苦手

俺は、水族館に行ったことがない。言うなれば水族館童貞だ。
ウォシュレットも使ったことがない。つまりウォシュレット童貞でもある。
あと、二郎系ラーメンも食べたことがない。つまり、二郎系ラーメン童貞でもある。
このように、さまざまな童貞をこじらせている俺だが、最近どうしても童貞卒業したいものがある。それは美容院童貞だ。人前に出る仕事がしたいなら清潔感は大事だから。
美容院。名前からして、俺のような田舎臭い垢抜けない男には敷居が高すぎる。そもそも美容院のあのおしゃれなオーラが苦手だ。一見さんお断りと言わんばかりのモダニズム建築、店内に流れる名も知らぬ洋楽、美容院とは切っても切れない関係の観葉植物、学生時代を一軍として過ごしたであろう美容師さん。これら全てが俺の入店を拒絶してるような気がする。つまり、美容院に入るためにはある程度おしゃれでなくてはならない。おしゃれになるために美容院に来たのに、おしゃれじゃないと入れない。卵が先か鶏が先か問題を地で行くこの施設には今日も吸い込まれるように人が入っていく。
この人たちはどうやって美容院童貞を卒業したんだろう?
俺にできることは、店の前を挙動不審に2、3往復することだけ。こうして往復してれば店の中から店員さんが出てきて「どうぞ」と優しく声をかけてくれるかもしれない。という淡い希望を抱いて今日も店の前をウロウロしてきた。
よし、床屋行ってこよ。

https://twitter.com/ashigaru_yamato

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