合理化と温泉の2023年
「合理化」は、「理由づけがあり、誰もが納得する様にムダを省くこと」「効率化」は、「とにかく作業のムダをなくして、生産性を高めること」
だそうですが、合理化をいかに進めた年だったのではないかと思います。
屋上温泉タンク新設
高付加価値化補助金活用して、過去の物干し場に屋根を付けて物干し場の風呂。アルターユをつくった。
・・・でもこの工事の肝は、屋上に温泉タンクを設置すること。
御所坊の外観写真だが左上の高架水槽が気になる。
高架水槽は水道水をいったん受水槽に入れて、ポンプで建物の一番高い所に設置してある高架水槽にあげて、高低差を利用して館内のあちこちに水道水を供給する。高架水槽は日光に照らされているので、年に一回高架水槽の洗浄と水質検査を行っている。もちろん費用も発生する。
直圧式に替えるようになった。つまり受水槽から直接館内に水道水を直接送るようにする。この工事を行った。
そうすると高架水槽は不要になり撤去できる。
撤去できるが屋上は高架水槽の重量に耐えられるようにつくられている。そこに温泉タンクを置けばよいやん!という事を考えた。
有馬の街は傾斜状になっている。御所泉源の所の高さと置こうとする温泉タンクとは高低差がほとんどない。設置可能だ。
という事で、温泉タンクを設置した。
この事により配管さえすれば、御所坊の館内のどこにでも温泉を送ることは可能になった。
まず物干し場の温泉アルターユと、偲豊庵の外に温泉の露天風呂を設置し、そこに現在温泉を供給している。
器の基尺つくり推進
料理の提供の合理化を進めていて、最先端の厨房機器を導入し、料理を提供する際の器もつくるようにしている。
つまり会席料理10品を提供する際に、料理を盛り合わせするなどして提供回数を半分にすれば、確実に提供時間は短縮される。
その為に複数の料理を同時に提供できる器が必要になる。
たまたま30㎝角の器をつくった。この器を4つや9つに分けて提供する場合。なかなか合う大きさの食器がない。そこで器を元に食器のサイズを定めることにした。
おもちゃの積み木の世界では“基尺”とよばれるサイズが存在する。基尺が同じだと、違うメーカーの積み木も同時に使用して遊ぶことができる。
食器の場合も同様で組み合わせて使いやすくなる。
器が決まると、食事を提供するうえで必要な大きさが決まる。それが決まればテーブルの大きさが決まる。
しかし、食器を運ぶための脇取りも少し大きさを変える必要がある。
つまりオリジナルのサイズでつくってもらう必要がある。
こんなことをさらに進めるために、春先に有田に行った。
レジオネラ菌問題
有田に行こうとした時に、有田の近くの温泉旅館でレジオネラ菌対策で保健所に虚偽報告をして炎上している旅館があった。そこに泊まろうと思ったけど、知り合いに止められた。
予約をキャンセルしてしばらくして、そこの主人は自殺された。
なんとなく複雑。
レジオネラ菌という菌はどこにでも存在して、入浴する人が浴槽に持ち込む。保健所が定めた菌数以下だと安全で、以上だと危ないかというとそうでもないように思う。
安全を追求するなら薬剤風呂にするしかない!
しかし…何か良い策はないだろうか?
有馬の名泉を活かして、保健所も納得せざるを得ない風呂がつくれないか!?
それがこの一年の課題だった。
蒸し風呂考
温泉は循環回路を設けずに、毎日換水できれば良い。
その為に掃除しやすい浴槽に形状を変えて、源泉100%は妥協しなければいけないが、水と混ぜて温度を適温にして浴槽を満たせば良い。
あとは従来の様に温度が冷めれば、熱い源泉を注いだらよい。
高温の温泉タンクを調べたが、レジオネラ菌は存在していなかった。
問題は“白湯”と呼んでいる水を沸かした浴槽。濃度の濃い有馬の湯に入った後に流す為に存在している。
現在シャワーがある。白湯は不要ではないかと思った!
循環回路を使用して適温にしている白湯はリスキーでプラス要素はないんじゃないかな?
でも、その白湯のスペースをどうするか!?
白湯の浴槽を囲って、そこに熱い源泉を注いで、その上にスノコを設けて蒸し風呂にしたら、保健所はどう言うか聞いてみた。
温度が高いので菌が存在しないので殺菌は不要だという。
だったら蒸し風呂をつくろう!
