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共同親権について考えてみる

ニュースで「共同親権導入の改正案が衆議院で通過した」という記事を見ました。まさか本当に通るとは。


色んなニュースを見て、正直に言うと「私がこの時代の子どもじゃなくて良かった」と思っています。


私は母子家庭で育ちました。
まだひとり親世帯に今ほどの手厚い保護が無い頃です。
それでも母は私を連れて家を出て、離婚しました。
親権は母が勝ち取りました。調停で全力で私のために戦って。
そのことを私は今でも感謝しているし、母の覚悟がなければ今の私は無かったと思っています。


父の家業はいわゆる寺社仏閣というやつでした。

祖母はとても厳しく古い考えの人で、当時働いていた母に結婚するにあたり退職するように口酸っぱく言い続けたそうです。おそらく自分の代わりに息子の家業を支える術を叩き込みたかったというのもあるでしょう。

母は頑なに拒否し、仕事を続けました。
そんな嫁姑の関係が良いわけもなく、幼いながらに母にきつく当たる祖母の声や、2人がいる空間の空気の重さを鮮明に覚えています。
まだ3歳とかそれぐらいです。それでも覚えているもんです子どもは。

父は、正直記憶にありません。
声も顔も一緒に過ごした記憶も、なにひとつ。
母曰く「味方にはなってくれなかった」そうです。
祖母の肩を表立って持つ訳ではないけれど、母の味方にもなってくれなかった。仮にも自分の奥さんなのに。
要するに祖母の傀儡で、私の父でも母の夫でもなかったということです。


子どもは、大人が思っているよりも周りを見ています。
私もそうだった。
あの家にいる時の空気の重苦しさは本当に嫌だったし、私の行動は祖母に管理され、しつけも厳しくてまるで牢屋みたいに感じていました。

だからある日突然母と2人暮らしになった時も悲しさなんてひとつもなくて、むしろ視界が晴れたように鮮やかな記憶ばかりが残っています。
ああ、あそこから出られたんだな、と思えた。


離婚が成立したのは家を出て結構経ってからだったそうです。
理由はひとつ、私の親権を父も母も譲らなかったから。
今でも思うのは、おそらく親権を譲りたくなかったのは祖母だったんだと思います。だって父が私を可愛がってくれた記憶も、一緒に過ごした記憶も無い。そんな人が私の親権を取りたがるでしょうか?
つまり「家業の跡継ぎ」として一人娘の私を手放したくなかったのでしょう。

母は調停に持ち込み、弁護士さんを味方につけ、全力で戦ってくれました。
慰謝料もいらない、財産分与もいらない、何もいらないから娘だけは絶対に自分が育てる、と主張し続けたそうです。
当時は精神的にかなり辛かったそうですが、私のことを思えば全然苦じゃなかったと今でも言ってくれます。本当に自慢の母です。

そして、調停の末についに母は私の親権と、成人するまでの養育費の支払いを向こうに認めさせたのです。
養育費といっても月に1万円とかだったと思います。安っ。
それでも「払わない人も多いのにお父さんはちゃんと最後まで振り込んでくれたのよ」と父のことを悪く言わない母は本当に凄いと思います。
というか振り込まない人いるのか…という気持ちですが。

それからは母と2人で、楽しいことも辛いことも沢山乗り越えながら、自分がやりたいことを思い切り経験して今に至っています。

では、仮に父に親権が渡っていたらどうなっていたか。
おそらくですが一人娘の私は、跡継ぎとして父と同じように寺社仏閣系の高校と大学に進み、家業を手伝いながらそのうち祖母が見繕った相手を婿養子にして跡継ぎを生むレールの上を歩かされていたと思います。

あと、夏休みに家族でディズニーランドに行くとか、休みの日に宝塚を観に行くとか、友達とサマースクールに行くとか、そういった経験はあの家では不可能に近かった。
加えて、看護の道に進むこともおそらく良しとされなかったでしょう。
だって家業を継ぐから。
それくらいあの家と、祖母の圧は強かったんです。

で、今の「共同親権」に話は戻ります。
仮にあの頃共同親権が存在していれば、祖母は確実に共同親権を主張していたでしょう。そして進学先にも意見してきたでしょうし、家業の行事に参加させられていたかもしれない。

想像しただけでゾッとします。

あと、ニュースを見ていてずっと思っているのは「肝心の子どもの権利はどこにあるんだろう?」ということです。

母は私が10歳になるかならないかの頃に「子どもの権利条約」があることを教えてくれ、子ども用のパンフレットも読ませてくれました。


なるほど、私は子どもだけどちゃんと人権があって、子どもだけど選ぶ自由があるのだと知れたのは大きかった。
もちろん未成年のうちは親の承諾が必要なことも多いけれど、それでも私の意思が尊重されるというのはとても大切なことです。

その子どもの立場からの目線がどうも見当たらないなぁ、というのがシンプルに不思議です。
私の経験から言えば、離婚するほどの家庭環境って本当に不安定だしギリギリなんです。子どもだってそれくらい分かるし覚えています。
だからこそやっと離婚して解放されたのに「共同親権」なぞ行使されて両親それぞれの思惑の間で振り回されるなんてまっぴらごめんな訳です。
ちょっと主観が入りすぎかもしれませんが。

どうか今回のことでつらい思いをする子どもが増えませんように、と願うばかりです。どうなることやら…


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