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それでも通し柱が強いという方へ

木造の構造設計をやっていると、「通し柱は必ずいれてください」とか「通し柱があるから地震に安心ですよね?」と聞かれることが多いです。伝統的構法などの太い通し柱でも無い限り、通し柱の有無は耐震性にあまり影響を与えません。地震に強いと言われているツーバイフォー工法も、通し柱はありません(耐風性をアップするために通したて枠をつかうことはある)。少なくとも普通の個人住宅レベルでは、通し柱を入れたら耐震性が大幅にアップ!ということはないです。

通し柱信奉?は意外にも日本で浸透していて、通し柱がないと駄目とか、弱いとか、よく言われます。在来工法に限れば建築基準法施行令第43条 柱の小径に規定があり(5項)、「階数が2以上の建築物におけるすみ柱又はこれに準ずる柱は、通し柱としなければならない。」とあり、通し柱は必須に感じます。しかしこの項には、適用除外があり、「ただし、接合部を通し柱と同等以上の耐力を有するように補強した場合においては、この限りではない」とあります。なので、金物等で補強をすれば必須ではないのです。

実際木造3階建てで総3階の場合、隅柱を1~3階を通し柱にするのは事実上不可能であり、1-2、2-3階に分けて通し柱にするか、通し柱を使わないのが通常になっています。木造2階建てでも通し柱がある建物、ない建物がありますが、別に耐震性などに寄与しているようには感じません。

逆に通し柱否定派の意見は、通し柱にすると、少なくとも2方向から梁を横から指すため柱の強度が落ちる、というものがあります。まあ2方向なら、と思いますが、3方向や4方向だとほとんど断面が残らず「折れやすいかな?」と思ってしまいます。もちろん梁できちんと埋まっており、それが理由で折れることはほぼないと思いますが、通し柱が強いようには見えません。この欠損を嫌がり、通し柱には金物構法の金物を使う設計者もいます。

通し柱を12㎝、普通の柱を10.5㎝にする設計法は広く知れ渡っています。そうすれば通し柱の断面欠損は少なくなるからいい・・・と考えがちですが、12㎝でも結構削れます。もし断面欠損を嫌がるならもっと大きな断面にすべきです。しかしそれ以上に、2種類の柱を混在させることによって、面合わせが難しく、結局12㎝の柱の表面を削って合わせたりするので、意味がほとんど無かったりします。個人住宅レベルでは、個人的には余程のことがない限り、柱のサイズは揃えるべきだと思っています。

ちなみに耐震等級3を確保するために、構造計算を行った場合、通し柱か通し柱がない場合の差はほとんどありません。少なくとも既存の住宅で普通の製材(無垢材、集成材は問わない)を使い、普通に設計している場合は、通し柱を特に考えなくても良いかもしれません。逆に弱くなることもあまりないので、通し柱が欲しい場合、通し柱を使っても問題ないと感じます。

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