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余りもののスタンプ[短編]

まえがき

【スタンプあるある1】
LINEのスタンプって、買っても結局何個か使えないやつ、ありますよね。

【スタンプあるある2】
メッセージの流れで、「あ!オモシロ系使うタイミングきた!前に買ったはず!」と探すものの、「あ、あの時使わないだろうって思って結局買わなかったんだ…」ってなって、流れに乗り切れず、とりあえずありあわせの無難なやつを使ったりしちゃいますよね。

ではスタンプのちょっと切ない話、どうぞ。

余りもののスタンプ

学生と社会人の違いは、友達に「遊ぼ」と誘われるか、「飲みに行こ」と誘われるかだと思う。周りの友達は社会人になったとたん、一斉に「飲みに行こ」派になってしまった。なんとなく、お酒を飲む以外の楽しいことはもうできないのかと思ってしまう。

ただ一人、「遊ぼ」と言ってくる男友達がいる。その人のことが私は好きだ。「遊ぼ」と誘われて遊びに行って、結局集合すると飲むことになって、終電ぎりぎりまで話して、帰る。
とにかく波長が合うし、ユーモアがあるその人といると、楽しい。

「元カノの話していいよ。前から話は聞いてたけど、どんな雰囲気の人か知らないや、誰に似てるの?」
「めっちゃスタイルよくて、年上だけどなんか可愛い人だった」
「写真残ってないの?」

彼は元カノと別れたばかりだ。彼が撮った元カノの写真は、写真映えもしないようなスマホのデフォルトのカメラアプリで撮ったもので別に特段上手いわけでもないのに、フィルターをかけたみたいにきらきらしていた。もれなく彼女は可愛かった。

こんなのを見せられたら、まだ言えない。お酒が入ったって、言えやしない。

月に1回会っているのに、帰ったあと、いまだに『今日はありがとう』とLINEをくれる。そして、そのあとには必ず何かのスタンプをつけてくる。毎回違うスタンプを送ってくる、そんなところも好きだ。
今日はふとキャラクターの名前が気になって、スタンプをタップしてみた。
ラインナップは以下の通り。
・好き!
・大好き!
・ぎゅー!
・愛してる!
・がんばれ!
・よしよし
・電話しよう!
・会いたい
・おつかれさま!

この人は彼女のことが好きで、大好きで、愛していて、抱きしめて、応援して、慰めて、声が聞きたい存在だったんだなあ、そう思うと泣けた。彼女には「遊ぼ」じゃなくて、「会いたい」って誘ってたんだなあ、と悟ってしまって、もっと泣けてきた。
アニメーション付きなのが余計につらい。

私も、「おつかれさま!」とスタンプを押した。



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