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蔡康永監督に人生相談する、試訳

元の動画はこちら⇒微博、金世佳30岁的对话之对谈蔡康永

2017年、二年間、何もしなかった金世佳、30歳の自分の人生、仕事、未来に充満する迷い。彼は出演した「吃吃的愛」の監督・蔡康永氏に人生相談をした。

金世佳:はい(入室)10分、10分遅刻、待たせてしまいました。仕事は少し後にしてください。
蔡康永:外で何かしていたの?
(金世佳はほてった顔で首にタオルをかけている)
金:外はとても暑いです。すごく暑い。・・・実は私のマネージャーが来て、上海で舞台劇のリハーサルをやってるときにわざわざ来て、わざわざだから何かと聞いたんです。そしたら彼は「いくつかの企画を勧めたけれど去年は何もしなかったから、露出もないし、話題になって盛り上がることもなかった。だから、監督は金世佳をとても好きだと言うかもしれないけど、プロデューサーはもっと安心できる人がいいと思っていて、もっと話題性のある人を選ぶだろう」って。それを言いにわざわざ私のところに来たんです。それで、行動を変えるべきだと言うんです。いわゆる人気のある人がするようなことをしたほうがいいって。いや、実際のところどう思うか訊きたいだけなんですが、私はそうするべきでしょうか?
蔡:名声への道
金:それだからと言って、有名になるために今って嘘をついたり誤魔化したり、人目をひくような何かをしたりするじゃないですか。皆が自分に注目するのではなくて、そうするように仕向ける。・・・と言うのも、私がずっと学んできたのは演技のパフォーマンスで、有名になるノウハウを学んだわけじゃないから。
蔡:うん。
金:だから知らないんです。
蔡:嘘つき、ごまかし、人目をひくことはそもそもショービジネス界の核心だよ。舞台の演技だって嘘だし、偽物だし、人目を引くことだろう? なぜアプローチを変えるのがそんなに難しいの?

金:ずっと金世佳は金世佳だと感じていて、でも、例えば扣子(映画「吃吃的愛」のキャラ)を演じるし、田漢(舞台劇「狂飙」のキャラ)を演じる。扣子であり、田漢でもある。扣子と田漢は嘘を言うけど、金世佳は嘘を言えない。
蔡:大衆の前の金世佳と、本当のリアル人生を生きてる金世佳はまったく別人かもしれない。でも、君がプライベートで知ってる蔡康永と、同じように大衆が私を知ってると思う?
金:でもあなたは役者ではないし。
蔡:そうだね。だからもし、役者なら大衆の前での自分のキャラを設定する資格があると思う。だからそもそも注目を集めるための嘘や偽りを排除する理由はないよ。役者であろうとなかろうと、それはまったく正直なものだと思う。完全な正直というのはどの時代でもそうだ。誠実さは過度に神聖化された美徳だよ。だから警戒心を解けば金世佳がやりたい事は何なのか自ずとわかってくるさ。役者になって一番の喜びは、多くの人に見てもらえることではないのか?そうだとしたら、何が人気になるだろうか?もっと多くの人に知られて、注目されることを追求するべきではないのかな?
金:なら、まずどうしたらいいですか?
蔡:君の第一歩はすでにとても巧く行ってる。良い役者だ。これは私が思うところだけれど、最初のステップについて言うと、演技に関して君のプロ能力はもう達成されている。その上、錦に花を飾ろうというなら、より多くの人に認められるようになるもっとも下品な方法のアドバイスをするよ。君にはゴシップが要るね。(金、目をそらして笑う)前の作品で一緒だったけれど、君を裏切るようなことは一つもなかっただろう?仕事場で君と一緒にいて、誰かに紹介するのは私には荷が重い。良い役者だとしか紹介できないよ。この三文字(好演員)はとてもドライに聞こえる。まるで昆虫の標本のようだ。だから、それ以上になにか、果汁のようなジューシーなものが欲しい。私や他の人に金世佳を思い出させるような。つまり言いたいことは、彼は誰と一緒にいたかっていうことは容易に人の記憶を呼び起こすものなんだ。
金:そういうこと?
蔡:真面目に言ってるよ。
金:それなら初めから間違えてるし、その後もまったく違う道に行ってしまった。
蔡:まあ、ともかく恋愛が要るよ。ただ過去の恋愛対象はゴシップになるほどではなかったから、今度はゴシップになりそうな人を探すべきだよ。
金:大スター。
蔡:できることなら、君も大スターである必要が。(二人とも笑う)君を観察してると、できないことではないよ。ただわからないのは、何故他の役者と同じ芝居に出て、多少なりとも火花を散らすこともできるのに君はまるで絶縁体のようなんだ?
金:・・・。
蔡:君はゴムタイヤか?
金:それはつまり・・・。
蔡:良い役者だからってあんな燃えるような感情はないよ、君が劇中のキャラクターに恋をしたときのような。君のために相手がその感情を呼び起こす必要があるのかい?恋愛の感情を呼び起こすが早いか、すぐに引かなくていい。プロットが必要とするよりも少しだけ長く、一か月、一週間、長くすればいい。
金:まず、恋に落ちる女性スターを見つけなければ、、、

