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掌編小説

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2022年6月の記事一覧

【掌編】若輩アリス、新橋にて。

「飲みに行きましょう」と国見さんに誘われ、新橋に来ている。 対面の二人席。店内は僕ら同様、仕事帰りのサラリーマンで賑わっていた。 「では」 お通しと共に運ばれたビールジョッキを掲げ、国見さんが乾杯を促す。慌てて自分の分を持ち上げ、お疲れさまです、とそれを合わせた。 国見さんは、この春の異動先にいた古株だ。若輩者の僕なので、総括課長として部を切り盛りする彼から、何かにつけフォローを受けている。が、こうして飲みに誘われたのは、初めてのことだ。 「どうですか、最近は」