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WOOD-STとは?

木造構造計算は、通常「住宅」を対象としています。そのため住木センターのマニュアル名も「木造軸組構法住宅の許容応力度設計」(通称グレー本)となっています。しかし木造は中大規模の非住宅でも利用されます。最近多くなっていますね。そうなるとグレー本ベースでの構造計算では適用が難しくなります。グレー本は柱は細く、スパンも短めで整形の個人住宅向けに書かれています。元々は手計算でも可能な計算方法から発展してきました。しかし構造解析上でみると、いろいろと面倒な仕様があり、どうにかならないかと以前から話題になっていました。

ここ数年、中大規模の木造がクローズアップされるとともに、住宅以外の木造にも注目されてきています。そしてグレー本のベースとなる壁量計算をしないで計算できる、建築基準法施行令第46条2項に注目が集まりました。そしてこのルートとで計算できる構造計算ソフトも出ました。そのうちの1つが、今回紹介するWOOD-STです。WOOD-STは構造計算ソフトメーカーの老舗である株式会社構造システムが開発した構造計算ソフトで、2017年10月に発売になりました。

このソフトは、グレー本ベースのHOUSE-ST1というソフトと同様の操作性で、2項ルートの壁量計算外の構造計算を行える画期的なものでした。高度な構造解析ソフトの上にグラフィカルなユーザーインターフェイスを搭載して操作性を向上させた意欲的なソフトです。しかしながらメーカーの宣伝が下手で、その威力が世の中にはあまり知られませんでした。

2023年5月、WOOD-STのVer2が発売されました。さらに使いやすくなりました。しかしプレスリリースを読むと、ユーザーである私が見ても「?」です。

で、私的に説明すると、グレー本が耐震要素を「耐力壁」に限定(置きかえは可能)しているのに対し、WOOD-STは、構造解析で全体的に評価するのです。そのため壁倍率でいう7倍を超える耐力壁の入力や、倍率で評価できない方杖なども利用可能です。そして、何より吹き抜けやスキップフロアの解析も可能で、グレー本ではできない間取りが可能となっています。今回のバージョンで登り梁も可能となりより簡単に入力でき、安全な設計が可能となっています。


スキップフロアの構造設計・安全の確認が容易です。


方杖を使った設計が可能です。方杖の太さや長さで強度を調整できます。


高耐力の壁(ブレース)も入力できるので、グレー本では不可な架構も解析できます。

そのぶん、グレー本に比べて、解析内容は難しくなっています。S造などの構造をやっている人からみたら、こちらのほうが自然に見えると思いますが(汗)、木造のグレー本ベースの構造計算をやってきた人間からみると、かなり難しく見えるのも確かです。ただグレー本ベースの構造計算に限界を感じたら、挑戦してみるといいでしょう。

メーカーは中大規模を想定して作っているようです。確かに中大規模にも使えますが、元となった解析ソフトもそうなのですが出力が細かすぎます。今回分割する機能が付いたり、画面上で応力状態を確認できるようにパワーアップしていますが、なかなか運用が難しそうです。個人的には小さな建物、狭小住宅や店舗などでスキップフロアや大開口がある建物に向いていると思っています。また解析上、金物工法に向いています。そのような用途であれば非常に良いと感じています。

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