蔡:あまり君を困らせないようにするよ。もっと自然体で、次に誰かと一緒に仕事をする機会がある時、彼女に対して好奇心を維持できる?相手に好奇心を抱かせて、私とあなたの関係はどうなっているの?みたいな曖昧な感じ。
金:(笑う)マジで言ってます?
蔡:真面目さ。どうしてテキトーなことが言えるの?君が私を訪ねてきたのだもの。当然真面目さ。どう?これを邪道だと思う?
金:少し啓発して芸術の道を勇敢に前進する自信を与えてくれるだろうと期待してきたのに。
蔡:誰が君に芸術の道を進むように求めるの?
金:女性スターとの恋愛を勧めるけど、誰かと曖昧な関係にあったら、自分はそれを公言できませんよ。(苦笑)

蔡:そう思う。君はすでにスキルを持っているけど、良い監督から評価されなかったり、あるいはプロデューサーから「知名度がイマイチ」「固定客の規模がイマイチ」と言われているんだろうね。私もとても残念思うよ。注目されないアーティストをたくさん見てきたし、君を同じ目に遭わせたくない。それに実際の話、君が好きなたくさんの役者の話をするとき、感情は抑制されずに、意識的にロックしている感じもない。ハリウッド俳優は優秀な人が多いし、恋愛遍歴はちょっと豊富だ。どうして僧侶のような禁欲さで人と競うことを避けて、スターになれるの?私は君がスター路線に切り替えてくれるほうが良いね。純粋なる役者を目指すよりも。スターになろうというなら、君の生活は人の好奇心をそそるものでないといけない。それに、ちょっと聞いてすぐわかる話も必要だ。君の芸術を追求する話は、他の人は聞いてもわからないよ。
金:それで、生き甲斐があまり無いんです。
蔡:プライベートでは無感情で嫌な奴でもいいけど、そのキャラクターを一般大衆に晒すのは良い考えとは言えないね。演技が巧いと設定されているだけなら、AIロボットと一緒だ。
金:例えば金城武。彼も出てきませんよね。
蔡:うん。だけど、彼は多くの幻想を引き起こす。君が幻想を引き起こすなら金城武みたいに世捨て人的隠居ができる。例えば常に誰かの幻想を誘発する、それならそれでいいだろう。それに金城武にだってゴシップはあるよ。

金:その女性スターとのゴシップを除いて。これがプランAならほかにプランBはありませんか?
蔡:プランB。つまり男性スターと?ハハハ…(二人して笑う)あるいは女性監督、女性ディレクター、女性の富豪。君には別の誠実さを培うという手もあると思うよ。きっともっと適切なアドバイスを提供しましょう。私からするとけっこう多くのことが大して重要ではないね。人が君を「誠実で勤勉な人」といったところで、そのさき、それが何と言うこともないのさ。
金:撮影中に思ったんだけど、皆が自分の味方だと感じたんです。それからほとんどの人が現実と向き合えと言ってくれて。
蔡:それから?
金:手放すべきだと。
蔡:芸術へのこだわり?
金:そう。
蔡:それから、大衆的人気ドラマに出演するように?!
金:そう。彼らは、チャンスを得るには認められる必要があるかもしれない、と。けど、自分としては承認への道中で、ただ他人に認められることだけを求めているうちに、なりたくない人間に自分がなるのではないかって、いつも感じていて。実際、人に知られるようになって、もう以前の自分と同じではなかったし。
蔡:うん。

