僕たちイキリシアン 002 フィクション上での武術描写に対する野暮なツッコミ

前回のフェミニストを(気がすすまないかもしれないが)思い出してみよう。

「女性描写が、あまりにも「男の願望」剥き出しで、いかにも独りよがりに見えます。」

「プロとしてーーー」

「女性作家の書いた小説などをもう少し読んで、「独り立ちした」女性キャラクターが描けるようになると」

なんというか、フィクションに対してリアルでないと批判を加えるのが、そもそも度し難い。
フィクションとは極論すれば嘘であり、娯楽以上の目的は無い。
漫画家を一人の芸術家として見れば、その人の世界が好きならフォローすればいいし、そうでなければ去るべきで、自分好みの世界を描かせようとするのは傲慢だ。
あるいは漫画家をあくまで商売人と見ても『男の願望が剥き出しの女性描写』にした方が売れるのなら、そう描くのは当然だし、件のフェミニストが『独り立ちした女性』を描いたことによって生じる損失を補填するわけがないので極めて無責任だ。

そういう批判。
つまりフィクション上での武術描写に対するツッコミであれば我々にもできるが、仮に正しい説を陳述したところで野暮なだけである。
「納刀時に音を出すな」とか「人を斬ったら血振りだけでなく刀身を拭ってから納刀しろ」とか「実際に真剣を見ると実際以上に長く見えるがそれにしても長く描かれすぎ」とか…

実際のところ、そういう描写を見慣れている人からは、そういうツッコミが新鮮で面白いと感じることもあるのかもしれない。
実際にそういう時代劇でありがちな描写と現実(歴史的な考証)との違いをまとめた本が販売されてもいるのだ。
それはべつにいいと思う。
だが調子に乗って「このような間違った内容を放送する制作陣も、それを良しとする視聴者も低レベルだ」とか言い出したら話は別だ。

「武術描写が、あまりにも「男の願望」剥き出しで、いかにも独りよがりに見えます。」

「プロとしてーーー」

「有名武術家がアップロードした動画などをもう少し観察して、「リアリティのある」武闘家キャラクターが描けるようになると」

なんて言う人がもしもいたら腹が立つだろう。
「わかってて楽しんでんだよ!!」と。
つまり、自分一人だけが賢いことを誇っているかのような尊大さが癪に障るのだろう。

余談だが、
「プロとしてーーー」
という言い回しは、おそらく漫画『ザ・ファブル』で主人公がよく使うセリフの真似である。
だから余計に「お前がフィクションと現実をごっちゃにするな」と言いたくなった次第。

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