#53 とらやの羊羹の上納先
娘のベビ子、ただいま取引先のローカル企業で絶賛インターン中。
日本人が一人もいない会社なので、「ベビ子」「ベビちゃん」と呼ばれ、可愛がられているようだ。
果物やお菓子をもらったり、昼ご飯をご馳走されたりと、大変な人気ものっぷり。
帰りは、地下鉄で帰るように彼女の交通カードをチャージしたのだが、結局、誰かしらが車で送ってくれている。
で、その度に日本のお土産を持って降車地点へと挨拶に行くわたし。
ベビ子「今日は、母さんと、プロモーションビデオの撮影現場で一緒になったって人が送ってくれてる」
わたし「誰? メガネかけてる?」
ベビ子「かけてない」
わたし「ロッキー?」
※この会社のスタッフは全員中国人だが、なぜか英語名で呼び合っている
ベビ子「うーん、名前は忘れたけど、たぶんそうかなあ…」
ロッキーはベビ子がお世話になっている会社のナンバー3。
新規の仕事をもらいたい下心から、ラスいちのとらやの羊羹の袋に、化粧品や目薬などを詰め込んでベビ子を迎えに行くことにした。
チャーリー「みそ子! 久しぶり!」
わたし「あ(ロッキーじゃない)!」
チャーリー「ベビ子は本当に可愛いね」
わたし「ひ、久しぶり。送ってくれてありがとう。これ…」
引っ込めるわけにもいかず、高級土産セットをチャーリーに渡すわたし。
チャーリー「遠慮しなくていいのに。こんなにたくさんのお土産…ありがとう!」
帰り道。
わたし「…おい、ロッキーちゃうやん」
ベビ子「ごめん…。私の立場だと、お互いに名乗り合ったあと、相手を名前で呼ぶことはないから…」
わたし「チャーリーはロッキーの部下の部下なの。母さん渾身のゴマスリお土産セットがなくなったわ」
ベビ子「ごめん…。でも、チャーリー、ほんとにいい人だよ。私、彼の仕事に対する姿勢を尊敬してる」
わたし「わかる。素晴らしい人間性だよね。あんまりにいい人だから、独身の中国人女子紹介しようとしたら、彼女いるって言われたわ。というか、この会社のスタッフ、みんな人生十回目くらいなんだと思う」
ベビ子「そうそう。仕事黙々とこなすし、顧客だけじゃなくサプライヤーも大切にしてるし、スマートな人しかいない」
わたし「だから、ベンチャーなのに数年で業界ナンバーワンになれたんだろうね…」
翌日。
ベビ子「母さん! 今日こそロッキー! わざわざ私の席に挨拶にきてくれた。今からマンションまで送るって」
わたし「マジか…。ヤバいな…もうブラックサンダーと柿の種くらいしか渡せるお土産がないぞ…」
ベビ子「それ、所沢のお菓子のまちおかで買ったやつだよね…」
わたし「……チャーリー、羊羹返してくれないかな(ぼそっ)」
ベビ子「無理だよ!」
わたし「わかってるよ…。うわあああ…一体どうすればいいんだあああ…_:(´ཀ`」 ∠):」
ベビ子「冷蔵庫にロイズがある!」
わたし「それだ! エムオくんのお土産のつもりだったけど、エムオくんには、今回なしで!」
…
こうして毎日、ベビ子をサポートしてくれる人にお菓子を配り続けて、ついには渡せるものが一つもなくなってしまったのである。
ということで、中国にある日系スーパーへ、輸入のバカ高いお菓子を買いに行くわたしでしたとさ🙄
おわり
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