見出し画像

無料耐震診断をお勧めしない理由

 世の中、うまい話には裏がある、無料なのはそれなりの理由があるのは当たり前です。設計料無料!!は論外としても、無料の耐震診断って結構ありますよね。個人的には営業行為であれば、業者的にはアリだと思うのですが、受ける側は果たしてどうでしょうか??

 耐震診断にかかる費用は、主に人件費です。どれくらい時間をかけるか?は非常に重要ですが、技術者の能力によって調査の時間は大きく変わります。また移動時間も仕事をする側からみると、無料というわけには行きません(料金として取るか?総額に含んで無料としているかは別問題)。また戻ってから、写真を整理したり、書類を整えたりする時間、耐震診断ソフトに入力する時間、図面を書く時間なども結構かかります。直接的な費用としては、ガソリン代(車で行く場合。電車の場合は電車賃)、書類の印刷費、借りてきた資料のコピー代、電気代など、正直それほどかかるわけではありませんので、ほぼ人件費というのは案外正しいかもしれません。

 耐震診断を行うために、どれくらい勉強してきているか?とかも重要です。直接費用としては、耐震診断ソフト代、講習会参加代、書籍代など過去にかかった費用も回収しなければなりません。パソコンなども必要でしょう。意外と他の業務と共用できるものもあるのですが、それなりにかかっています。たとえば私が使っている木造耐震診断ソフトHOUSE-DOCは約15万円です。数年に一度バージョンアップ費がかかります。

これらから考えて、耐震診断が無料でできるわけはなく、相当の経費がかかっています。もちろん仕事なので自分(と従業員)の給料分と会社の経費分も稼がねばなりません。それを無料でやることがどういうことか?考えてみてください。

無料でやる場合の第1の理由は、耐震補強などの工事が欲しい場合です。これは施工会社系で多いです。耐震診断でかかった費用は、受けた工事の収益で賄います。このモデルが成り立つためには、工事を請けないと成り立たないことです。そしてその内部で耐震診断にかかった費用を回収することです。別に悪いことではありません。工事業者が見積を作るのも無料が多いですが、実際に時間もかかりますしノウハウも必要です。しかし工事を取ることが目的なので大抵無料で行います。それと同じです。耐震診断だからといって例外はないのです。

ただ、それを考えても私は耐震診断は有料であるべきだと思います。理由は3つ。

・有料の仕事のほうが人間は力が入る
・有料のほうが責任感を持ちやすい
・有料だとお客様が真剣になる

です。よく施工業者は診断の代金を上乗せするから工事が高くなる、という人がいますが、施工があるからこそ合理的に調べたり、余計な仕事が増えないというメリットもありますから、必ずしもというわけではありません。

さて、一番目。人間では誰でもお金がもらえると思ったら真剣になります。これは詐欺師でも同じだと思います(悪いことですが、詐欺師も真剣に騙しているのだと思います。いけないことですが)。仕事が取れないかもしれない、と思って診断するのと、契約を行ってお金が入ってくる仕事、どちらが真剣にやれますか??もちろん人間性も関係すると思うのですが、どちらかといえば・・・といえば明白でしょう。そのため二番目の責任感を持ちやすいです。何かトラブルがあれば返金しなければなりません。無料の仕事にはないプレッシャーもありますね。

これは、お客様のほうにも重要な点となります。お金を払って診断してもらうことによって、「適当に」頼むことがなくなります。真剣に「何のために」診断を頼むか?を考えます。そして真剣に調査会社を選びます。これは、診断する側にとって非常にメリットとなります。真剣なお客様と向き合うからこそ、診断後も良い提案をしなければと思います。真剣に考えて頂いたからこそ、診断後やることも明確になっていることが多いのです。

行政のお仕事で、無料の簡易診断に行ったことがあります。無料だと聞いたから、とだけで申し込む人が確かにいました。もちろん真剣に悩んで申し込まれた方もいましたが、割合は有料の診断に比べたら明らかです。

以上より、私は耐震診断する側も、耐震診断を申し込む側も、有料の耐震診断をお勧めします。もちろん全ての方に当てはまるわけではないと思います。ただ、お金を払って耐震診断を私に申し込んでくださった方の期待にそえるように、日々研鑽を重ね、機材など設備投資をするのは当然のことだと思います。これからも申し込んで頂けるように頑張ってまいります。

サポートしてくださると嬉しいです。 部分的に気に入ってくださったら、気軽にシェアかコメントをお願いします♪