バナナの生存戦略
朝食に摂ったバナナの甘さがちょうどよかった。バナナは面白い。いつも真っ黄色でコチコチのバナナを買ってきて、帰ったらすぐに袋から取りだして置いておくのに、ポツ、とひとつふたつ斑点が出たかと思うと、ぶわっとそれが全体に広がる。だいたい、追熟の証が茶色い斑点というのがすでに面白い。どんな自然淘汰がはたらいたらそんなことになるんだ。
午前中に江國香織さんの本を1冊読んだ。最近もっぱら江國香織さんの小説を読み返している。たぶん、気候のせいだと思う。窓も開けない、冷暖房もつけない、静かな部屋で、曇りがちで、暗すぎない自然光。これらは私にとっての江國香織さんの書く物語のイメージだ。私の心持ちもだいたいこのような感じなので、余計に。もっと寒くなれば、辻村深月さんの本を読むだろう。私には季節をともに過ごす本がある。したがって、寂しくない。
遠距離恋愛をしていると「寂しくない?」と聞かれることが多い。寂しくない、と答えると会話が強制終了するが、寂しくないものは寂しくない。むしろ近距離恋愛のほうがずっと寂しい。思いたてばすぐにでも会える距離にいるからがゆえに会えず、ひとりでいるにしてもうっすらと相手の気配を感じざるを得ない、磁石のN極とS極をそうっと近づけていって、お互いの引力は感じるが引っ付くほどではないというあの感じに近い。この薄気味悪さを感じるくらいならいっそ遠くに住んでいて、ひとりずつの日々を歩み、夜に「よお、今日はどうだったんだ」と電話するくらいがちょうどよい。
にんじんときゅうりを炒めてめんつゆで味つけするというものをフライパン上でおこなっていたとき、なんだってこんな組みあわせにしようと思ったんだとひたすらに疑問だった。おいしかったので助かったが……
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