顎変形症の手術をした②術後1日目


前回までのあらすじ→BoAのメリクリを聴きながら意識がなくなった。


入院5日目(術後1日目[4/23])


覚醒、そして苦しい

おそらく夜。(確認できてないけどたぶん本当は22日の夜だったのかな)看護師さん?お医者さん?の声がうっすらと聞こえた。
ハッキリ目が覚めたという感覚ではなく、朝目は覚めてないけど遠くで母親が朝ご飯を作ってる音を薄らと認識は出来ているときみたいな感じ。
そしてそのまま仄暗い海底から水面に浮かび上がってはまた沈むかのように何度も意識が浮き沈みしていた。
正直ここらへんは朦朧としていて覚えてない。「手術上手くいきましたよ」と声を掛けられたような気もするが判然としない……

どれくらい経ったか分からないけど、いつの間にか意識がハッキリしてきて猛烈に苦しくなった。
顎の骨を動かす手術だから顔、特に鼻や口周りがものすごく腫れるのだ。
私の場合は下顎だけじゃなく上顎も動かしているので鼻の腫れが酷く、鼻血が詰まって鼻呼吸が出来ない状態だった。

なんとか口呼吸をしようとするものの血や血痰で苦しい。唾液を飲み込もうしても血が混じっているのが気になるし、そもそも飲み込むという動作が上手く出来ない。

咽せたり咳き込んだりするたびに看護師さんに口の中の血や血痰を細い管を使って吸引してもらう。一呼吸一呼吸がとにかくつらく苦しくて眠るどころではなかった。
語彙力なくて申し訳ないけど私は夏目漱石でもなければ坂口安吾でもないから苦しい、つらい、キツい、本当にそれしか言葉が出てこない。

吸引と運

吸引してほしくなったらナースコールを押す。その夜はおそらくベテラン女性看護師さん、若い女性看護師さん、若い男性看護師さんの3人いたんだけど、正直言うと男性看護師さんの吸引があまり上手くなくてやってもらうたび苦しくて嫌だった。毎回ゲボ吐きそうになるツボを押してくる。

ナースコールで誰が来るかは運だから、朦朧とする中「あの人はやめてくれ……!」と心の中で願っていた。自分嫌な奴すぎるな……
5、6回耐えたあとやっぱりどうしても無理で、ベテラン看護師さんが来たタイミングで「すごく苦しいからあの人じゃなくできないか」と回らない口で必死に伝えた。今思えばめちゃくちゃ我儘な奴だけど、そのときはもう呼吸に必死すぎて自分のこと以外考えられなかった。醜い。
(でも吸引以外はとてもいい人だった。ティッシュ1箱くださいと言って、わざわざ取り出し口を開けてから渡してくれたのはこの人だけだった)

ちなみに鼻が詰まってるなら鼻も吸引してもらえばいいと思う人がいるかもしれないけど、鼻血を吸うのはあまり良くないから吸引は出来ないと言われた。なぜ良くないか理由も言ってくれたけどつらくてよく覚えてない。

しばらく経って、自分で吸引する方法を習った。これで毎回看護師さんを呼んで手を煩わせなくてもいいんだとホッとしたものの、全然上手く出来なくて不安になった。

ステロイド事件

炎症を抑える効果があるステロイドを鼻に吸入するとちょっとだけ苦しさが和らぐ。
未明にどうしても鼻が苦しくて吸入したいと看護師さんに言うと、「個室じゃないから起床時間にならないと出来ない、4時間空いてないから吸入出来ない(ステロイドは最低4時間空ける必要があるらしい)」と言われた。

でもあまりにも苦しいから緩和処置として、ステロイドが入ってない水蒸気?みたいなもので鼻を潤すだけならOKですとなった。
「今5時半くらいで、ステロイドが使えるまで1時間あるからそれまでこれで耐えましょう」と看護師さんに言われ、それでいいです!と藁にも縋る思いで頷いた。苦しさが少しでもなくなるならなんでも良かった。

