指を切って救急車で運ばれた日記
(めちゃくちゃ情けない日記。防げた事故であることを何より自分がわかっているので、そのへんのご指摘は勘弁してください。心がしおしお)
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人差し指の腹をね、切りました。
包丁で1cmくらい。
わたしの指って厚さ2cmないくらいだと思うんだけど。
▶︎ やわらかい野菜だから、豆腐みたいに手のひらで切っちゃえと思った。
はい、もうオチましたね。ヒヤリハットの典型例です。そしてヒヤリハットで済まなかった。
この日は引越ししてちょうど1週間目。
引越しの際にまな板と包丁を捨てていて、包丁は買えたけれどまな板をまだ買えていなかった。
そのため、私はしばしば平皿や手元で簡単なものを切っていた。
後悔先に立たずとはよく言ったもので、冷静に振り返ると完全にバカのやることなんだよな。
指どころか、手のひら丸ごと斧で叩いたみたいになってもおかしくはなかった。
ただのバカなんだよな……。
このあたりのくだりは特に愚かなのであまり思い出したくない。つらい。もう二度としません(懺悔)
▶︎ というわけで「あれ、野菜に刃が引っかかった…ちょっとだけ力入れて……アッ」
バカ〜〜〜〜〜〜。
ハッとした瞬間に野菜に刃が吸い込まれて「「「「「痛み」」」」」にオワッッてなって、包丁と野菜を置いて人差し指の腹を見たら真っ赤な液体がしゅワーーーーー。
血が指を包むように広がって、どう切れたのかもよく見えなかった。いや、横一文字にちょっと「ここから出てまーす」みたいな湧き上がり感はあったから察した。
シンクにぽたたたた。濡れたシンクの水膜を伝って赤い模様が広がる。抽象的なアニメのOP映像みたいだ。
とっさに水道で患部を洗い、親指で押さえて👌のポーズ。
数秒おろおろしてから、絆創膏をとってきてからシンクの上で指を離してみた。
「こんばんはーーー湧き水(血)でーーーす」
おわーーーーーーて思いながら再び水で洗い、サッと絆創膏をきつめに巻いた。
絆創膏のガーゼ部分が一瞬で真っ赤に。
ドゥワーーーーて隙間から血が漏れだす。
おわーーーーてビビって絆創膏を剥がし、また👌のポーズ。
しばらくただオロオロする。
👌のポーズしていれば血が流れないことがわかり、ちょっと冷静になる。
「待ってれば止まるかな…」と祈るように一旦イスに座る。
そしてフォロワーにLINEをうつ。
(パニクると近しい人にとりあえず連絡するのは人類共通なんだな…と思った)
そして心のどこかでは「こんなん押さえただけじゃ止まらんやつやぞ」とわかっていたように思う。
その手のことが相談できる人に電話した。
「1時間押さえても血が止まらなかったら救急車を呼んでください」
きゅ…救急車!?
夜間救急にタクシーで行けばいいやくらいで思っていたため、そんな大袈裟な……とキョドる。
▶︎ 1時間👌の指で考える人のポーズをした(患部を心臓より高い位置にするため)
案の定、血は止まらなかった。
1時間ほどして相談した人から「血、止まりました?」と連絡が来て、意を決してシンクの上で手を🖐にした。
「こんばんはーーー湧き水(血)でーーーす」
また👌で手を洗う。
本格的に「終わった」と思った。勢いが弱まってもいない。バカなことした…と後悔の念がはっきりしていく。
「血、止まりません…」と返信。
「救急車呼んでください。119です」
「自分で歩けるし、こんなことで救急車呼ぶの恥ずかしいです。救急にタクシーで行ってはダメですか?」
駄々をこねるわたし。
▶︎ 結局、119した。
「外科の先生が不在だと処置してもらえないし、そのへんがわかる救急車に任せたほうが良いです!」
数度の押し問答のあと、情けない顔で119に電話した。
119電話窓口の男性に「歩けるのにすみません、こんなことですみません」と謝り倒すわたし。
「ええ、ええ、呼ばれれば行くからね。ちなみに救急車の音は消せないからごめんね」と言われる。
近づいてくる救急車の音。ほんとすぐ来る。
すごいよ救急車。いのちすくうかたがた、いつもようわからんたにんのためにはたらいてくださってありがとうございます。
アーーー情けないーーーーーアーーーーーーーー〜〜〜〜。
念のためにマスクをして、財布だけトートバッグに詰めて、パジャマのまま玄関で情けなさにしゃがむ。
▶︎ 玄関扉を開けると救急隊員。
玄関先で軽く説明のやりとりと、患部見せたりして、「あーー……行こうか」救急車へ。
バックドアが開いた救急車。夜の闇の中でそこだけが明るい。
昔、道で倒れていた人のために呼んだときと同じ光景。でも今回乗り込むのはわたし。
そして、かたわらでは大家さんが玄関に立ってこちらの様子を見ている。
ア〜〜〜〜こんな夜中にお騒がせしてごめんなさい〜〜〜〜引越し7日で救急車を呼びましたが〜〜〜〜お部屋は汚してないです〜〜〜〜〜〜アーーーーーー!!!!!(泣)
そして自分で救急車に乗り込み、ストレッチャー?に寝そべる。
指から血がどぼどぼする危険があるので腹の上にタライを置かれた。
生体監視装置に繋がれ、揺れて危ないからとベルトで体を固定される。
意識もあるし、自分で歩けるし、ただ指の先っちょ切っただけなのにこのお騒がせ。オヨヨ…。
