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エッセイ+川柳「ドーナツ」

子どもの頃によく聴いた、ミスタードーナツの店内で流れていた山下達郎さんの歌。この歌のタイトルが「ドーナツ・ソング」であることを知ったのは最近のこと。この歌を菅田将暉さんがカバーしているのをテレビCMで聴いたのがきっかけで、この歌のタイトルを初めて知ったのだった。

子どもの頃、この歌を初めて聴いた時、洒落た歌だなあ、と思った。それ以来、山下達郎さんといえば「ドーナツ・ソング」を先ず思い浮かべる。と同時に、菅田将暉さんの歌う「ドーナツ・ソング」も好きだ。思いは熱く、しかしシンプルで軽やかで、遊び心のあるこの歌と、山下達郎さん、菅田将暉さんの歌声はとてもよく合っている、と思う。

子どもの頃、ミスドで、色々なドーナツがある中、選ぶのはいつもシュガーレイズドかオールドファッションだった。チョコレートが苦手(今は苦手ではない)で、生クリームもカスタードも苦手ではないができれば入っていない方がよくて、そうなると選ぶのは一番シンプルなドーナツである、シュガーレイズドかオールドファッション。チョコレートや生クリームやカスタードが入ったドーナツも好んで食べるようになった今でも、シュガーレイズドとオールドファッションが特に好きだ。

ドーナツの並ぶショーケースの前で、子どもの頃の私はなぜか、自分が選ばなかったドーナツのことがいつも気になっていた。気になっていた、だけで、それ以上具体的に何かを思ったり考えたりはしなかった。選んだものと選ばなかったものについて思いを馳せる。そういう時間が今も、ミスドでもミスド以外の場所でも、時々ある。

創作に携わるようになってから、リングドーナツの穴のことが気になるようになった。存在するということについて、ドーナツの穴を見ながら私はぼんやりと考える。もしかしたら、私の中にも、ドーナツの穴があるのかもしれない。

最近、ドーナツを食べていない。

ドーナツの穴に入れるのは一人

/白水ま衣

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