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【読書の秋2021】遠慮深いうたた寝

陶器のようなその本は、私の手を易々と誘いさそ、最初の2ページを立ち読みさせ、
そのままレジへと誘いいざなました。

小川洋子さんの9年ぶりとなるエッセイ


ほしまるさんのジャケ買いの記事を読んだ時、私は本をジャケット買いしている可能性が高い!と思いました。
だって、まだ読んでいる途中の本があるのに、本屋さんで気にいると、ついつい買ってしまうんです。



ということでつい先日手にした「遠慮深いうたた寝」

この本には小川洋子さんの約80本のエッセイが収録されています。
一つ一つの作品に、小川洋子さんの世界観が満載に詰まっているため、私はそこから出て行くことができませんでした。

エッセイなので、日常や時事問題など、親近感があるものから壮大なものまで色々。

(ネタバレしない程度に。)

私の心を射止めた最初のエッセイのタイトルが

「集会、胆石、告白」です。

スーパーの帰り道に出会ったおしゃれなお嬢さんたちの会話から。

「・・・・・うん、例の集会・・・・とてつもない胆石・・・・告白されたわ」

この一行を読んでしまってはこの先どうなるのか、知らずにはいられません。

エッセイの難しいところは、すごい出来事でも、なんでもない出来事でも、単純に面白おかしく書くわけではなくて、その切り取った一片をどうやったら主役級の文章に作り上がることができるか、ということなのではないかと、思うのです。

「集会、胆石、告白」

ここから何が生まれて、どう締め括られるのか、
読者を引きつけ、さらに、惹きつける。

そんなことができるから、ベストセラー作家さんになるのですよね。

小川洋子さんは「私だけの王国」というノートを持っているそうです。
詳細は本で読んで欲しいのですが、

気になった出来事などをそのノートに書き留めていらっしゃって、
何かの折に読み返されたりしているとのこと。

そのページを読んだ時

「私と同じ!」

とちょっと嬉しくなりました。


小川洋子さんの小説も、豊かで、穏やかで、そして遠い物語の中でのお話ではなくて、誰にでも起こり得る、誰もが感じることができる光景がそこにはあって、だから抱きしめたくなってしまうのです。


この本は宝物です。9年かけて様々なところで書かれたエッセイの集まりです。
元気がない時も、元気な時も、ページを開けば自然とその世界に入り込んでいきます。

その証拠に、昨日美容室に行った帰り、バスで読んでいて、読むのをやめたくなくて
そのまま終点まで行くことにしたのでした。

その後は山手線をグルグルと、、、

とはしませんでしたが、

カフェでお昼をとりながら、読み終えました。

こうして、昨日まで読んでいた本を一時停止した私は、
この本に寄り道して、
読み終えて、
noteの記事に感想を書いて、
満足して

昨日まで読んでいた本を無事再スタートすることができました。


あとがきを読んでわかったのですが、陶器のようなこの本のデザインは、デザイナーの方と陶版画家の方が手掛けられたと書かれていました。

どうしたらこのセンスが生まれるのか、

本当に素敵です。

アーティスティックな部分も、この本のおかげで

少しだけ、

センスも磨くことができたような


気がします。


#読書の秋2021

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