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持続可能な関係性【裏お題:プールの紅トーナメント #毎週ショートショートnote】

 20世紀半ば、ドラキュラ伯爵は窮地に立っていた。自身を取り上げた小説が人間界で大ヒットして弱点が露呈したからだ。

 もうじきこの身体は朽ち果てる。せめて最後に赤い液体に身を溺れさせたい。夕焼けで真っ赤に染まったプールに入水しようと決めた伯爵は飼いならしてある新聞社の社長に『プールの紅トーナメント』を開催させた。

 さすがはヨーロッパ屈指のカメラマンたちだ。まばゆいばかりの写真が並ぶ。厳正な審査の末、ギリシャのサントリーニ島を最後の地とした。

 しかし不運の連鎖に巻き込まれると抜け出すのは容易ではない。建造物侵入罪の疑いで逮捕されてしまったのだ。

 警察官に事情を話すと憐みの表情を浮かべている。一連の報道がなされると、かつては脅威だったとはいえ不憫な境遇に世間から同情的な声が上がり始めた。そこで使用期限の切れた輸血パックが提供されることとなり、伯爵は今も生き永らえている。この逸話が基となり、SDGsの理念が生まれた。


おしまい。(410字)


■ 時代考証

◇ ドラキュラ伯爵

 ブラム・ストーカーのホラー小説『吸血鬼ドラキュラ』(1897年)に登場。トランシルヴァニアの貴族で吸血鬼であるドラキュラ伯爵はイギリスに渡り、目をつけた女性の生き血を吸う。日ごとに衰弱していく原因を吸血鬼の仕業と見破ったエイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授がドラキュラ伯爵を討ち果たす物語が展開される。

◇ カラー写真

 最初のカラー写真は1861年にトーマス・サットンが撮影。レオポルド・マンズとレオポルド・ゴドウスキが、1935年に「トライパック」カラーフィルムを発明し、コダックやポラロイドといった会社が使うようになる。しかし、カラー写真が人気を博すようになるまでには数十年を要した。

◇ 輸血

 1937年にシカゴの病院で血液銀行が設立された。これをきっかけに近代輸血方式が確立されるに至り、第2次世界大戦では多くの傷病兵の命が救われた。

 こういったことから時代を20世紀半ばに設定しました。取るに足らないショートショートではありますが、いちおうネットに公開しますので多少気にかけてみました。

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