猫を引き取るために私は引越しをした。(1)
7月下旬、フォロワーが行きたがった猫カフェが休みだったため、検索で見つけた保護猫カフェに行った。
「首輪のある猫は引き取ることができます」
オーナーの説明は適当に聞いていた。
私は生き物を飼わないタイプだと自負していたし、他人事だった。
保護猫カフェの滞在は1時間だった。
帰りに坦々麺を食べてフォロワーと別れた。
その夜に、管理会社へ電話した。
「うち(賃貸)って猫、飼えますか?」と聞くためだ。
しかし営業終了のアナウンスが流れたため、やむなく翌朝イチでかけ直した。
「ダメですね」
そんな気はしていたよ。
そのままミニ●ニに電話をした。
「週明けに部屋探しに行きます。同市内、猫OKなとこで」
当日は結局、4社回って12件くらい候補出してもらって8箇所くらい内覧した。
すべての営業マンに「ネコのために…!?」って顔をされた。
そうだよ。
そうして9月中旬、私は猫と出会って1ヶ月半で引越した。
準備期間中、猫には2週間に1回は会いに行った。
一緒に遊んだフォロワーには「静かだったから気を使って付き合ってくれたのかと思っていたのに、こんなことになるとは思わなかった」と言われた。
そうね。
■
猫たちが可愛かったからなんでもいいから飼いたくなったわけじゃない。
その猫と暮らしたかった。
その猫はなんかもうむちゃくちゃ可愛かった。
可愛かったというか、可愛い(進行形)。
出会って3秒で、私は自分のチョロさを無表情で噛み締めていた。ごっつかわい。
こんな可愛い生き物いる?いたわ。
猫カフェに入ったとき、子猫が多くてその小ささが恐ろしかった。可愛いけど、壊してしまいそうで…(ポエム)
撫でたら骨と皮でふわふわで暖かくて、手のひらからこぼれる大きさのいのちが無防備に寝そべってる。尊い。
しばし子猫のはしゃぎっぷりを見て満足した私は、部屋の隅にあるキャットタワー横の椅子に座った。
横を向けば、タワーのてっぺんで丸くなって寝ている成猫が見える。
起こしちゃうなあと思いながら、なんとなく鼻先に手の甲を持っていった。
すんすんと鼻が動いた。
その子は目を開けて私を見ると、ごろんと寝返りを打って腹を見せてくれた(オスだった)。
そして私の手を舐めた。
ざりざりでビビった。
そのほんの数秒の間に、私は1ヶ月半後のヴィジョンを受信していた。
窓から差し込む陽光を、白と薄茶のからだできらきらと受け止めながら、その猫はおだやかだった。
私は自分の部屋で、その猫と暮らす風景を見た。強めの幻覚だ。人は狂うとき静かに狂うのだと思う。
そのイメージが頭から離れなくなって、猫を撫でながら予算の算出を始めていた。
今のマンションはペット可だったろうか?
ダメなら引越しか?
初期費用とランニングコストは?
てか飼育ってどうやる?
私に面倒が見られるのか?
基本料金内の1時間が終わるまでに、ギュンギュン考えていた。
難しいことだとわかっていたから、口にはあまり出さないようにした。
惜しんでしまうから猫の名前も聞かなかった。
坦々麺は辛くておいしかった。
猫のことばかり考えていた(一緒にいたフォロワーごめんね)
帰り道、写真を一枚も撮っていなくて、むちゃくちゃ後悔した。
フォロワーが写真を分けてくれた。いる!かわいい!
(左上にいる)
猫ロスがひどくてその4日後また足を運んだ。
まだ部屋も確定していないから、ただの客として行った。
つづく。