見出し画像

巨頭オ 総集


博士は、世界的に有名な生物学者だった。
彼は自然界の謎と奇妙な現象に興味を持っており、その中でも特に巨頭オという名前の存在に強く惹かれていた。オは伝説的な生き物で、人型なのだが人間では有り得ないほどの巨大な頭部と、驚異的な知覚能力を持っていると言われている。
博士は巨頭オの研究を始めた当初から、その存在に関する情報収集に没頭していた。彼は世界中の文献を探し、民間伝承や目撃証言を集め、巨頭オの秘密を解き明かす手がかりを求めていたが、オの謎はますます深まるばかりで博士は追求の過程で次第に自分自身を迷い込ませてしまっていた。

日本には禁足地と呼ばれる場所が幾つか存在する。
禁足地とは、風習や信仰も含めて安易に深入りしてはいけない場所である。
ある日の朝、博士は"オ"の情報を求め四国の山奥の禁足地に足を踏み入れていた。
人が通った痕跡なんてない程生い茂った草木をかき分けて進んだ先。
そこは日本国内とは思えないほど、とても鮮やかで、空気も澄んでいた。
もう少し足を進めると、とても大きな祠が見えてきた。
何十年も人の手が加わってないと分かる程苔むしていた。
信憑性のない与太話だがこの場所に"オ"の手がかりがあるという。
祠の中を覗いてみるとそこには大量の人骨があった。

祠の中で大量の人骨が積み重なっている異様な光景に、博士は驚愕すると同時に恐怖心が芽生えていた。しかし博士は、深呼吸をして祠の中に足を踏み入れる。この中にオの手がかりがあるかもしれないのだ。
人骨の山のある場所の向こう側に更に奥の方に進むための階段があったので、博士は迷わずそれを進んでいく。
暫くすると、人骨が積まれていた場所よりも広い空間が現れた。
その中央には巨大な石像があり、それはまるで伝説の巨頭オの姿を模しているようだった。

巨大な石像に見惚れていると、背後に立っている生物に気が付かなかった。
気がつくと薄暗い場所にいた。
地面は硬く、冷たい。
祠の中の洞窟の様な場所だろう。
おそらく意識が無くなった後、ここに運ばれたのだろう。
洞窟内に汚い咀嚼音が響いている。
目が覚めてから2分ほど経っただろうか、朦朧としていた意識がしっかりとした。
目もだいぶ暗闇に慣れ、辺りが視える様になった。
咀嚼音がする方に目を向けるとそこには”オ”と思われる生物が食事をしていた。
食べられているのは特徴から推測するに、おそらく人間である。
祠の入り口にあった大量の人骨は”オ”の食事の残骸だったのだ。
”オ”の姿をよく見てみると奇形なのは頭部だけで、それ以外は普通の人間と変わりはない。
博士は”オ”の正体が少し解った気がした。
博士は少し前に見た古い文献を思い出した。
かつて四国の山の奥には、食人文化が存在していたことを。


博士は困っていた。
研究の息抜きで書き始めた小説だったが、最初は筆が乗っていて順調に書き進めていたもののどう完結させようか全く考えずに書いていたのだ。
世界的に有名な生物学者だろうと、小説執筆に関しては所詮素人。休憩を始めてからかなり時間もたったことだし、博士は小説を書くのは諦めることにした。

それよりも明日は、“オ”の研究の為に四国の山奥へ向かう予定なのだ。その準備をするべく、博士は自室に戻って行った。


「巨頭オ」の総集編になります。
次回からはまた新しいお題になるのでお楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?