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ヘンゼルとグレーテルと魔女 その後

 ヘンゼルとグレーテルは継母に森の奥に捨てられ、森の中でお菓子の家を見つけ、まんまと魔女の思惑に引っ掛かり食べられそうになりましたが、魔女をパン釜の炎の中に入れ、燃やしてしまいました。そして金品を奪って自力で実家に帰ったのです。
 実家に帰ったところ、もう以前の意地悪な継母はおらず、父は二人の帰りを心から喜びました。
 三人は暫くは幸せに暮らしていました。
 しかし、また父はそのうち別の女を家に連れ込むようになり、そのうち魔女から奪った金品も底をつきました。
 仕事をしたくても、仕事自体が周りにありません。
 ヘンゼルは意を決し、国兵に志願し、異国に出兵しました。
 グレーテルはヘンゼルがいなくなってからと言うもの、家に居場所が無くなり、毎日森の奥へ行っては泣いていました。
「へっへっへ、小娘何を泣いているんだい?」
「きゃあ!何であなた生きてるの!」
 自分が殺したハズの魔女が目の前にいて、グレーテルは心底恐れおののき、その場で尻餅を付きました。
「ひっひっひ、私はね昔は王にだって使えていた凄い魔女なんだよ!」
「だだから何なのよ!今は寂しい独り者でしょ!?」
 グレーテルは腰が抜けたまま、魔女に喧嘩を売りました。
「お前さん、思ってた以上に良い根性してるよ。どうだい?私の弟子になって魔法を覚えないかい?」
 グレーテルの身体の中からさっきまでの焦りが失せ、何かをひらめいたような感覚を得ました。
「私を食べる気はないの?」
「お前は、直ぐ食べてしまうより、労力としてずっと使う方が有効さ。」
 こうしてグレーテルと魔女はお菓子の家で一緒に暮らすようになりました。
 魔女が最初グレーテルに教えたのはケーキ作りでした。
「お菓子作りは列記とした錬金術だ。卵を泡立て、小麦を繋ぎにして火で焼くなんて、一般家庭から生れる発想じゃない。」
 そう教えられた時もしかしたら、最初にケーキを広めたのはこの魔女だったのかも知れないと、何となくグレーテルは感じました。
 グレーテルはそうしてお菓子の家で暮らしながら、結婚をし子どもも持つ様になりました。
 その内、ヘンゼルも異国から無事帰還しました。
「グレーテルお前、私よりもうずっと強い魔女だ。私を倒し、ここから離れようと思わないのか?」
「何を言ってるんですか、貴女は私の母で、ここは私のスイートホームですよ。」
 魔女はある朝。
 三階建てになった自分のお菓子の家を見上げ、「いとおかし」と言ってから亡くなりましたとさ。

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