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 女、女、女だ。たくさんの女を知った。いや、一人として知らなかった。通りを歩いていると女が目に入った。目の中を女が歩いていった。女の歩き去る後ろ姿を目で追った。女はつねに遮蔽されていた。何によってかはわからなかった。どの女が本物の女なのか、偽物の女なのかわからなかった。視界の両端を女が横切っていった。視界の両端以外の部分には何も存在しなかった。男ですらも。寝ても覚めても女だ。今日は女の日なのだ。目に入るすべてのものが女への通路だった。虚無でさえも。吐き気がした。腹の底から、気分の悪くなるような空気の塊が、内蔵を圧迫しつつせり上がってきた。

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