発車する前に患部をぐりぐり確認されて、どびゅ〜〜て血が出るのを見て「オンギャ……」と奇声を上げる。
見てしまった。
自分の指の断面の中にある、ただの肉じゃない部分。
そのときのわたしには何だかわからなかったけれど、救急隊員の会話を聞くに血管のようだった。
「動脈切れてる…? 血止まらない……これ一次(?)じゃ……二次(?)かな……」
なんやなんや、わからん。わからんけど、わたしがアホなことしてアホな怪我したことだけはわかる。
このへんの会話で、「自力で救急に行っていたらその病院では処置ができずにややこしくなっていたかもしれん」ということを察し、救急車を呼べと言ってくれた人は正しかったのだと感謝した。(追記:一次とか二次はあんまり関係なかったぽい)
とりあえずもうあとは病院運ばれて、縫うとかくっつけるとかされるだけや……ままよ……という心地で発車した揺れとピーポー音に身を委ねた。
その間に思うのは、「アルミホイルとキッチンペーパーを敷いてその上で切れば良かった」ということばかり。
そんなイージーな発想もできなかったのか。バカ。アンポンタン。
後悔先に立たず、ほんとにな。
▶︎ 「血管を焼く」という恐ろしい言葉にまた心をグチャってされる。
病院に着いた。
「自分の足で行ける?」と聞かれたから「はい」って答えたけれど、年配の救急隊員の方が「歩くたびにピュッピュッてなるからこのまま行こ」と提案し、そういうことになった。
意識もあるし、自分で歩けるし、ただ指の先っちょ切っただけなのに、ストレッチャーで救急に運び込まれ、診察台に2人がかりでヨイショって抱えて移してもらった。
オヨヨヨ……情けないよ……。
救急隊員から医師にバトンタッチ。
しばらく救急隊員の方もそばで見守ってくれた。本当にすみません。ありがとうございました。ロトとか当たってください。
患部を見る二人の医師。「あーーー」「はーーー」「うんーーー」
「血管を収縮させる薬で血が止まったら縫って終わりなんですが、止まらなかったら、血管を焼くことになりますね」
血管を……焼く………???????
なんだそれ。焼きゴテでも患部に突っ込まれるのか? 怖い。
ガチ引きした顔のわたしをよそに、患部を水で洗ったり、薬の染みたガーゼ?を何度か当てて様子を見たり、消毒したりする。
そして救急車の中で患部をいじくられてるときも思ったけど、あんまり痛みがない。
指はちゃんと動くから神経まで切ったわけではないと思う。不思議だった。
後から「アドレナリンのせいだ」と気づいた。
アドレナリン、すごい。ありがとう。
そんなこんなで、出血が弱まったから焼かなくても済みそうな感じになり、神と現代医療に感謝した。
「じゃ、縫うので麻酔の注射しますね。ちょっと痛いですよ、すみません」
まじでこれは痛かったわ。
アドレナリンも万能じゃなかった。
▶︎ そして部分麻酔がなかなか効かず、おしっこちびるかと思った。
指の根本に麻酔を打ち、しばらく待った後、釣り針みたいな細い針が患部にブスッといった。
「オギャ!ーーーーー!!!」
アニメみたいな奇声しかあげられない良い歳した女。そこもそこで恥じた方がいい。
いやでもまじでビックリしたの。ナマの感覚のまま針が刺さろうとしたから。
わたしがビビりすぎて医師の人もびっくりして立ち上がっちゃったよ。
二人組医師、交代してもう一度同じ場所に麻酔を注射してくれた。
リベンジ。
「……ォ゛ッ……!!!!!ギ……!!!!!」
ばか。手のひらで野菜切ろうとするからだよ。
医師のお兄さんもオロオロしてるよ。
自業自得なんだから縫う痛みくらい我慢しろっ。そう自分でも思うが、パニクりすぎて精神が3歳くらいになっているわたしは「痛いです…!ごめんなさい…!ハァ…ハヒ…!!」と、わめく。情けない。
指の裏側にもう2回麻酔注射してくれて、やっと指の感覚が消えた。
ありがとう、医師のお二方。
トゥーーーーーーて糸が通る他人事のような感触があるだけだった。
ありがとう、現代医療。
そうして4針縫った。
糸が生えたグロテスクな指に軟膏を塗り、ガーゼを巻き、フルーツに被せるネットみたいなやつでフィニッシュ。
▶︎ 静かなロビーで精算を待ち、自分でタクシーを呼んだ。
パジャマでタクシーに乗って帰宅した。
手持ちが3千円しかなかったけどクレカでなんとかなった。良かった。
良かないよ。
合計が諭吉だぞ。野菜を切って諭吉も切るな。
▶︎ 帰宅後のむなしさ。
指を切ったのが22時ごろ。
救急車呼んだのが23時ごろ。
帰宅したのは25時過ぎ。
Twitter見たらリプライがたくさん付いてて、誰も責めずに励ましてくれていた。フォロワー、やさしい。ありがとう。
猫を撫で、しょんぼりしながら眠った。
情けなくてなかなか寝付けなかった。
▶︎ 翌朝のむなしさ。
起きたときに左手でなんか触って痛みに「オワッッ!?」てなって昨夜のことを思い出す。
つらい。
今後一生、キャラが傷口縫う描写をするたびにこの日のことを思い出すんだ。
つらい。
次は抜糸もしなくちゃならない。縫って終わりじゃないのだ。
ばか……ばか……。
▶︎ みんな、包丁の扱いには気をつけてね。
バカなことをすると、バカなことが起きるよ。