年末、湯屋松風の貸切風呂の一つを改修した。
年末年始のお客様に利用してもらって感想を聞き、その上で、2024年は御所坊関係の浴槽すべてに導入しようと考えている。
SDGs
浴槽に循環回路を設けないという事は、機器が不要、ろ過機も不要、という事はメンテナンス費用やランニングコストも不要。
薬剤がいらないという事は・・・多くの薬剤は酸化剤なので機器やタイルの目地を痛める。
蒸し風呂上だと浴槽を湯で満たす必要がない、ボイラーの使用も少ないから省エネ!
カーボンフリーに近づける。
そこで年末に神戸市の産業振興財団の協力を得て、ひょうご産業SDGsの取り組みのゴールドステージを取得する為のアドバイスを受けるようにした。
何故?ゴールドかというと、今回の蒸し風呂のような取り組みをゴールドステージを取得しないと発信できないからだ。
発信したらどうなるか?
それなりのメリットはあるのではないかと思っている。
有馬の温泉
コロナ期間中に有馬の温泉の湧きだす仕組みがネイチャーレポートに掲載された。最近有馬の温泉の特殊性について取材が増えた。
それはそれで良いのだが、バックアップ泉源が必要だ。その為の泉源を関西電力保養所後の神戸市所有の土地に確保したいのだけど、なかなかうまくいかない。
その様な中、有馬の温泉の将来について分析する先生が現れた。話を聞くと納得ができる。しかし先生は学会に発表する為に、事前に周知させるのは難しいが、我々には教えてくれる。だからあらかじめ手を打たなければいけないのだが、これも嫉妬や行政の垣根でうまくいかない。
これも何とかしなければいけない。2024年に積み残しだ。
グリスロ
グリーンスローモービルの略、要はスピードの出ない電気自動車を運行するというもの。
導入の為の資金のめどは立っているけど、行政の壁というか解釈の仕方で、歩みが遅い。これも2024年何とかしないといけない。
理想はツェルマットの様にホテルの送迎車などは電気自動車で埋まること。そして日帰り観光客もその車に乗れて瑞宝寺公園やロープウェーに行ければよい。
でも・・・行政との話は我々が考える合理性だけでは合わない時がある。
それを痛感した2023年だった。
そして2024年
Super Suite Room
3室の小さな部屋をつぶして、スイートルームを1室作る。
それを6室つぶして2室にしてしまった。
all or nothing の博打だったが、2023年は正解だった。
料金は小さい部屋の3倍以上だが評判は良い。
そこで2024年は客室として稼働していな部屋を使用してスーパースイートルームをつくろうと考えている。
価格は現在のスイートの1.5倍か2倍は頂戴しなければならないが、維持メンテナンスなどはスイートルームの倍以上はかかりそうだ。
しかし現在はデッドスペースに近いので、売れたら儲けものという価格設定は出来る。
さあどうなるか?
でも今後の有馬の国際化を考えれば、そのような部屋があっても良いのではないかと思っている。
厨房器具のハイテク化
旅館のロボット化は難しいが、ハイテク厨房器具を多用して「見て覚えろ!」から温度や時間のデジタル化を推進して厨房の能力を向上させる手はあると思い。推進してきているが、2024年はさらに進めていきたいと思っている。
料理を出すと器を洗わなければならない。
よく聞いてみると各旅館は色々な策を講じているようだ。
例えば夕食の食器は専用の保管庫を設けて、保管し朝に洗う。
一定の時間までは食器を洗い場に下げない。
つまり洗い場係の時間を決めているのだろう。
今回、ラウンド型の食器洗浄機を導入しようと考えている。
しかし1.200万円を超える。
現在3人のスタッフが3時間、朝晩合わせて6時間ぐらいかかっているので、延べ18時間
これが4時間で出来れば、14時間。年間5110時間で、時間給1200円だと年間約600万浮くという計算になる。
単純計算で言うと2年が元が取れると思う。
実際はモノづくり補助金に採択されているので、機器の購入に関して半額助成されるので、1年間で元が取れる計算になる。
歴史がテーマの浴場
2023年末に完成した蒸し風呂は、有馬発見の三羽のカラスと湯屋の皇后に関連して薬師如来。
2024年に入ってもう一つの貸切風呂は“有馬千軒”と呼ばれた江戸中期に有馬が繫栄した時代。湯女をテーマに展開したい。
そして御所坊や花小宿の浴場にも蒸し風呂を導入したのだが、世界唯一の温泉と有馬の歴史をリンクして紹介することで、単に入浴するだけでなく温泉文化として提供したい。
日本温泉協会は日本の温泉文化をユネスコの無形文化財に登録しようと進めているので、その一助にでもなれたらと思っている。
でも御所坊や花小宿の浴場はどうするか?
まあそのうちアイデアが湧くだろう。