深井しろ

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【短編】白昼夢

すうっと、やさしく私の長い髪に指先を通す。目の前にある彼の瞳は、愛おしく自分の子供を見ているようにも見えた。 いつもはあるはずの左手薬指の指輪も、私を気遣っているのか、それとも独身のフリでもしているのか。私に会う日は決まってつけていない。 私の前でだけは、言わずとも、わたしが一番だと思わせてくれるような優しい眼差しで私を見つめるし、逞しい腕で私を力いっぱいに抱き、壊れ物でも扱うかのように優しく指先を這わすものだから、私は何度もこの関係をやめようとしたのに、また何度もやり直

    • 【短編】貴方が私を嫌いになるよりも、私が貴方を好きでなくなることのほうがずっと怖かった。

      “好き”って、なんだっけ。 そう友達が哲学的思考を展開する度、にわたしはこう答えた。 “好になりたい”とか、“好きでいたい”とか、そういうことじゃないかな。 わたしは、今側にいる彼のことを“好きになりたい”と思いながら彼に愛を伝えてきたし、“好きでいたい”と思っているから、恋人になってからも何度となく「好き」だと伝えていた。 だけど、その“好きでいたい”も、いつまで維持するのか。維持できるのか。それが問題だった。 恋愛感情って、賞味期限あったんだっけ。 本当に優し

      • 幸せな人生を生きていく方法。

        そんな方法って、あると思いますか? きっと誰もが一度くらいは“幸せになるための選択”を自分に迫ることがあったのではないかと思います。 仕事や恋愛、趣味、お金のこと。家族のこと。あらゆる場面で選択を迫られる日々を繰り返すなかで、“幸せな人生を生きていくため”に一体私は何を選択するのか。 “この人となら結婚しても幸せになれそう” “この職場で働いていて私は幸せに過ごしていけるのか” “どれだけのお金を貯蓄すれば将来幸せに暮らせるのか” いつも何故か先を見据えて、“幸せ

        • 「ずっと独身でいるつもり?」

          「ずっと独身でいるつもり?」これに似たような言葉を、まるで矢でも刺すように未婚の方に言い放つ人は少なくない。 矢を刺した本人はまるで悪気はない。矢を刺した事にも気づかない。何故なら、本人は間違ったことを言っているとは全く思っていないからだ。人々は、当然の事のように。決まりごとのように。独身である人には、この決まり文句を投げ掛けている。 独身でいることが、そんなにも悪いこと? これじゃあ、独身でいることは道を外れていることみたいでは? この有り難くもありながら余計なお