート]、 果実の残照。 [グンタイアリ]、 ゴンドワナ大陸によって分割され 天敵の蛇を持つ熱帯アリ。

          Opus00への付箋-d

          『鹹水』from『エスペラント/“Ulu Watu”』

          われわれは砕かれ (-なければならず)、 漂流し、困窮し、拾いあげられ (-なければならない) われわれという砂金があることを この地上の友人たちに知らせ (-なければならない)からだ われわれにあたかも 死があるかのように語る 地上の友人たちに われわれは死なないということを 伝え (-なければならない) 死体を青空の骸布で抱きとめて 赤子のように 揺すって歌ってやら (-なくてはいけない) よしよし、泣かなくていい、 眠れ、眠れ、 われわれのうちのひとつのわれよ わ

          『鹹水』from『エスペラント/“Ulu Watu”』

          『ラスコーインタビュー、鹿』from『エスペラント/“A carved Stone”』

          -いいよ、話をしながらでも描けるから なんでも聞いてくれていいよ。 (今日はここ、ラスコーの洞窟で岩絵に熱中なさっている (サークルの方にお話をうかがっております。って -ここでなにをしているんですか、か。 そいつは愚問だな。 見てわからんかな、 岩に刻んでるんだけどな。 (愚問? 愚問かよ! やっぱクロマニョン人は (社交辞令というものを知らんよなあ、って -なんのために刻んでいるんですか、か。 そいつも愚問だな。 心のたかぶりがおさまらんから 岩に伝えて鎮めるだけ

          『ラスコーインタビュー、鹿』from『エスペラント/“A carved Stone”』

          『Opus』00への付箋-c

          水の逆流、 しかし、水は 根から送り出されているのではなく 葉の蒸散によって 吸い上げられているのだという 長寿であることの必須が軽やかさであるならば むしろ水は嬉々として高みを目指す 好奇心の健脚であればいい 湖の身体、 沼の眼によって呼び出されたもの。 では、もし沼という地表の停滞ではなく 霧という大気の漂流であったならどうなるか いつまでも漂ってる霧の眼、雹の身体、か。 奢侈、 すでに夏の朝であることの 過剰な豪奢 城の跡、 どこの国の城か 判定不能。

          『Opus』00への付箋-c

          『ハドル、太極の陰陽』from『エスペラント/ “Adelic Penguins”』

          まだ卵のなかにいるわが子よ、 ともに待とうではないか われらの母の帰りを 母はでかけた、海へと われわれを養うものを 捕らえて持ち帰るために わたしの体の重みが 半分ほどになるころには 彼女は戻ってきてくれるだろう われわれは揚々とそれを待とう わたしはこの吹雪のなかで そしてきみはその卵のなかで わたしはきみを保持する きみが適切な時期に この世にでてこられるように わたしはきみを包含する きみが十全な姿形で この世を享受できるように われわれが 凍えまいとして 輪

          『ハドル、太極の陰陽』from『エスペラント/ “Adelic Penguins”』