金:この道で自信が持てないんです。ずっとこうしていられるのか?
蔡:そもそも何がそれほど貴重なの?忠実であり続けようとするそれは。
金:はい。(*この時の表情はとても良い。照れと落ち着きの笑み 10分10秒あたり)
蔡:だいたい君は幾つなの?五歳?それとも15歳?25歳?どれが本来の君なんだね?人生はとどまることなく流動する河の流れのようなものだ。一秒ごとに本来の君ではないし、そもそもの自分という幻想に囚われているのではないかな。もし8歳の自分を懐かしく思うなら帰って甘いお菓子でも食べればいい、それから次に私に会ったときに「そもそも君は 何歳なのか?」答えられなければ、そもそもの君(原来的你あるいは我)の四文字で誤魔化すなよ。
金:はい、わかりました。
蔡:だけど、彼(昔のそもそもの君)は未来の君を知らないよ。9歳の君、55歳の君、65歳の君を彼は知らない。
金:今すごく思う。30歳を過ぎてホントに感じます。自分の一年を予測できない、その先どんな様子になるか。十年一日のように暮らしている人もいるのに。でも自分はまったく見当もつかない。一年前、自分が一年撮影しないなんて思いもしなかった。
蔡:そもそもやりたくなかったことは何?十年後も同じように見える人たちも、彼らはおそらく君が思っているようには暮らしていないだろうよ。
金:若い頃はそんなことは関係ないと思って、またやり直せばいいと思っていたけれど、今は不安、不安しかありません。
蔡:不安は絶対に必要さ。安全を追求しちゃダメだ。
金:ずっと、薄氷を踏む思いです。
蔡:必要さ。ずっと薄氷を踏む感じが必要。そして時々は氷の下に落ちることもある。
金:また這い上がる。
蔡:だいたい君はコンクリートの上を行くとか電車のように敷かれたレールに乗って行くのは望まないだろう?

金:時々ほかの人はなぜ頑張らず努力もせず何もしないで簡単にできてしまうのか、不思議になります。自分は何をするにしてもとても疲れる。どうして無理してやらなきゃいけないのか…。
蔡:でもそれは君が羨ましく思うのとは、別の人たちでしょう?
金:そんなことないですよ。
蔡:そうなの?なら、彼らを片付けなきゃ。
金:くたびれる。
蔡:疲れないと面白くない?。(疲れるほどでないなら、大したことはできない?)横になっているのはとても良いよ。君、一日中ゴロゴロしてテレビを見たりスナック菓子を食べたりして過ごしてみたら?
金:やったことないです。
蔡:うん。一度試してみるといいよ。ハハハ。三時間くらいで疲れたと思うだろうよ。つまり、つまらないっていうのは、つまらないと疲れるから、疲れるような人生を送るのはやめような。
金:はい。

