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#69 展示会スタッフ一年生・白丸みそ子の失敗

どう考えてもグッドライフにはほど遠い暮らしをしている白丸みそこさんは今、仕事の関係で東京ビッグサイトで行われている「グッドライフフェア2024」に参加している。

最近、とある企業のPRを手伝っているのだが、何がどうしてこうなったのか、今、派手なTシャツを着てイベント会場に立たされているのだ。
今年はどうも、こういう予定外・分野外の仕事をすることが多く、ライブのポスターやバナーデザインの仕事を受けたはずが、なぜかライブの物販までやることになり、気づいたら大声でDVDを叩き売っていた、なんてこともあった。
しかしまあ、わたしも四十代に入り、「人生はおよそ筋トレみたいなもんだ」と思っている節があるので、(ギャラさえもらえれば)不慣れな体力/対人能力を使う仕事であっても、筋肉とコミュ力を鍛える良い機会だと捉えて、出来るだけ手伝うようにしている。

今日の昼ごはん

一緒にPRに取り組んでいるTさんは、四十代半ばの男性。
もともとは大手町のIT系大手に勤め、今は静岡に古民家を買って家族で移り住み、在宅フリーランスでWEBコンサルなどをしているそうだ。
毒舌で時に偏見に満ちた発言をすることがあるけれど、非常に有能な方なので尊敬している。

で、展示会スタッフ経験がほぼゼロのわたしは、今回、Tさんに教えをこうことにした。

わたし「なんか、お客さんに話しかけるコツとかってあります?」
Tさん「まずは、首からぶら下げてる入場カード見て。『大人』って書いてあるのは一般のお客さんだから、あんまり熱心に売り込まなくていいよ。今回、うちのブースは現場販売してないから。興味を示した一般のお客さんには、さりげなくECサイトを教えてあげて」
わたし「なるほど…」
Tさん「で、『商社/仕入れ』のカードの人にはガツガツいっていいよ。僕がブースにいなければ、名刺も渡しといて」
わたし「はい。あと、あの『その他』ってカードかけてる人はなんなんですか?」
Tさん「あれは、入場料の1000円を一般客として支払いたくない人が、適当な名刺を出して入ったケースがほとんど」
わたし「なるほど…(だいぶ穿った見方だな…🙄)」

するとそこに、『大人(=一般客)』のカードをつけた熱心なお客さんが現れた。
彼はユーチューバーのぷろたん似のイケメンで、うちのブースのありとあらゆるチラシを取って去って行った。

わたし「今の人はなんなんですか? 一般のカード下げてたけど、かなり前のめりでしたよ?」
Tさん「あれは、ガジェット好き系、ただの一般客」
(※)我々はガジェット系商品を扱っている。
わたし「なるほど…」

それから5分後。
ぷろたん似の青年がまたブースに戻ってきた。
青年「あの…。このチラシに、マルチリモコンでエアコンの操作ができるって書いてあるけど、学習操作しないで、どういう仕組みでコントロールするんですか?」
わたし「あ…もしかして、ガジェット詳しい系の方ですか?」
青年「はい?」
わたし「あ…いえ…失礼しました。お詳しいなあと思いまして。はい…そちら、学習操作が必要です」
青年「ですよね。ここに書いてないな…と思って。わかりました。では」

去っていく青年。
Tさん「……おい、こら、白丸」
わたし「す、すみません…つい、Tさんからの学びをアウトプットしてしまいました…」
Tさん「お客さんにガジェット詳しい系って、絶対ダメだろ…カテゴライズするな」
わたし「ほんとすみません…。Tさんの読みが当たってたので、つい、興奮してしまいました…。き、気をつけます」

その後もTさんの偏見的教えは続き…。

わたし「あの人、『仕入れ』のカードつけてますよ。声かけます?」
Tさん「いや、いい」
わたし「なぜですか?」
Tさん「彼はベンチャー企業に勤めていて、上司に行ってこいっていわれただけだ。視線と動きで分かる。直帰出来るから、三時に会社を出て、今、終わりかけの四時半にここに着いたんだ」
わたし「見た目だけで、そ…そこまでわかるんですか?」
Tさん「なんなら、動線だってわかるよ。彼は、この一番小さい四角をくるっと回って帰るだろう。そして、関連しそうなブースで2〜3枚写真を撮って、上に報告するつもりだ」
わたし「へー…」

と、そんな感じで、展示会スタッフ一年生・白丸みそ子は、Tさんから偏見に満ちた来訪者観察術を学んで一日目が終了した。

明日は、失言に気をつけて丁寧に接客しようと思います…🙄

イベント終了後、現場にて。

つづく…


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