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濡れた狂犬 総集

埼玉県のとある民家の片隅で泣いている犬がいた。
躰は傷だらけで生傷もあれば古傷もある。
五体満足なのが信じれないほどの傷である。
数年ほど前にあるミスを犯してついた傷である。
その犬は、傷だらけの体を抱えて長い間、孤独な時間を過ごしていた。
自分の体を静かにながめながら、ひっそりと過去の出来事を思い出す。
傷は体だけでなく、犬の心にも深く刻まれていた。
今は野良犬となり、隠れられそうな場所でヒソヒソと暮らしている俺だが、数年前ミスを犯すまでは普通の飼い犬だった。
両手足が凍つきそうな日の朝、俺は一家のお父さんと散歩に行った。
戦時中の戦闘機の弾痕が残っている鉄橋、見慣れた街路、今はシャッター街となった商店街。
いつもの散歩道。 のはずだった。
住宅街に入り少し進んだ先、急に路地裏に入った。
そこにはガタイのいい男がいた。
顔は帽子を被っていて解らない。
しかし服を着ていてもわかる程の筋骨隆々具合。

「あい・・ば・?」
「き・・けん」
「ぐ・・あ・りろく・・・まんえ・・」
「じ・・ぐらむも・う」
「ま・・あり、すこ・・・てろ・じ・・まんだ」

はっきりと聞こえなかったが、取引の様だ。
お父さんは分厚い茶封筒を男に渡し、白い粉を貰っていた。
そのあとは何も無かった様に帰路についた。
次の日の朝、お父さんはいつも通り仕事に行っていたが、帰りが遅かった。毎日まっすぐ家に帰ってくるお父さんがこんなに遅くなるのは珍しいことだった。そして、家に帰ってきたお父さんは異様に落ち着いていて、まるで別人のようだった。
あの取引があった日以来、お父さんは1人で出掛けることが多くなった。一緒に散歩に行くこともなくなり、なんだか別人のように変わってしまったお父さんに段々と近づくことが少なくなっていった。
俺はお父さんが出掛けるたびに、あの粉を貰っているということを知っていたが、気付かないふりをし続けた。
段々と帰りが遅くなっていったお父さんは、いつしか帰ってこなくなった。
僕は吠え続けた。
雨の日も風の日も。
僕の遠吠えはお父さんに届くだろうか。
「わんわん わん わん」
「お母さん!なんであの人雨の中犬の真似してるの?」
「見ちゃダメ!」
「警部、あれは最近流行りの」
「ああ、麻薬だな」


総集編です!
8月20日はこの作品の+αを投稿します。

8月21日には新しい題材で小説を執筆します。
お楽しみに!!

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