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塀の外の懲りない面々・・・

罪を憎んで人を憎まず。という言葉がある。塀の中に入った人が出てきて社会の中に溶け込むことが出来れば再犯率が低くなる。
その人達を支援する協力雇用主という制度がある。

京都祇園のお茶屋

「京都に行きましょう!」とある人に誘われた。新神戸で待ち合わせして行った先が京都のお茶屋。芸子さんたちとは有馬では日常なので、大して驚かなかったが踊りを見ながら食事を楽しんだ。その後、お茶屋のBARにも行った。帰りはタクシーで有馬まで送ってもらった。

その時頼まれたのが協力雇用主の会の会長になれという話。以来15年ぐらい勤めているのかな?

その間、何人か塀の外に出て来た人の面倒を見た。

さすがに首にしたやつ

神戸大学出で、神戸の有名企業に勤めていた。ところが配置転換で仕事が合わずに酒を飲むようになったそうだ。仕事中でも飲んでいたようで、そうなるとさすがにぐわいが悪い。会社を首になったのだ。

どんな罪を犯したかというと、コンビニで万引きを繰り返したそうだ。酎ハイが好きで金がないから盗んだそうだ。

会って話をすると頑張りますというが、ある時は眼鏡にヒビが入って出社する。転んだというが飲んで転んだんだろう。

「アルコールを飲むと吐き気をするような薬があるんじゃないの?」というと本人は体質的に薬を飲んでも平気だという。

奥さんや高校生の息子がいるのだが、旅館業は平日が休みになる。そうすると家に誰もいないから、つい酎ハイを飲み過ぎてしまうらしい。

「休みの時も働いたら? 高校生の息子がバイトしている事にするから、息子に小遣いやったら良いやんか!」と言ったら、嫌だという。

とうとう昼休みに路地裏で酒を飲んでいるという従業員からタレコミが入った。さすがに面倒見れない。保護司さんに連絡して首にした。

半年ほどたって「あいつどうしていますか?」と聞くと、アル中で死んでしまったそうだ。酒で人生狂ったし、家族は早く死んでくれて助かったのかな?

パンツ泥棒

罪を憎まずと言っても、うちで受け入れられない人たちがいる。窃盗犯と性犯罪者。これらは治らないそうだ。そうそう薬中もだめだ。

女子高校からパンツを盗んで捕まった奴が面接に来た。熊本の何だったかな?東海大かどこかで稲の研究をしていたそうだ。そして農業機器関連の販売の仕事をしていたそうだ。

兵庫県の北の小代の農業法人だと役に立つかもしれないと考えた。
そこで彼を小代まで連れて行った。

もちろん僕の事だから女子高に忍び込んでパンツをとる方法を根掘り葉掘り聞いたのはゆうまでもない(笑)。
彼が高校ぐらいからやっていて10年間ぐらい捕まらなかったのが不思議だ。

もうしないというがあてにならない。彼に「ばあさんのパンツには興味があるか?」と聞くと、さすがに無いと言っていた。
小代には若い子がいないからね(笑)

小代のスタッフに合わせて飯を食わせて泊めて、翌日昼飯をおごって・・・
「まあ無理に来いとは言わない。よう考えて自分で決めて!」と別れた。

二三日して「やっぱり止めます。親が『お前には無理だ』というのです。」と言ってきた。親は関西の製薬会社のえらいさん。夫婦で勤めている。
まあ親がこんなんだったら、また繰り返して、また塀の中に戻るのだろうなあと思った。

とんずら証明書

保護司さんが40そこそこの不細工なおばさんを連れて来た。金がないという。もちろん住むところもない。旅館だと寮があるだろうし、布団もあるだろうから面倒見てくれという。

しゃあないなあ。まずは茶碗洗いでもさせるかと考えた。そして一円もないとさすがに生活は出来ないだろう。こんな奴を雇ったのは僕の責任だ。そこで彼女に「金がないと困るだろう。だから僕が1日に付き2000円貸し付ける。毎日仕事が終わったら取りにおいで・・・」と言った。

それから半月ほどたって「彼女がトンずらしました!」とスタッフが言ってきた。そして給料を払ったので、僕が貸した金が返ってこない。

部屋は漫画の本と缶ビールの空き缶で汚れている。制服もほったらかし。

彼女を連れて来た保護司に文句を言った。というのは多くの場合、迷惑を掛けられたら保証される。またそういう人を雇うとわずかだがご褒美ももらえる。ところが彼女の場合は該当しないという。

スタッフには笑われるし、行かれこれ!

後日見つかったが、女性の場合は駆け込み寺の様な施設がある。そこに入ると保護司さんでも手が出せないそうだ。

畜生!と悶々とした日々が過ぎて、ある時彼女の入っている施設から「離職票が欲しい」という連絡が入った。
「とんずら証明書だと発行するよ!」と突き返した。何度かやり取りがあって、トンずらされて怒っている理由を説明した。
すると施設の方は彼女に払わせますので・・・と言ってきた。

もちろん僕の貸した金も、部屋の掃除代も、制服のクリーニング代も請求したら、ちゃんと金を振り込んできた。

要するに彼女は施設から出たかったんだろう。施設の中では好きな漫画を読んだり缶ビールは飲めないから、独り立ちをしたい。その為には離職票がいる。だからお金を返したという事だと思うが、また同じように金を使ってしまって、無銭飲食や軽犯罪で捕まるんだろうなあと思った。

殺人犯の方がまし

実は殺人を犯した人を雇用した事がある。ちゃきちゃきの元気なおばちゃん。でもさすがに14年間務所暮らしだとおとなしくなっていたんだろうなあ。殺人と言ってもやむにやまなくて犯す事がある。その場合は再犯率は無いと言って良い。
元気なおばちゃんだけに、一息ついたら、もっと自分を活かせる職場に変わったんだ。それはそれで良かったと思う。

足を洗った反社の人は、兵庫県警が身元保証してくれる。それはそれで人それぞれだが、良い人は良い。

まあこんな事もやっているという話。

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