とりあえず鼻を潤すだけでも少しだけ苦しいのが和らいだ。なによりも、ただ吸引して過ごすのではなく何かやってるというのが気が紛れた。

問題はここからで、1時間くらい経ってやっとステロイドのやつが出来る!と思ったら、夜勤から朝の引き継ぎで違う看護師さんになって吸入は出来ないと言われたのだ。

私は話がいってないんだと思い「1時間くらいまえに、1時間後にステロイド吸入しましょうって話になりました」と伝えた。
でも看護師さんはうーん……という顔をしていて、もしかして吸入の機械が出てるからもうやっちゃったと勘違いしてるのかもと思った。

「これはステロイドじゃなくて鼻を潤すためだけにやったやつで、1時間くらい前に1時間後にステロイド吸入するって話になってました」と
つらすぎてもっと言葉めちゃくちゃだったと思うけど、回らない口でよだれ垂らしながら必死に訴えた。

看護師さんは「ちょっと聞いてきます」と離れしばらく待たされた。このちょっと聞いてきますで待たされる時間が本当に長い。永遠の存在を信じかけた。

しばらくして看護師さんが戻ってきたけど、やっていいともよくないとも何も言わなくて困った。つらくて朦朧とする中、さっきと同じようなことをもう一度伝えた。とにかくこの苦しさから少しでも解放されたかった。

ここから3、4回、説明→ちょっと聞いてきます→待つのループ。
マジでRPGでNPCとの会話繰り返すやつやってるのかと思った。どうやったらストーリー進むんだ。
ちゃんと引き継ぎしてくれ!!と内心ほぼキレてた。

結局何時になったかは分からないがようやく吸入が出来ることに。本当によかった。
部活の後蛇口からがぶ飲みするただの水道水のよう、もしくは寒い日に飲むココアのように染み渡った。ステロイドが。

後から考えれば看護師さんだって患者からの言葉だけで処置することは出来ないし、きちんと確認しなきゃいけないから時間掛かるのも仕方ない。
このときは人生で味わったことのない苦しさに必死に耐えてたからかなり気が立ってたんだと思う。看護師さんには努めて良い患者でいようと思ってたけど、このときばかりはキツく当たってしまったかもしれない。本当に申し訳なかった。

耐えるだけの日々の始まり

回診の時間になり執刀した先生が来た。
「うん、いいね。顔も短くなってるよ!」と言ってくれた。でも正直「顔の短さとか気にしてらんねー!」と思った。そもそもまだ自分の顔見てない。
「ただただ鼻が苦しくてつらい」と伝えると「腫れるのは絶対に起こることで吸引しながら耐えるしかない。術後2、3日間が1番つらい」と言われ、絶望感に襲われた。耐えられないと思った。

朝昼晩と病院食(重湯とかスープとか)が出たけど食べる気力もないし、まず飲み込むということが出来ないから飲まず食わずで過ごさざるを得なかった。でも何か口にしたいとも思わなかった。

夕方頃、ようやくスマホを見た。丸一日使わないなんて初めてだったんじゃないか。充電が1%になっていた。
母親や職場の社長からLINEが来てたのを確認。とりあえず母親には連絡しないとと思い「辛いよ〜」とだけ返信した。もっと安心させるような言葉を送ってあげればよかった。

消灯前、夜勤の看護師さんが様子を見に来た。
「大丈夫ですか?」と聞かれて素直に「大丈夫じゃないです」と答えた。

「鼻が苦しい。つらい。1日なら耐えられるけど2、3日こんなんなのは耐えられない。この夜を越えられない」と看護師さんに弱音を吐いた。

ほぼ泣きかけてた。苦しいしつらいし、27にもなってこんなことで弱音を吐いている自分に情けなさも感じていた。なんで手術なんかしちゃったんだろう。

消灯時間がやってきた。
人生で1番長い夜が始まった。


術後1日目だけで3000字超えた。大学生のときは1000字のレポートでもヒーヒー言ってたのにこの差はなんだ。

長くなったのでここでまた一旦終わり。
果たして夜は越えられるのか!?ご期待ください。

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