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ベーシックインカムがむき出しにする、『マズローのどの欲求に比重を置くか』という個人の価値観

 イギリスで、ベーシックインカムが社会的にどのような影響を及ぼすのか実験が行われるとニュースで聞いた。ベーシックインカムとは、ざっくりというと毎月無条件で最低限の所得が配布される制度である。
 月額1,600ポンド、日本円に換算すると28万円弱が支給されるらしい。

 イギリスの物価をいまいち把握していない私だが、日本よりやや高めと考えると確かに暮しには困らなさそうな金額である。なんなら新卒の時の私の手取りの方が断然に安い。

 さて、ここで議論の一つとなるのが「お金に困らない条件下で、人は働くのか」という命題である。

 もう、これを言っちゃおしまい感があるが、働く人もいれば働かない人もいるでしょ、としか思えない。
 宝くじで余生がギリギリ送れる程度の賞が当たった時、貯金を切り崩して生きる勢、より増やすために投資信託や株やらを購入し配当で暮らす勢もいれば、やりたいことがあったから全てのお金で起業してやる勢もいるだろう。
 結局のところ、自分が何に比重を置いているのかが試されるのが、最低限の収入の保証=ベーシックインカム制度の導入だと思うのだ。

 基本的にベーシックインカムのない世界では、まず生きるためにお金を稼がなければいけない。そしてその稼ぐ手段に幸せを感じるかといったらYESと答える人もNOと答える人もいるだろう。

 アメリカの心理学者マズローは、人間の欲求を5つに分けて理論化した。生きていくために必要な生理的欲求、安心・安全な暮らしを欲する安全欲求、友人や家庭、または会社から認められたい社会的欲求、他社からの尊敬を求める承認欲求、あるべき自分になっていると充実する自己実現欲求である。

 この欲求5段階説を最初に聞いたのは、確か高校一年生の時だったと思う。
 今でもひねくれているが、当時もひねくれていた私は「自己実現欲求」をかなえられる大人になろう、と思えなかった。
 いくらなんでも多すぎだろう、全部コンプリートしている人間なんているの?が、正直な第一印象であって、未だにその気持ちをぬぐえない。

 最低限の衣食住に安全を確立されて、友人や家族や会社に認められ、社会的にも尊重されてさらになりたい自分になっている。
 注文が多すぎる料理店過ぎる。

 なんなら社会的欲求が満たされている人がいること自体、信じられない。
だって、自分の中で適度な友人に囲まれ、円満な家庭を維持し、さらに会社から自分のことを評価される。これ、普通に難しくない?私だけが能力低いのか?なんなら家庭つくるところらへんから難しいけれど。なんて、思ってしまう。

 さて、私の悲しい人間関係の話になりそうなので、ベーシックインカムの導入についてもう一度考えてみよう。

 安心・安全とは、もちろん国や地域によるものも多いだろう。
 しかし、ベーシックインカムの導入により貧困者層が少なくなれば治安は良くなるはずだ。暴言かもしれないがそこはいったん許してほしい。
 となると、生理的欲求、安心・安全欲求は満たされるはずだ。
 さてここから、どうしますか?と、問われているのが、そのベーシックインカム導入後における人々の行動だろう。

 承認欲求とは何だ?
 社会的地位を得ることなのか?それは富と関係するのか?思い付きで言っているが、何ももうからない趣味の世界で名声を得るというのも承認欲求だろう。
 自己実現欲求とは何だ?
 そもそも、なりたい自分とは何だ?2兆円もっているじぶんか?いつも明るくポジティブでいる自分か?なりたい自分はぼんやりと思い描くことはできるが、私の中でそれってもはや別人だなと思ってしまう。
 明るくてくよくよ悩まないで、余裕がないときも友人や家族を励まし、大好きな仕事で収入を得ている自分。
 最後は実現したいところではあるが、前半部分は違う人間だ。ロボトミー手術されたとしか思えない。

 そもそもこの二つが無くて社会的欲求で満たされる人も多いだろうし、それが満たされそうにないから、会社へ行きたくないという人もいるだろう。友人・家庭は別として、会社に常時認められて評価されることは難しい。
 上司に怒られる方が嫌というひともいるだろうし、自分への評価と会社からの評価の食い違いに悩む人もいるだろう。だから、もういっそ引きこもってやろう、みたいな人もいるはずである。

 いろいろと蛇足ばかり述べてきたが、自身の欲求の重きに従って、収入を得ようとする人もいれば引きこもる人もいるだろうし、お金とは縁遠い世界でサクセスしようとする人もいるだろう。

 逆に、ベーシックインカムの導入から、ようやく自分が大切としている価値観が現れるのではないのだろうか。
 そしてそれは、マズローの自己実現欲求のための社会奉仕でないことも多いと思う。

 ちなみに私は、延々と文字を書き続けるだろう。
 それが私の最大の趣味で暇つぶしで承認欲求で自己実現欲求ぽい何かなのだ。

 しかし、その書き物で炎上した場合には、絶対怒られたくないでござる教の私は後悔しまくってお布団から出られない超引きこもりになるかもしれない。

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