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野手の投手起用、MLBから学ぶ2つの注意点とは⁉

 前回の日記に続いて、今回もプロ野球の話です!

 9月2日のDeNAvs巨人戦で、珍しい「野手の投手起用」がありましたよね!巨人が4-12と大量8点のビハインドを喫した状況で、北村拓己内野手を8番手投手として起用したものです!

 試合終盤に点差が大きく開いて勝負が決した状況下での「野手の投手起用」は、救援投手を温存するためのひとつの策として有効かと思います!MLBでは珍しくありませんが、NPBではあまり見かけない起用法です!

 こうした野手を登板させる起用法について否定的な気持ちはありませんが、以前から心配していることがあるんです!それは……

野手の投手起用は「〇〇」と「○○」に気を付けてねえ~!

 そうなんです!野手の登板には注意点が2点あると思うんです!

【北村選手の登板】
 まずは北村選手の登板についておさらいしましょう!

 2日のDeNAvs巨人戦は7回までに巨人の7投手が打ち込まれて12失点!8回表終了時点で4-12と8点もの点差がつき、巨人が残り1㌄で追いつくのは難しい状況となっていました!

 原辰徳監督はもはやお手上げと判断。8回裏から投手ではなく、内野手登録の北村選手を8番手投手として投入しました!

 巨人は既に7投手を起用していたものの、まだブルペンにはアルベルト・バルドナード投手中川皓太投手が残っていました!

 しかし、バルドナード投手は勝ちパターンの救援投手であり、中川投手に至っては7月から大勢投手に代わってクローザー役を担っています!大量ビハインドの状況で使いたくないのは当然で、翌日にも試合があることを踏まえると両者の温存は妥当な判断でしょう!

【過去の野手登板】
 原監督が野手を投手起用した例は過去にもありましたよね!

 3年前の2020年8月6日、対阪神戦。0-11と大きく点差が開いた8回裏1死から、やはり内野手登録の増田大輝選手が6番手投手として起用されたものです!

 この時もブルペンには大竹寛投手、鍵谷陽平投手、高梨雄平投手、大江竜聖投手、そして中川投手の5人が残っていました!しかし翌日から移動日なしで対中日3連戦を控えていた都合上、救援陣を温存する判断に至ったわけです!(中川投手は今回も前回も温存されているんですね!)

【投手と野手は違う】
 このように、点差がついた試合の終盤に野手を登板させる例は稀に見られます!(最近は原監督しか使わない手法ですが)

 上記の通り、救援投手を温存するという目的においては効果的だと思いますが、一方で心配な点もあります!

それは「故障」です!

 投手と野手というのは、根本的にプレーの動作が違います!筋肉の使い方も違えば、関節の使い方も違います!体の使い方が異なれば、逆算してトレーニングでの鍛え方も違います!投手は投手に特化した体を作り、野手は野手に特化した体を作っているわけです!

 そのため、野手が投手を務めるというのは、普段使わない筋肉を使って、普段行わない動作をすることになるんですよね!そうなると当然ながら、故障のリスクもはらみます!

【送球と投球】
 野手も守備ではボールを投げる機会がありますが、野手の「送球」と投手の「投球」は大きく異なります!

 野手がボールを投げるのは、打者や走者を刺すための「補殺」のケースですよね!ゴロを捕球して一塁に投げたり、併殺の際には二塁に投げたり、さらにはバックホームで本塁に投げたりもします!

 この野手の「送球」で求められるのは、「ボールを目的地に早く届ける」ことです!

 送球は打者や走者をアウトにすることが目的ですので、打者や走者が塁に到達するより先にボールを届けることが必要となります!一塁にせよ二塁にせよ本塁にせよ、求められるのは「早く届ける」ことです!早く捕る、早く手放すなどの工夫をして「いかに所要時間を短くするか」が大事なんですよね!

 対して投手の「投球」は違います!投球の基本的な目的は「打者に打ちづらくする」ことです!その目的達成のためにはさまざまな要素がありますが、大きな要素のひとつは投球の「スピード」でしょう!

 このスピードは野手の送球に求められる「所要時間の短さ」とは全く別物です!投球に求められるスピードは「到達地点での通過速度」ですよね!ホームプレート上を通過する際に150㌔、160㌔といったスピードを維持できるかどうかが求められます!

 逆に言えば投球に「所要時間の短さ」は求められておらず、「到達地点での通過速度」を目指して自分の間合いで投げればよいわけです!

 「所要時間の短さ」を求められる「送球」と、「到達地点での通過速度」を求められる「投球」。いわば「早さ」「速さ」の違いでしょう!同じ「投げる」プレーでも、野手の「送球」と投手の「投球」は似て非なるものですよね!

