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現代SF界の女王

第一回:コニー・ウィリス

 私がコニー・ウィリスに出会ったのは、3〜4年前だったと記憶している。なんとなく海外SF小説を読んでみたいと思っていた時期で(ミステリ小説に飽きていた頃)、確かSNSで「これを読んどけ!」みたいな特集で興味を持ったからだ。それで最初に読んだのが『ブラックアウト』と『オール・クリア/1・2』新☆ハヤカワ・SF・シリーズ/大森望=訳。
 これが、とんでもない長編で上巻(下巻に至っては2冊に分かれている!)二段組の700頁超え!下巻約500頁の2冊!全部で約1,700頁のとんでもないボリュームで、あまりの分厚さに手にした瞬間めまいを感じました。
 しかし、読み進めるとこれがとんでもなく面白く引き込まれるように、まさに頁をめくる指がとまらない状態になり一気に読了してしまった(これは個人差があります、体力が充実している時がオススメです)。
 このコロナ禍(2020年4月23日現在)で在宅率が高めでテレビに飽きたなら是非手にとってもらいたい本です。

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タイムトラベルもの

 この時知らなかったのですが、本書は未来のオックスフォード大学の史学生をテーマにした長編第三弾でした。それぞれ物語は単独で成立しているので、どれから読んでもOKだと思う。
 あらすじを記そう…

2060年、オックスフォード大学の史学生三人は、第二次大戦下のイギリスでの現地調査に送りだされた。メロピーは郊外の屋敷のメイドとして疎開児童を観察し、ポリーはデパートの売り子としてロンドン大空襲で灯火管制(ブラックアウト)のもとにある市民生活を体験し、マイクルはアメリカ人記者としてダンケルク撤退における民間人の英雄を探そうとしていた。ところが現地に到着した三人はそれぞれ思いもよらない事態に巻き込まれてしまう…

 題材はタイムトラベルですが、SF要素はそんなに描写されません。ネットと呼ばれる装置を用いて過去へタイムスリップできるということ、歴史の分岐点(重要な出来事)の時期には行くことが難しいことくらいです。SF小説ですが、過去の歴史を綴る歴史本であり当時の生活感を濃く表した風俗小説でもあります。
 学校で歴史を学ぶことが苦手だったが、本書でロンドン大空襲のV1、V2ロケットの恐ろしさやダンケルクなど知ることができた。2017年のクリストファー・ノーランの映画『ダンケルク』や、2014年の映画、エニグマの暗号解読を行い対独勝利に導いたアラン・チューリングを主人公にした『イミテーション・ゲーム』など、興味深く過去を知ることもできた。
 このように、本来なら未来を描くSF小説でありながら過去の歴史をテーマにした冒険小説を私は知らない。

基本は行ったり来たり、会いたいのに会えない…

 主人公の三人の史学生は、第二次大戦下のイギリスでトラブルに巻き込まれ悪戦苦闘します。ほとんどは行ったり来たり、会いたいのに会えないことばかりである。無茶苦茶イライラしますが、ラスト近くは壮大な伏線をすべて回収しながら不覚にも涙を禁じ得ない場面が続く。分厚いボリュームに泣かされながらも最後は全て報われる読書体験が待っている。
 どうか諦めないで最後まで読み進んでほしい。

魅力的な登場人物

 どの小説でもそうだろうが、登場人物が魅力的でないと面白さが半減してしまう。主人公のメロピー、ポリー、マイクル。ダンワージー教授(この人はシリーズ全部に出ているらしい)それに悪ガキのビニーとアルフ姉弟!この子どもたちの描写がコニー・ウィリスはとても上手だ。
 そして、それを取り巻く当時のイギリスの人々!どうか騙されたとおもって読んでみてください。

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