吃吃的愛ポスター、2017年公開


蔡:ちょっと疲れてくると、世界が平和になるのが怖いとかいうけど、何事も無いようになんて考えなくて良いと思うんだ。(アニメ映画の)功夫パンダの師匠が言う通りさ。内在的平和、内在的平和。内在的平和。功夫パンダには内在の平和が無くて、それを求めてずっと自分に挑戦し続けるんだ。そしてずっと奇怪な困難と闘うんだ、あれは。思うに君の今の歩みはとても良いよ。なにかしらの仕事を選んで、それがとても厄介な仕事なわけだ。
金:ずっと…今言われたようなこと、つまり自分でなければできないというかけがえのない感覚を望んできました。で、自分に対する要求、役者としての要求は、自分にしか演じられないもので、そのキャラクターは脚本家でさえ、私をモデルに書きたがるようなもので、そうなら探していたのはこれだ!って思えるかもしれない。今求めてるのはそんな感じで。…北京に来た当初は多くの選択肢の中から選ばせてもらったけど、今は選んでもいないんです。
蔡:いやいや、私は君をピックアップしたよ。私も違う、私が撮った映画も違う、無名のどこの馬の骨か知れない奴が君を選べば大きな肯定感なの? あの頃、君と争っていた他の人たちも同じようだった。彼らの名前もリストに並んでいた。たくさんの人が君を好きなんだから、そんなに卑下するなよ。それに、若い頃とか言うなよ、まだ若いし幻想は要らない。成長して、もう大人なんだから。
金:うん。
蔡:見た事ないかな?アルパチーノ。彼が何歳か知ってる?芝居ではとても活き活きして見える。彼らは70~80才だよ。でも今、まだ40~50代の俳優のように感じさせる。命を燃やす俳優は年齢にまったく負けないんだ。ピーター・オトゥールを知ってるかどうか知らないけど、アラビアのロレンスを演じた男性俳優で、彼は白髪の年代で亡くなったけど、魅力的生命力にあふれていたよ。だからまず、年齢のことは心配いらない。それから役者にはそれぞれ年輪があるんだ。外側からは見えない、樹木の年輪のようで、君の内側でしか育たないんだ。だからさ、君がするべき唯一のことは良い作品を選んで演じることさ。ノーと言うたびにイエスと言わなければならない。これは君がやってないことだ。20本の台本が目の前にある、10本にノーと言い、10本にイエスと言わなければならない、理想の究極の台本が来るのを待ち続けてはいけないよ。手元にある2本の脚本を検討して、これはダメだからそっちにしよう、と。でもその台本が別の台本と一緒に来ることもある。そのどちらかを選ばなければならない。その一つ一つが君の100点満点水準に達してないからダメだというわけにはいかない。60点より70点のほうが高い。70点を選ぶ。これが一歩一歩自分を高めるのに必要なことだよ。
金:うん。

吃吃的愛


蔡:私が君のマネージャーなら、この70点の台本が60点の台本に勝るポイントの一つは、70点の台本がより多くの人に見られるかどうか、だ。この点で私なら10点満点をつけるね。似たような欠点のある脚本でも多くの人が見れば10ポイントあがる。だから選ぶべきは、それ。観られることを選ばなければいけない。金世佳は見られるほどの特別な存在なんだ。二度とやるなよ。あの一面髭面の、君だとわかる人がいないような。次がもしあったらスターウォーズのダースベイダーじゃダメだ。ルーク・スカイウォーカーを演じなければ!と言うべきなんだ。顔がちゃんとわかる役だ。ロードオブザリングでゴラムを演じようなんて欲張ってはいけないよ。何故こういうキャラを言うか。これは私のアドバイスで、見られると、君の様子(外見)がとても良い、見られるべきだ。舞台劇と映画なら映画、舞台劇と連続ドラマならドラマを選ぶ。より多くの人が観るからさ。もし舞台劇がどうしてもやりたいなら、絶対に避けるべきはスターの舞台劇への出演だ。君の他にスターがいて一緒になにかやる。スターも良い、監督も良い、台本も良い。その中の良いキャラであっても、やるな。唯一のスターと比べて冷たく見る人々のなかで、わざわざ打たれる必要はない。注目の人物、君は永遠に注目される人のポジションに立つべきだ。君の傍らで小Sが演じる。私が思うに、(“吃吃的愛”で)彼女は注目の人物だったからあの選択は正解だったよ。徐熙娣との仕事で、何も心配しないで経験したことを無視しないでほしいな。この件で唯一残念なのは徐熙娣が既婚者なことだ。だから君はゴシップを流せない。それは色っぽい噂じゃなくスキャンダルになってしまうからね。だから、次は独身のヒロインを選ぶべし、だ。
金:林志玲
蔡:うん。林志玲は私たちの映画にも出演している。君、彼女とゴシップを流してみないか?
金:知らないもの。
蔡:コーディネートできるよ。ホント。君たち身長のバランスも190と170ちょいで良いし。
金:なら、曖昧な関係を探してみましょう。わかりました。そろそろ失礼しますね。康永兄さん。
蔡:これが君の望む答えかい?
金:わかりません。あなたが今日話したたくさんのことを消化する必要があります。
蔡:武術の秘伝を得ようと山の洞窟に入ったら、得たのは一瓶の毒薬だったみたいに思ってるんじゃないかい?
金:ホントに。まあ、ありがとうございました。バイバイ~。

吃吃的愛


吃吃的愛


吃吃的愛


吃吃的愛


吃吃的愛

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