 目的が違えばプレーも違います!肩や肘、手首の使い方、足腰の踏ん張り方、重心の移動……何から何まで違うはずです!

 普段は「送球」に慣れている野手にとって、「投球」というのは非常に不慣れな動作になります!普段とは違った体の使い方をして不慣れな動作をするということは、当然ながら故障のリスクも生じるわけです!

 というわけで私が心配する「野手の投手起用」の注意点は「故障」です!

 3年前の増田選手は登板後も内野手、外野手として出場しており、投球による故障がなかったのは何よりでした!今回の北村選手も故障という報道は散見されず、ホッとひと安心ですね!

【リスクを最小限に】
 「野手の投手起用」の注意点、もう1点は「人選」です!

 野手を投手起用する場合、人選は当然ながら「その時点で残っている野手」から選ぶことになりますよね!その人選って、どのような判断基準で選ばれるのでしょう?

 これは北村選手や増田選手には失礼な話になってしまいますが、「万が一故障離脱しても、チームにとって傷口が浅い人」という視点がどうしてあるはずです!

 上記の通り、野手が投手を務めるのは故障のリスクをはらみます!そうなると、登板させた野手が故障して離脱してしまった場合の損失の大小も考慮せざるを得ません!

 今回、北村選手が登板した時点で、他にベンチ入りしていた打者は小林誠司捕手、中山礼都内野手、梶谷隆幸外野手、岡田悠希外野手、重信慎之介外野手がいました!北村選手も合わせるとベンチに6打者が残っていたわけですね!

 この6選手、2日の試合前の時点で小林選手が打率.000、中山選手が.246、梶谷選手が.297、岡田選手が.174、重信選手が.178、北村選手が.143でした!

 また、今季のスタメン出場は小林選手が2回、中山選手が25回、梶谷選手が46回、岡田選手が6回、重信選手が4回、北村選手が5回でした!

 打率やスタメンの回数を見ると、万一故障した場合のリスクを見越して登板させられる打者とそうでない打者に分かれそうですよね!

 今回の場合は首脳陣から控えの野手陣に対して「誰かいけるか?」と声が掛かり、北村選手が「僕でよければ」と名乗り出たそうです(漢気ですね!)

 しかし、今季の成績を考えると、例えば梶谷選手や中山選手が同様に「僕でよければ」と名乗り出ても、リスクを考慮して「ちょっと待て」とストップが掛かりそうな気がします!

 だってですよ?もしも梶谷選手に投げさせたりして、万が一故障して長期離脱となったら大打撃ですよ?故障で長期離脱した場合に生じる損失は選手によって大違いです!そうなると、本職で力量のある野手を登板させるわけにはいかないでしょう!

【過去の故障の例】
 こうして「野手の投手起用」で故障のリスクを心配するのは、過去に例があるからです!野手登板の「万が一」が起きてしまったケースが実際にあるからです!

 思い出されるのはMLBで2度の本塁打王に輝き、通算462本塁打を誇るスラッガー、ホセ・カンセコ外野手です!ご存じの方も多いでしょう!

 カンセコ選手にはMLB17シーズンのキャリアの中で、1度だけ登板した経験があります!

 レンジャーズに所属していた1993年、5月29日のレッドソックス戦です!試合は8回表を終わって1―12と大量のビハインドに!すると3番・DHで出場していたカンセコ選手がDHを解除し、8回裏から4番手としてMLB初登板することになりました!

 しかし、慣れない登板機会で大きな代償を払うことになります!1㌄33球を投じる中で、右肘じん帯断裂の重傷を負ってしまったのです!長期離脱を余儀なくされ、じん帯再建のためにトミー・ジョン手術まで受ける羽目に!当然ながら同年の残りのシーズンは棒に振ることとなってしまいました!

 手術はその後のプレーにも影響し、自慢の強肩はすっかり鳴りを潜めてしまったのです!故障前は右翼手としての出場がほとんどでしたが、スローイングが衰えた術後はDHでの出場が中心となってしまいました(泣)

 そうなんです!たった一度の登板で、カンセコ選手とっても、レンジャーズにとっても、非常に大きな損失を被ることとなってしまったのです!

 決してバイプレーヤーであれば故障しても構わないというわけではありませんが、カンセコ選手のように主力級が故障してしまうとチームにとって非常に大きなダメージを負うことになってしまうのです!

 チームとしてはリスクマネジメントの観点からも、野手の投手起用にはできるだけリスクの小さい人選を考えるべきだと思うのです!

 というわけで結論です!

野手の投手起用は「故障」と「人選」に気を付けてねえ~!

 野手登板は「ノーモア・カンセコ」でお願いします!

と、素人ジョシは思うのでした!

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