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二度目の帰省 3

12月30日。ピンとタイラに連絡をして、3人で集まることになった。夏休みには会えなかったから、二人に会うのも9ヶ月ぶりだ。

夕食を済ませて車のキーを借りて外へ出ると、外はまだ明るい。この街が東京から遠く西にあることがわかる。

車に乗り込んで、まずはピンの家に向かった。メールをするとピンはすぐに玄関にあらわれた。それからすぐにタイラの家へ。蜘蛛の巣のように縦横に道が張り巡らされたニュータウンは、初めて来た人にとっては同じような景色ばかりで、あっという間に迷ってしまう。でも小さな頃からここで過ごした僕たちは別だ。いくつ目の十字路で曲がればどこへ行けるかは、体が全部覚えている。

タイラはなかなか家から出てこなかった。待っている間にピンが家から持ってきたMDをカーステにセットして、音楽をかけた。アニメの女の子のかわいい声が流れて、僕は笑ってしまった。

「これめっちゃいい曲だから。」

なにこれ、と聞いた僕にピンは真剣な顔をして答えた。街はすっかり夜になって、真っ暗な車内に電波ソングが大音量で流れている。たしかに聞けば聞くほど、いい曲だ。いや、これすごいわ、と感心していたら、タイラがようやく現れた。

どこ行く?と尋ねても、ピンもタイラも別に行きたいところは無さそうだ。国道に出ても大して面白くも無さそうだから、ニュータウンの奥、坂を登った先の県営住宅とグラウンドの、さらにその先の道を行ってみることにした。

グラウンドの脇で、二車線のきれいな道路は終わりになる。その奥は森。舗装はされているけれど、多分ニュータウンができる前からある古い道で、3人ともそこから先に何があるのかは知らなかった。対向車が来たらどうするんだと思う初心者には怖い細い道だけど、免許取りたての夜のドライブは、好奇心の方がはるかに勝る。僕たちは迷わず、トンネルのように木々が覆う暗い道へ車を進めた。

大学どう?とか、バイトどう?とか、彼女できた?とか、そんな話をするのかなと思っていたけどそんなことは無くて、アニソンを歌って盛りたがったり、山道の暗さを怖がったり、車に乗ってはいるけれど、やっていることは小学生の頃とまるで同じだ。それがなんだか嬉しくて、運転の緊張もいつのまにか忘れていた。

どのくらい走っただろうか、道は峠を越えてやがて下り坂になった。そのまましばらく下ると、建物の灯りが見えてきた。森を抜けてたどり着いたのは、海。防波堤に守られて、数台の船が泊まっている、古い小さな集落だった。


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