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木造構造設計のお約束 その3

 一般の方や意匠設計の方からすると、柱が太いと建物が頑丈になると思っているでしょう。もちろんこれは正しいと言えば正しいです。しかし間違っているといえば間違っています。

 というのは、木造構造計算(住宅)では、柱の太さで耐震性が決まることはほとんどないからです。上階の耐力壁が強すぎて、下階がもたず柱を太くする必要があることはあるのですが、建物を強くするために柱を太くする、ということは、実務ではほぼありません。こと耐震性に関しては、耐力壁という壁で地震力を受けるモデルで構造計算を行うため、直接柱の太さが耐震性につながることは少ないのです。なので、壁が少ないですよ、との指摘に柱を太くすれば?という提案はナシということです。前に書いたように通し柱も同様に、耐震性にはほぼ影響がありません。

 古い建物の耐震性を上げるために金物補強を勧めるリフォーム屋さんなどがあります。金物をつけると耐震性がアップするような感じを受けますが、俗に言う木造住宅用の金物は、部材と部材をくっつけて抜けないようにする性能がメインです。各部材を取りつける部分は剛ではないです。よって金物を取りつけることでは、直接的に耐震性を上げることにはなりません。恐らく剛になるような金物をつければ、一般的に柱の性能が不足してくるはずです。

 では、新築でも金物は必須ですが意味がないのでしょうか?そうではなく、金物は主に耐力壁の強さ、上下階の位置関係で決定してくるので、それに応じて必要なものを取りつけるのが正解です。耐力壁がない部分には原則的には金物は不要です。つまり古い建物の場合も、耐力壁を新たに施工した場合は金物が必要です。耐力壁があるから金物が必要なのであって、金物だけで地震に強くなるわけではないのです。

 例外として、制震機能をもった金物などは、耐震性が上がるものもあります。それでも耐力壁に比べれば、その性能は低いです。耐力壁に制震機能を取り入れた高機能なものもありますが、それはどちらかというと耐力壁に近いのです。もちろんそういった壁を使ったとしても、一般的な金物で止めなければならないのは言うまでもありません。

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