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奄美大島のクロウサギに会いに

奄美大島は九州と沖縄の中間にある亜熱帯の南国の島である。美しいビーチは勿論のこと、島内には原始の自然も残され、東洋のガラパゴスとも言われるほどである。島のシンボルとも言えるのが特別天然記念物に指定されているアマミノクロウサギである。野生のクロウサギや貴重な生物たちに会いに行こうと思い、奄美大島を訪ねた。(2019年7月訪問)

ナイトツアー

山中に住む夜行性のクロウサギを見るにはガイド付きのナイトツアーが安全確実である。奄美の夜の山はハブが怖い。今回は奄美ナイトツアーサービスさんのツアーに参加することにした。

早めにメールで予約して、当日は住用町にある道の駅、黒潮の森マングローブパークの休憩所に20時集合と伝えられた。集合時間になり、ツアー参加者みんなでジープの荷台に乗って出発する。予定時間はおよそ2〜3時間。参加メンバーは家族連れなど合わせて10名ほどで、子供たちはこれから始まる体験に興奮気味で賑やかである。

昼間は暑かったが、日が暮れると山の中は涼しくなり過ごしやすい。真っ暗になった国道を少し走ってから旧道に入る。まもなく曲がりくねった峠道に差し掛かり、期待も高まる。ガイドさんは車を進めながら、器用に懐中ライトで周囲を探していく。クロウサギは移動範囲が狭く、巣の位置も全て把握しているので、たやすく姿を見つけられるそうだ。

なお、夜間はハブが活動する時間帯で、道端に潜んでいる可能性もあり、安全が確認されない場所では車から絶対に降りないよう注意を受けた。荷台からは視界が効くので、わざわざ降りないでも十分に観察は可能である。

アマミノクロウサギに対面

山道に入り10分ほどで、横の斜面にクロウサギがいると言われて、みんな一斉にカメラを向ける。光を当てられても余り逃げないので、写真は比較的撮りやすい。逃げるときも、ウサギにしてはのんびりした動きで、こんな動きでは野良猫に捕まってしまうのもよくわかる。

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ガイドさんはクロウサギの生態や様々な話をしながら車を進めて、次々にウサギを見つけていく。一時はハブ退治に放たれたマングースがハブを襲わず、クロウサギを捕食してしまったそうだ。しかし、その後、マングースは必死に捕らえられて、今では激減したらしい。最近は野良猫がクロウサギを襲うこともあるそうだ。

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クロウサギのほかにも、道に出て来たケナガネズミも見ることができた。このネズミも天然記念物指定の絶滅危惧種である。ほかにリュウキュウイノシシの姿も見ることが出来た。こういった動物たちを見れるのも詳しいガイド付きのツアーならではである。

アマミハナサキガエル

この森には貴重なカエルも多いそうで、有名なのはアマミイシカワガエルというカエルで、日本で最も美しいと言われるそうだが、今回は残念ながら見つからなかった。その代わりに、アマミハナサキガエルを見つけた。これも天然記念物指定の貴重なカエルである。ライトに光る緑色の光沢が美しい。

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アマミヤマシギなど

鳥類も貴重なものが多く、今回のツアー参加メンバーでアマミヤマシギを見たいという方が居たので、それを探してガイドさんはかなり奥まで車を進めた。未舗装のでこぼこの山道では上下に大きく揺すられ、荷台ではちょっと辛い。

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 やっとの思いで見つけたが、距離が遠く写真は上手く撮れなかった。また、道の上の電線にはルリカケスやリュウキュウアカショウビンも見えた。色鮮やかな鳥は昼間に見たいものだが、夜に眠っている状態の方が見つけ易いかも知れない。

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最後に

何匹ものクロウサギを見れただけでなく、ほかの貴重な野生生物を何種類も見れたことは感動した。この貴重な自然はこれからも維持して欲しい。この先、奄美が世界自然遺産になったら観光客が増えるだろうが、今回のようなナイトツアーはキャパシティが少なく、多くの客が押し寄せると対応が難しそうだ。奄美の自然の貴重さを伝えるのは意義あることだが、観光と保護の両立が課題だろう。一度失ってしまうと元の自然は容易に取り戻せるものではない。場合によっては立ち入り人数制限してでも、環境は保護しつつ、奄美の自然の良さが広く知られると良いと思う。



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