【ピリカ文庫】可逆性セレナーデ弍號機
深夜だと言うのに、コインランドリーには人がいた。
四車線の大通りに面したガラス張りの店内、中央のベンチに女性が一人座っている。洗濯が終わるのを待っているのだろう、傍らに大きな袋を置き、スマートフォンで動画を見ているようだった。
この時間なら誰もいない、と高を括っていたところ、失敗した。今から他の店舗に行こうにも、時間がかかる。何より外は雨。入ってきた扉側、無数の水滴が張り付いた全面ガラスを見やり、これ以上は勘弁、と心が折れた。
仕方がない。やるしかない。
私は濡れた傘